「叙事詩。」ホモ・サピエンスの涙 上峰子さんの映画レビュー(感想・評価)
叙事詩。
「(男/女etc)を見た。(それ)は〇〇だ」というナレーションで始まる33の場面は、そのシーンの起点となる事実が説明されるほかは、前後の脈絡から寸断され、時系列でさえない。でも現実の世界も事実、例えば「女を見た。彼女は映画の感想を書いている」といった事柄の集まりだったと気づかせる。ただ、そこに描かれる感情や行動は誇張され、奇妙。シニカルな喜劇を通り越して、人間の不合理さを哀れんでいるように思う。監督が言うところの「絶望を描くことで希望を生み出す」ことなのかもしれないけれど……正直この転換がよくわからず、人間の残念さというか、救いようのなさというか、そんな印象しか持てなかった。見識が狭いからかな。
事実を縦糸、不定形な人間を横糸とした、叙事詩を読んでいるかのようだった。
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