「初見」やりたいふたり U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
初見
知り合いに誘われて鑑賞。
映画館は満席で、昨今では珍しい立見客までいる盛況ぶりだった。客層も老若男女問わず様々ですっごい不思議な感じ。
なんかのフェスティバルの一環らしく…その老若男女が上映を心待ちにしてる空気が漂ってた。メジャーな映画館では感じる事が少なくなったモノが上映前の客席に漂ってた。
これしか観てないのでピンク映画事情は分からないんだけれど、なかなかに手の込んだ作品な印象。奥行きがあるとでも言うのだろうか…限定されない空間と時間を感じる。
勝手な思い込みで申し訳ないのだが、ピンク映画の立ち位置が俺には未だよくわからない。
ファンがいるだろう事は分かるのだけど…このジャンルの何に惹かれるのかまでは分からなかった。
普通に映画だ。
裸のシーンは多いけど、AVのようなダイレクトな描写はない。
脚本だってしっかりしてる。
無名の役者がやってる分、見劣りはするが適当に芝居してる感じはしない。
声にちゃんと距離感を乗せられる人達が演技してる。
だからこそ…上映前に漂う空気の内訳がわからなかった。単純に人が多いだけだったのかもしれないし、映画を観る以外の目的の人がいなかったせいかもしれないけど。
このジャンルが持つ特異性とでも言うのだろうか…それが何なのかまだは掴めない。
閉塞的な「性」というものを他人と共有するって状況は特異ではあるのだけれど、それを目当てに来てるような人は居ない感じだ。
監督は以外に野心家なのかと思う。
なんか文学性と悲哀のようなものがあるのは、ある種の伝統とか国民性なのかなと思うのだけど、あの長回しはリスクでしかないように思うのだ。凄いよく出来た1カットではあるのだけれど、時間も予算も限られてる中で、それをぶち込んできた勝負観とでも言うのだろうか…監督としての野心を感じた。
主演の2人が泣きながら「愛してる」と嗚咽するシーンまででピンク映画としてのノルマは果たしたぞ、と。
ここから先はピンク映画とメジャー映画への挑戦だ、的な。
まぁ、それがあったから「普通に映画」なんて事を思ったのかもしれないけど。
70分程の尺だったのだけど、話の展開がスムーズで、仕掛けも豊富にあったので、存外退屈しなかった。
むしろ、アイドルなどにオンブに抱っこな作品よりは映画としての純度を感じる。
大袈裟か…。