マーティン・エデンのレビュー・感想・評価
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マーティン・エデン
マーティンエデン
好きだった!面白かった!と映画が終わった後につい言ってしまった。
意味のわからない映像や、よくわからないカットインも嫌だと思っていたけど意外にも嫌ではないことに気づいた。なんなんだ?と心で思っても、すぐ次の映像が映るのでそれがずっと気になるということはない。伏線の張り方として、全然そこにはないイメージとしてのモチーフを挟むのは面白いと思った。
アスクフォーザムーン、ソーシャルネットワークと同じように1人の主人公に対しずっと追いかけるような話。やっぱり面白いのは、最初と最後の変わりよう。それは後悔なのか、懺悔なのか、怒りなのか。わからないけど、最後の最後にエレナと出会った時の若々しい自分と邂逅する。それが最後の感情。それは誰にもわからない。エデンでさえも。ソーシャルネットワークのマークは成功と同時に友人を失っていったが、エデンは成功と引き換えに、友人、恋人、そして自分自身すら失ってしまった。
その過程は自業自得であるのだが、この時代というもののせいでもある。正直同情してしまう部分があった。それが感情としてすごく面白かったと思う。
僕は裏切りが好きなのかもしれない。エレナと離れたりくっついたりするたびにすごく面白いと思う自分がいる。後はエデンの感情の爆発。
生の感情が見えたか。見えまくった。見えすぎた。生々しい感情。鋭利な刃物のような、すぐに誰かを切りつけてしまいそうな危ない感情を鞘に収めず堂々と持ち歩く。それが周囲との対立を生む。
謎があったかどうか。謎があったかどうかは謎という謎はなかった。だから時々退屈に思ったりしたが、この場合エデンの着地点というものが最大の謎になる。エデンはどう決断してどう行動して、最後にはどうなるのか。これは、1人の主人公を追う話というシリーズの中では王道で、これが基本なのだろう。
この話は面白いと思う部類の話だった。主人公と、その周囲と、感情の爆発が見られたからだ。対立の種類が、立場や状況ではなく、感情であることが好ましい。
ちょっと暗かったなあ
「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」ではクセのあるキャラが印象的だったル...
入り込めないです。
16ミリのフィルムの質感が最高 貧民街から独学で勉強し作家にのしあ...
16ミリのフィルムの質感が最高
貧民街から独学で勉強し作家にのしあがった若者の物語
知性を身につけやりたいことが見つかり、成功したはいいものの果たしてそれが幸せかどうか
書きたいものが世間に望まれない
自分の考えが貧民層にも富裕層にも理解されない
愛も名声も望んでいたはずなのに手にしてみると感じる虚無感
知識からくる世の中への絶望
支配者からの支配から解放されることを夢見る労働者たち。たとえ解放されたとしてもまた新たな者が支配する体制が作られるのに、学がないから気づけない。しかしまだ夢を見れる彼らの方が主人公よりも幸せなのかもしれない
途中途中に流れる歌が要らない気がした
主演の俳優(シャー・ルク・カーンに似てる)の最初と最期の変わり様が半端なく、全く違う雰囲気を醸し出している
主演の演技だけでも満足
どっちが先か
成り上がり
本来であれば、物語の主人公は40歳で亡くなった米国育ちのアメリカ人作家の自伝的小説を元にしてるはずなのだが、あえてそこはイタリアを舞台に置き換え、尚且つ端正な顔立ちのイタリア人俳優を起用した今作品。
内容はしがない工場労働や船乗りを経験して、令嬢に恋したことから作家を目立つサクセスストーリーである。何故作家を目指したのかは、あまりよく覚えていない。
にしても、何度も何度も小説を書いては出版社から返却されるという失敗を重ねながら、いざ成功したら、惚れた女の事は、はい、これまでよというのは、よくあるパターンではあるが(実際そう単純には描かれてはないのだが)内容的には重厚な大河的展開なので映画自体は締まっている。ただ若干ストーリー的には、やや単純である。特に前半の大半は。そこがちょっと惜しいところではある。
尚、この主人公役のルカ・マリネッリは今作品でヴェネツィア映画祭で男優賞を受賞している。
世紀末は陽炎
久しぶりにイタリアのイケメンを見た
主役の魅力は凄い
成功者の孤独
時代に絶望していたのだろうか
本作品の基となった自伝的小説「マーティン・イーデン」を書いたジャック・ロンドンが27歳のときに出版されたのが彼の著作で最も有名な「野性の呼び声」である。子供の頃に読んだ気がするが、内容は忘れてしまっていた。今年の春に何度目かの映画化作品が公開されたので鑑賞した。CG技術が長足の進化を遂げて本物の犬に見えたのと、ハリソン・フォードとオマール・シーの演技がとてもよくて感動した。
ジャック・ロンドンの物語を紡ぐ才能は流石に文豪である。「野性の呼び声」は4歳くらいまで人間に飼われて衣食住に恵まれた生活をしていた大柄の犬を主人公に、さらわれて働かされ、やがて森の狼と交流し、野生の本能が呼び覚まされていくという設定である。実にエネルギーに富んだ設定であり、作家が後ろから押されるように小説を書いた様子が想像できる。生み出された物語は力強さに満ちている。
そういう作品がどのようにして生み出されたのかを描いたのが本作品である。主人公マルティン・エデンはあまり教育はないが、素直で頭の回転が速くて洞察力に満ちている青年だ。知り合った金持ちの娘エレナからもらった本を読んだことがきっかけで文学にのめり込む。そして独自の解釈、独自の世界観、独自の文体を身に着けていく。エレナのすすめに従って学校教育を受けてしまっていたら、ステレオタイプの文体や世界観しか身に着かず、マルティンは作家になることはなかったかもしれない。作家の想像力の源はアカデミックな知識ではなく、自分の目で見て耳で聞いて嗅いで食べて触った体験なのだ。
そして文体や語彙は、貪るようにして読んだ本から得られた。映画はマルティンの行動をシーンとして繋げるが、外に出ていないときのマルティンは殆どの時間を本を読み、詩や小説を書くことに費やしていたに違いない。話すたびに前のシーンよりも語彙が増えて言葉が正確になっている。物語の進行よりも遥かに速いスピードでマルティンが進歩していることがこの作品のポイントである。誰もマルティンについて行けなかった。そこにマルティンの孤独がある。
時代というものはその時の人々の習慣や思考回路によって、一定の方向に収斂されていく。ある時代にもてはやされたものも次の時代には廃れてしまうことがある。大衆は自分の考えを持たず、たったひとつの新聞記事で他人を両断して排除する。予断と偏見に満ちているのが時代というやつだ。マルティンは時代に乗って有名になり金を得るが、それがうたかたのように消え去るものであることを知っていたのだろう。無名で雑誌の掲載を夢見ていた頃のほうがずっと幸せだった。もうあの頃には戻れない。
ジャック・ロンドンは1916年に40歳で自殺している。第一次大戦が始まったのはその2年前の1914年(大正3年)だ。「マーティン・イーデン」を発表したのはおそらく1909年頃だから「野性の呼び声」で有名になってから6年後ということになる。既に時代に絶望していたのだろうか。
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