国家が破産する日のレビュー・感想・評価
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他山の石
2008年のリーマンショックは記憶に新しいが1997年のアジア通貨危機については、日本はむしろ救済支援の側だったので印象は薄い。韓国では当時の通貨危機をIMF危機と呼び変えているくらい不信感が根強いらしい、実際に中小企業の倒産、失業率の急増、非正規雇用の増大など社会不安が高まった。本作はまさにその舞台裏を描いている、映画なので対応に腐心する官僚ばかりでなく危機を好機とみて逆張りに出る若い投資家や倒産の危機に襲われる中小企業経営者などのサイドストーリーを加えてドラマチックに描いている。
最近の日本ではマスコミを含め国の政策への批判が薄れてきている、膨大な借金を抱えて、金利を上げられないから円安も加速しているし、これで大災害でも起これば明日は我が身かと背筋の寒くなる映画でした。ただ、政治への無関心を質す意味でもこの種の社会派映画づくりは日本でも挑戦して欲しいものです。
兄貴だったのか…
硬派なストーリーでありながら、通貨政策チーム長、街場の工場長、金融コンサルタント、それぞれの立場を描き、スピーディーな展開で飽きさせず、非常にリアリティがあって引き込まれた。バブル→崩壊→20年後の現代を上手く描いている。IMFってそうだったのかと。交渉役をバンサン・カッセルが好演。自殺者が前年比140%は国による殺人と感じるし、他国のこととは思えない。やはり自分で自分を守るしかないのか。国の金融危機をいち早く感じていたにも関わらず、兄を救えなかったチーム長の無念さが伝わってくる。その危機をチャンスに変える者、国家側にいながら、巧みに利用した者、実際にいるんだろうなぁ。
予想の範囲内の経済物語
1997年11月、金融危機に襲われた韓国。
少数の官僚が自分たちと大企業が生き延びるために、アメリカが望むままに韓国経済を開放し、その結果引き起こされた不況、企業のリストラにより多くの国民が苦しんだという。
物語は予想の範囲内の展開だった。ソウルは20年以上前に一度だけ訪れたことがあるが、街の風景が日本の街ととてもよく似ている。
「無能と無知に投資」
1997年にアメリカ・投資会社モルガンスタンレーよる「投資家は直ぐに韓国から離れよ」というレポートから始まる、“マネーショート”韓国版の作品。但し、おふざけやコメディ要素は一切無く、大変真面目にそして厳しい情緒で描いていく作りである。その中でも強烈な風刺や皮肉は随所で散りばめられていて、そのセンスは疑いようもない素晴らしさである。例えば、未曾有の経済危機が起こる時に、ズラリと並んだ官僚が乗る数々の外車の前でのシーンは、かなり凝った構図であることは疑いようもない。
今作品は、正直観るのは気が重かった。粗筋でもそしてレビューでも日本のバブル崩壊後の“消失した十年”を想起させるテーマであり、少なからず自分の身の上にも心当たりがある内容であろうと予想し、振り返りたくない過去を直視する覚悟が必要だと思ったからである。そしてその覚悟も決めぬ儘、映画は始まってしまう。
ストーリー的には3つのパートがそれぞれ同時進行しながら、巧みに場面転換を繰広げる構図となっている。フィクションとはいえ、史実に基づいた表面の出来事の裏側を描いているのだから、その結末も又事実としては周知されている。実際あのような役人達や財閥のボンボン、そして町工場のオヤジが実在していたのかは分らないが、あくまでも“池井戸潤”的な経済小説としてのエンタメの観方が好ましいと感じる。実際、あんな政財界上層部のメチャクチャ且つトンチキで無責任さが蔓延っていたとしたらこんな危機以前にとっくに破綻していただろうから、かなりオーバーには描いていて、そういう意味では親切な建付けに仕上げている。