「ブラッシュアップ・スカイアクション!」トップガン マーヴェリック しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
ブラッシュアップ・スカイアクション!
"トップガン" シリーズ第2作。
IMAXレーザー/GTテクノロジーで鑑賞(字幕,レイトショー)。
冒頭のシークエンス―空母から発艦していくF‐18を様様な角度から捉えたシーン、そのバックに流れる名曲「デンジャー・ゾーン」。1作目へ溢れんばかりのリスペクトとオマージュ捧げるだけでなく、「伝説的作品の続編をこれからぶち上げるぞ」と云う意気込みにも感じ、体中が興奮にたぎった。
続編ながら、ストーリーは1作目に似通っていた。だが決して二番煎じでは無かったことが、すごいところだと思う。
マーヴェリックが年月を経、若者を指導する立場となっていたことで、前作からの物語の広がりを生んでいたからだ。
彼が過去の悔恨やグースの息子と向き合うことで生まれるエモーショナルな人間ドラマが、過酷な訓練や最高難度のミッションにおいて繰り広げられる圧巻のスカイアクションと共に描かれており、カタルシス満載で突き進む様はまさに怒涛。
随所に散りばめられたオマージュは、1作目公開当時からのファンの方ならば、胸が熱くなることは必至であろうし、かつてのライバルであるアイスマンとの再会シーンでさえ、にわかの私にとっても、本当に素敵で感動的な名場面だった。
クライマックスは、「ジェリー・ブラッカイマーらしさ」が全開であった。80年代から2000年代初頭にかけて製作されたハリウッドのアクション映画を彷彿とさせる展開の連続で懐かしさを覚え、手に汗握らずにいられなかった。
旧型が圧倒的優位の新型に立ち向かうと云うシチュエーションが大好きだから、クライマックスのF‐14対第5世代機のドッグファイトでは興奮の坩堝に叩き落とされた。
操縦はマーヴェリック、後席にグースの息子・ルースターが乗り込む展開もアツ過ぎた(マイルズ・テラーに髭を生やすとグースにそっくりになると云うのは、まさにキャスティングの妙であり神懸っている。ほんのりそっくりなのも親子設定に説得力を齎していた。だからこそ、マーヴェリックの後席にルースターが座った瞬間の感慨も一入だったのだと思う)。
なんとニクい演出なのだろうと涙が出た。マーヴェリックの心には、常にグースの存在があった。その息子を後席に乗せて戦い、無事生還したことで彼自身が救済されたと云うだけでなく、ルースターとの関係も修復されて絆が生まれた。前作をきちんと踏まえた上で、最良の結末へと導き提示する。続編のお手本のような脚本と演出にさらなる感動を覚えた。
コロナ禍による延期に次ぐ延期に否応無しに期待値が上がっていた本作だが、その期待を遥かに上回る面白さであった。
劇中で語られていたように、戦闘機はいずれドローンに置き換わり、パイロットが必要の無い時代が訪れるのだろう。
これほどまでに感情が交錯する迫力満点のスカイアクション映画は、もしかしたら本作で最後となるのかもしれない。
今はまだその時では無いにしても、本作は素晴らしいタイミングで世に出され、鮮やかな輝きを放っているように思う。
[余談1]
アイスマン(ヴァル・キルマー)はどのように登場するのかが気になっていた。ヴァル・キルマーは実生活において喉頭がんを発症し、治療したものの後遺症で声が出せない状態だったからだ。そのことが考慮された設定が構築されていて、トム・クルーズの配慮と友情を感じると共に胸が熱くなった。
[余談2]
本作こそ、真にIMAXで観るべき映画だと思う。トム・クルーズがコロナ禍の影響で公開延期されても、配信ではなく、映画館での公開を切に願った真意がよく分かった。
テレビ画面では決して味わえない興奮と迫力が満載だったからだ。通常のスクリーンですら最大限に引き出せないかも。
CGを極力使用せず、本物での撮影と云うこだわりが炸裂した空中戦は、大画面や最高の音響で観てこそ、とてつもない迫力や戦闘機の爆音・振動を臨場感たっぷりに体感出来る。
本作の持つスペックを余すところ無く発揮出来るのは、きっとIMAXのスクリーンと音響なのではないだろうか。
IMAXで観てこそ、本当の意味で「トップガン:マーヴェリック」は完成するのだと、自信を持って断言する。
[余談3]
故トニー・スコット監督への追悼も忘れていない。
ここも本作が素晴らしいところである。
[追記(2022/05/31)]
