「前作の要点やキャラクターを踏襲しながらトム・クルーズの40年以上に渡るキャリアの総括」トップガン マーヴェリック ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
前作の要点やキャラクターを踏襲しながらトム・クルーズの40年以上に渡るキャリアの総括
トップガンの初見は、レンタルビデオなどで、数回鑑賞していて、いわゆる映画館で観たのは、数年前の午前10時の映画祭が最初だが改めてみるとツボを抑えた作劇とトニー・スコット作品に共通する絵造りの巧みさに関心したので、今回の続編も評判が良かったのでIMAXレーザーにて鑑賞。(ちなみにトップガン自体は時代を写す良娯楽作だが、映画の質としては名作とは思ってません)
結論は前作の要点やキャラクターを踏襲しながらトム・クルーズの40年以上に渡るキャリアの総括に近い傑作になっている必見作です。以上!
後は蛇足です。
以下ネタバレあり
前作を踏襲する空母の発着場面(音楽も前作踏襲)から前作の愛車であったカワサキGPZ900Rニンジャで滑走するトム・クルーズの姿を見せてもらっただけで既に満足で、後半がグダグダでも無問題だったが、ロッキード社が開発中の最新機らしいSR-72?機体に乗り込みマッハ10の超超音速テスト始める場面とその顛末は、フットワークの軽さも含めてまるで、宇宙航空史映画の名作『ライトスタッフ』のテイストに近くて、今回の作品は、過去の航空機映画を取り入れた作劇になる合図になっている。(ここの高高度を飛ぶ映像がとても美しい)
古巣に戻ってからの困難な作戦計画と訓練場面は、陸海空の軍隊活劇に多く見られる緊張とユーモアがあり作戦立案と任務の困難なところは『M:i:』シリーズにおける引用やブラッシュ・アップもここでキチンと行なわれているのが分かる。
脚本にトムの参謀で『M:i:』シリーズのクリストファー・マカリー監督が参加してるのも、その感を強めている。
任務の難易度は、スターウォーズEP4の元ネタの『633爆撃隊』とか、新谷かおるの傑作漫画の『エリア88』にそっくりな設定あったので多分関係者が参考にしてるのでは?と思っている
『エリア88』はアメリカでも出版されていて、84年からに86年アニメ化もされて、アニメ自体も出来栄えが良くて特に『エリア88 ACTIII 燃える蜃気楼』は劇場映画としても通用するクオリティで、狭い谷間での飛行作戦の場面なども似通っている。(前『フォードvsフェラーリ』でも同じ事言ってたな自分)
それ以外にドックファイトなどの見せ場で思い出すのは、クリント・イーストウッド監督にしては、珍しくSFXを多用したスパイ航空機アクションの秀作『ファイヤーフォックス』(1982年)の影響も大きくとれる。(音速描写や谷間を高速で飛ぶところもあり)
後半に撃墜されたパイロット達が戦地の取り残されるところは、朝鮮戦争物の代表的な二本でもある『トコリの橋』(橋場面がそっくり)や『追撃機』(蟠りのある二人のパイロット達のサバイバル場面がそっくり)を思い出す。
前作は当時としては無名に近い若手キャスト達と海軍の演習場面を撮影したフィルム(機体番号などがコロコロ変わるとの指摘あり)を繋いで作った低予算(15億円クラス)に属する映画であるが、卓越した撮影センスと編集と音楽によってMTV感覚映画の先駆けになり超絶ヒットして一躍トム・クルーズを大スターにして記念碑的価値のある作品だったが、200億近い製作費本作は、大作ではあるがそれ以上に、娯楽映画としての基本が高いレベルで抑えあり更に前作からの設定や要点を上手く引き継いだ傑作で、トム・クルーズのキャリアにおける現時点での最高作だと思う。
トム・クルーズが共演をきっかけに師匠と仰いだポール・ニューマンも自身の代表作『ハスラー』を25年振りの続編として再演した『ハスラー2』(トム・クルーズ出演)で、ニューマンはアカデミー主演男優賞を受賞しているが、本作のトム・クルーズもヤンチャなままの男が、巨大な責任を負い友人を失いながらも乗り越えてゆく姿は、なかなかの名演でスター映画としてのアップも多いが、迷いや苦悩をあまり深刻にならずに表情や視線で観客に伝える姿は、作品の出来ともに評価されるべきだと思う。
