「コリン・ウィルソンは違った!」マーティン・エデン shunsuke kawaiさんの映画レビュー(感想・評価)
コリン・ウィルソンは違った!
ジャック・ロンドンの自伝小説が原作で、貧しい生まれでろくに教育を受けてない主人公マーティン・エデンが、上流階級の家にふとしたことで招かれ上流階級の生活への憧れに目覚めてしまう。
文学や音楽をたしなみ、それを理解して学ぶことが、貧さから脱出するために必要だと感じとり、本をたくさん読みはじめて作家を目指す。
上流家庭の娘エレナは、イケメン好きなのか、マーティン・エデンと恋仲になるが、世間体を気にするエレナは貧しい家の出の彼を心底愛すことができない。貧しさから身を落とし犯罪者、浮浪者や売春婦たちの生活を理解し、作品中に描くマーティンは、エレナに下層の人たちを理解してもらうために街のそういう界隈につれて現実を見せつけるが、理解してもらえず絶縁されてしまう。
これらは、文豪エミール・ゾラが徹底的に描いた世界であり、エレナはきっとゾラは読まなかったのだろう。
マーティンが、いざ人気作家になり、金持ちになると、一度彼を見捨てたエレナが思いを告げるためにやってくる。母も父も捨ててあなたを愛しますというと、マーティンは遅すぎるといって追い返してしまう。あんなに憧れて愛していたエレナを拒絶。一緒になって貧乏になるかそうでないかが基準のエレナの醜さ浅はかさを見てしまった。
そして、愛する人をみずから見捨てたことで、精神崩壊に向かい、最後は…ということに。
でも、同列にできるかどうか微妙だが、イギリスの文学者のコリン・ウィルソンはどうだ?労働者階級の出で、働きながら大英博物館に通いつめ、本を読みまくり、脅威の知識量と記憶力を発揮して文芸評論『アウトサイダー』でデビュー。
SFも書くし、猟奇犯罪やオカルトの専門家にもなるし、博覧強記の凄まじい活躍ぶり。貧しさを物ともせず純粋に本当に学ぶことが好き、本を読むことが好きな人は強い。女にふられるくらい火の粉をはらうがごとし。
マーティン・エデンを越えた真の自力学習で作家になったコリン・ウィルソンの濃密な自伝映画をぜひ誰か作ってほしい!