近年人人の映画の鑑賞傾向が、コロナ禍の影響もあって、サブスクなどの配信をスマホやタブレットで楽しむ方へと変化して来ている中で、映画館で観てもらうことを絶対条件として主眼に置いた本作が公開3日ですでに国内において社会現象的ヒットとなっていることに喜びを禁じえない。
映画館でしか味わえない体験を約束した本作のクォリティーが高いことを証明しているのはもちろん、そのおかげで「映画は映画館で観るもの」と云う原点回帰を促す絶好の機会になるかもしれないなと、いち映画ファンとして嬉しいムーブメントになりそうな予感があり、とてもワクワクしている。
[追記(2022/08/20)]
ラストのマーヴェリックとルースターのやり取り…
マ:君は命の恩人だ。
ル:父の代わりです。
…をもう一度聞きたくて居ても立っても居られず、せっかくだからとMX4Dにて、3回目の鑑賞に挑むことにした。
結果、マーヴェリックと共に空を飛び、困難なミッションに参加しているかのような気分を味わうことが出来た。
過酷な訓練、ミッション本番を経、クライマックスのドッグファイトでは興奮のあまり泣きながら揺られていた。
その後の上記のやり取りに追い打ちの落涙である。
[以降の鑑賞記録]
2022/06/11:TOHOシネマズ梅田(TCX,Dolby-ATMOS,字幕)
2022/08/20:TOHOシネマズなんば(MX4D,字幕)
2022/09/11:Amazon Prime Video(購入【4K UHD】,吹替)
2022/12/03:Ultra HD Blu-ray(字幕)
2024/11/15:金曜ロードショー(地上波初放送)
※修正(2024/11/13)
なないろさん
コメントありがとうございます。
拙文がなないろさんの鑑賞後のお役に立てて何よりです。
ルースターとハングマンの関係性、マーヴェリックとルースターのそれにばかり目が行って見落としていました。気づかせて下さってありがとうございます。確かに感動的です。
突然お邪魔します。自分も2回観賞したところですが、この興奮と感動を言葉にするには安っぽい言葉にしかならない気がしてレビューは見る専門にしておりました。
余談から追記まで読ませて頂いて共感と自分が望む余韻に浸らせて頂きました。
ハングマンが予備員になるあたり、絶対最後来るでしょ!と思いつつ、あのシーンがあるからこそルースターとハングマンが、かつてのマーベリックとアイスマンを彷彿とさせて、帰還後のシーンは二重に感動致しました。
これを機に映画館が更に盛り上がってくれるといいですね。
ばるすパパさん
コメントありがとうございます。
まさに仰る通りです!
映画館でしか味わえない興奮と感動がたくさん詰まった作品でした。
アカデミー賞で撮影賞や音響編集賞辺りにノミネートして欲しいです。
Megさん
コメントありがとうございます。
とんでもないです!
仰る通り、映画館で鑑賞したことを誇れる作品だと思います。
Megさんがレビューに書かれてらっしゃいましたが、確かに観た後は会社帰りにイヤホンはめてサントラを流して、デンジャー・ゾーン聴いてます(笑)。
私が感じたことを全て言葉にしてくださって、ありがとうございます‼︎ そうそう!ってうなずきまくりです。これを映画館で見たんだよ、って語り継がれるべき映画だと思います!
本当にそう思います!
それだけでも感動的です。
ヴァル・キルマー氏は声を出せないので、劇中で発した彼の声はご本人の音声データを元にAIで再現したものらしいです。
近大さん。
コメントありがとうございます!
僕も未だに興奮と感動を引き摺り、反芻しています。
「デンジャー・ゾーン」や「トップガン・アンセム」が頭の中で鳴り響いています。
一切妥協しなかったトム・クルーズと製作陣の熱意に心からの敬意を表したい気持ちでいっぱいです!
興奮と感動の見応え。
ド迫力のドッグファイト。
キルマーの出演。
トニー・スコットへの敬意。
前作オマージュ。
トムの熱意。
仰る通り、全てが完璧でしたね。
私の心は未だ大空を飛んでいます。
> トム・クルーズがコロナ禍の影響で公開延期されても、配信ではなく映画館での公開を切に願った真意がよく分かった…
ほんと、そうです。一生忘れることの体験ですよね。
1作目の内容は、ほとんど忘れていましたが、すごいものを見て、音楽に酔いしれた体感は記憶は残っています。今回は、さらにすごいことになっているから、あの世でも思い出すと思います。
y.n.さん、コメントして下さり、ありがと うございます。
敵の隙をついて横移動しながらのバルカ ン砲は凄まじくカッコ良かったです。
前作のリアルタイム世代ではありません が、前作が大好きなので、本作のつくりには胸が熱くなったし、感動させられました!