特にアイスマンとの対話場面は、シンプルで少ない台詞量だが、前作や背景を抜きにしても両俳優ともに素晴らしい。
そして闘病中のヴァル・キルマーの勇姿も本作の見所で、多くの人が涙したと思う。😿
今回の相手役になるジェニファー・コネリーもトム・クルーズと同時期の80年代に巨匠セルジオ・レオーネや変態紳士ダリオ・アルジェントに語学堪能な超絶美少女として見出されて華やかな映画デビューしてから途中までは、順風満帆ではないキャリア(脱ぎ要員や『狼たちの街』での残念な扱いには当時涙した。)だったが、演技を大学で学んだ下地が2000年代に開花して演技派として多くの秀作に出演しているのは、長年影ながら応援していた者として素直に嬉しい。
撮影のクラウディオ・ミランダは、実機に装着されたIMAXカメラ映像を駆使して驚愕のビジュアルを見せており、恐らく今回もアカデミー撮影賞にもノミネートされると予想。(1度撮影賞受賞)
フィルモグラフィーを見ると、フィンチャーやアン・リーと組んで全編スタジオ撮影した『ライフ・オブ・パイ』の不思議な映像は素晴らしいかったので、本作のビジュアル映像派ジョセフ・コジンスキー監督とも何度も組んでいるので、名コンビと言ってもいいだろ。
監督のジョセフ・コジンスキーも、工学や建築の修士号を持っている技術系インテリらしく、CGなどを駆使した作品で名を上げていたが、正直『トロン・レガシー』のビジュアル以外にあまり見所のない作風のイメージが強くてそれ以外基本的に未見だったが、前作の『オンリー・ザ・ブレイブ』は評判が良いので機会があればみたいと思っている。本作を観る限りは、ドラマ部分と演技の引き出しも最高の出来栄えで、新たな楽しみな監督が増えたと思う。
余談だが、映画やアニメなどで、基本的にデビュー作と次作の出来栄えで、そのクリエイターの能力が判断できて、その段階で見所ないと、そこから上向くコトはあまり無いと長年スタッフリストやフィルモグラフィーを眺めていると感じる。
後に名匠・巨匠・ヒットメーカーになる人は、初作のバランスが悪くても、どこかしらに光るところがあると思う。
個人的関心ゴトとして前作で時代のアイコンになっていて、メカ好きとしては、F14とカワサキGPZ900Rニンジャの次元を超えて勇姿が見れたのが本作の白眉で、特にF14の前作以上の活躍は、映画史上最高の名場面になっており、ゼロ戦と舐めプで戦う『ファイナル・カウント・ダウン』での不満を晴らしてどちらかかと言えば、『エリア88』の主要キャラクターで、元海軍パイロットのミッキー・サイモンが、F14にこだわるとこに近い。(敵機を奪うのもエリア88ぽい)
最後に前作の監督トニー・スコットへの献辞もありアメリカ映画を長年に渡って支えてくれたヒットメーカーに捧げているの良い。
トップガンはトニー・スコットの代表作であり巨匠でもある兄のリドリー・スコットとは違う方向性で映像にこだわり、良作を届けてくれたのは、映画ファンとしても至福だった。
そういえば、トムとトニーのコンビ作で『デイズ・オブ・サンダー』は本作の舞台を変えたリメイクだったな
前作の背景にあった冷戦が、ソ連崩壊と共に無くなり、世界は真の意味で平和になると思っていたが、残念ながら未だにキナ臭い世界は断続的に続き、世界の7割近い国家が独裁に分類される情勢なので、この映画での人の死ぬ姿を見せない作風に野暮ではあるが、若干引っかかりを感じるが、結論は前作の要点やキャラクターを踏襲しながらトム・クルーズの40年以上に渡るキャリアの総括に近い傑作になっている必見作だと思うので、この作品の真価は大画面と優れた音響にあるので、一度は映画館で鑑賞するべきです!と断言します。可能ならINAX推奨。
本作をスマホの動画で早送りなどで見ればイイと考えてる輩は〇ソく○えです。(自主規制)