「ストリップ劇場を愛した男」彼女は夢で踊る 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
ストリップ劇場を愛した男
とてもロマンティックでピュアな美しい映画でした。
2019年。監督・脚本・編集は広島出身の時川英之。
2019年に閉館したストリープ劇場「広島第一劇場」を愛した男の人生です。
社長の木下の現在を高橋雅也、若い頃を犬飼貴丈が演じている。
若き日、失恋して胸にナイフが突き刺さり、ハートから血を流していた木下倫太郎(犬飼)。
ふと入った「広島第一劇場」で、
サラ(岡村いずみ)のストリップ・ステージを見た。
失恋した元カノの亡霊が立ち去って行った。
サラに「毎日会いたいなら、毎日劇場に来て!!」と言われて、
倫太郎は劇場で働くことにする。
30年も前のことだ。
踊り子は、全国を巡回してまた戻ってくる。
来たら、10日間踊ってまた次の都市(劇場)へと、旅立って行く。
倫太郎は、30年以上「広島第一劇場」に居続けている。
サラは訳ありの男が居て、借金を背負って、世間から、隠れていた。
そう、サラはある日、ぷいと居なくなって、それきり帰ってこなかった。
「広島第一劇場閉館記念公演」
金髪の踊り子が現れる。
木下倫太郎(加藤雅也)は、その子にサラの面影を見て、ハッとする。
別れる少し前、初めて倫太郎はサラと泊まり、夜明けの海に出かけた。
サラは波打ち際で、次々と身に纏っていた衣類を、脱ぎ捨てて行く・・・
女神のように美しい!!
天女みたいに踊っている・・・。
ミラーボールもスポットライトも、顔の化粧も何一つないのに、
サラは天使のように美しかった。
「俺は夢を見て居るのだろうか?」
「これは醒めない夢・・・なのだろうか?」
30年前のサラに良く似た金髪の娘が踊っている!!
木下ためだけに踊っている。
ストリップ劇場は非日常の異空間・・・客はタイムスリップして「夢の国」に運ばれる。
いつまでも夢から覚めなかったのは、木下倫太郎だけかもしれない。
木下はこの劇場が好き。
踊り子が好き。
衣装を脱ぎ捨てて、心を無にして10分間、舞い踊る女の覚悟が好きだ。
もう時代遅れになった「ストリッパーとストリップ劇場」
夢を見て温もり癒される場所がまたひとつ減った。
時代という名のブルドーザーが、押し潰して行った。