劇場公開日 2022年5月27日

「It's time to let go!」トップガン マーヴェリック keithKHさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0It's time to let go!

2022年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

JR嵯峨野線・二条駅のほど近くに、京都の映画フリークの溜り場になっている喫茶店:カフェ・セバーグがあります。その名物マスターに、本作未観賞者は今後出入り禁止にすることを検討する、と言い渡され、同店の末席に名を連ねる者として、マスターの指示に従ってIMAXレーザー装備の映画館に馳せ参じて観て来ました。

『ボヘミアン・ラプソディー』以来、3年半ぶりの洋画ですが、絶賛大ヒット中とあって平日の昼間にも関わらず、シートはほぼ満席の活況でした。
大ヒットした36年前の前作のリメイクにして、前作を上回るスカイ・アクションという話題通り、“トップガン”たちの飛行シーン映像のド迫力は凄まじく、観客を大いに満足させます。その効果を120%満喫するには、やはりIMAXレーザーをお薦めします。

ただ本作は、ついそのスペクタクル感とリアルな緊迫感漲るスカイ・アクション映像に目がいきがちですが、物語は、トム・クルーズ扮する飛行教官が、高難度ミッションのためにエリートパイロットたちを更に鍛え上げるという、極めてシンプルな構成です。難関に向けてチームが奮励努力するプロセスを主柱に、恋愛と憎悪を絡ませて進めるという非常に単純で分かりやすいことが人を惹き付けています。更にそこにプロジェクト全体の長が常に批判的強圧的に臨むという、典型的な悪役を置くことで、本作は一層観客を主役に感情移入させます。
実は本作は意外に会話シーンが多く、ややローアングルからの話し手の顔の寄せアップ映像のやや長回しが多用されるのですが、分かりやすい人間関係と分かりやすいストーリー展開により、観客にはちょっとしたブレイクとなってその後のド迫力の飛行シーンに浸れたのではないかと思います。静と動のメリハリの効いた巧い使い分けです。

また本作は、VFXは極力少なくされ実写映像を多く使っています。スタントを多用した人間系ゆえの死と隣り合わせの、CGによる作り物感のない生の躍動感と緊張感がスクリーンから犇々と伝わってきます。4Kレーザープロジェクターによる特大スクリーンの超高解像度映像と12chサウンドシステムによる高密度音響は、大いにその効果を高めてくれました。
その興奮が頂点に達するのが、愈々訪れたミッション達成のための敵施設攻撃シーンであり、この長いシーン展開には体が無意識に震撼し、感極まる思いで映像に見入ってしまいました。
己の利のためではなく、愛する人のために命を賭して行動する気高さ、その崇高な人間性は、常に人を強烈に惹き付けて已みません。単純なストーリーゆえに、感動の波高はより一層大きくなるのでしょう。

笑って、泣いて、(実際に)手に汗握る、映画の娯楽要素が全て充溢した作品でした。

It’s time to let go! (過去のことはもう考えるな!)非常に印象に残った、作中のこの一言と共に忘れられない作品になりました。

keithKH