特に悪役の役人はそれこそ“相棒”の敵役の演出に酷似していて、経済用語等の難解さは気にしなくても、大まかに悪徳振りが認識し易い。そんな明瞭な展開の中で、しかしラスト前のシークエンスでの、3パートの内の2つが結びつく件は、ハッキリ言って戸惑いを覚えた。というのもそれを匂わす伏線が一切無く、余りにも唐突だったからだ。勿論、伏線を張る法律など無く、如何様にも表現は自由なのだからこれも持ち味といえば否定しない。しかし、町工場のオヤジと正義の女役人が兄妹という関係性をぶち込まれると、一気に色々とかの国のネガティヴな因習が透けて見えてしまい、兄に融資先を紹介してくれと頼まれた後の車中での号泣シーンの女役人の心理や真意が幾重にも想像されてしまい、却って焦点がぼやけてしまう状況を作ってしまったのではないだろうか。それが今作品のキモであるならば、やはり伏線をきちんと序盤に設定して欲しかったと残念でならない。具体的に言えば、急に現れた兄への憐憫の涙か、それとも清廉潔白さを旨とした矜持をねじ曲げて、血族を選んだ自分の不甲斐なさ故の涙か、結局自分の兄妹しか助けられないこれまでの自分の過信に対する恥辱の涙なのか、純粋に権力に対する敗北の涙か、どう捉えて良いか困惑するシーンであった。そして、その後の付け足したような20年後の話も又、なかなか一筋縄ではいかないそれぞれのパートの顛末で、今作品の複雑で多層的な世界観を描いた着地に、幾重にもの解釈と共に、コントラバーシャルな論議を呼び込む意図はしっかり感じられた。
ラストの「疑い、目を開く事」というモノローグは、もう少し具体的且つ同意味で違った言葉を披露してくれたら今作品はもっと輝けたのではと思った次第である。いずれにせよ、こういう作品が日本では生まれにくい事を考えると羨ましい限りだ。
日本でも同じように振り返ってみたいものだが・・・
国民が好景気に沸く1997年韓国。
しかし、実際には国家の財政破綻が近づいていた・・・
というところから始まる実録経済サスペンス映画。
映画は、おおよそ3つのレベルの人々が描かれていきます。
ひとつ目は、通貨危機の回避に奔走する政権に近い層。
中心となるのは、韓国銀行の通貨政策チームの女性のチーム長。
国民、特に韓国経済を盛り立ててきた中小企業に痛みを伴わせない着地点を模索するが・・・
ふたつ目は、通貨危機になることを見越して、このときばかりと逆張りする層。
いわゆるピカレスクで、中心となるのはノンバンクを退社して、ふたりの出資者とともに行動する若い男。
とにかく、一歩先を見通していて、癪に障るほどうまくいく・・・
みっつ目は、中小企業の経営者。
地道な商売を続けてきたが、取引先から甘い飴をちらつかせられ、最終的には不渡手形を掴む羽目になる。
いわゆるババ掴み、貧乏くじを引く組。
映画は三者三様の行動をカットバックしながらスリリングに、かつ、わかりやすく進んでいくので、なるほどと頷いたり、ハラハラしたりで、結構面白く観ることが出来ましたが、これ、実際のハナシなので、そうそう楽しんでばかりもいられません。
とにかく、上層部は真実を明らかにせず、自分たちは生き残ろうとするあたりは、昨今のわが国の状況に似ているのではありますまいか。
いや、ほんと、背筋が凍る。
現在の韓国社会では格差が広がっているが、その原因がこのときの通貨危機。
わが国でも格差が広がっているが、その原因は90年代初めのバブル崩壊か、それとも00年代半ばのリーマンショックか。
そこいらあたりを、同じように映画にして振り返ってみてみたいものだ、と思いました。
他人事ではない!
1997年に韓国が、IMFの配下に入った話
3人の視点で描かれている。
金融アナリスト、韓国銀行の債権リーダー、町工場の経営者。
国は、政府は、大企業と己しか守らない。
これは、日本にもおこりうる話。
いやそお遠くない。
描き方がうまい
アジア通貨危機で韓国がIMF管理下に入ったときに、裏側で何が起きてたかって話なの。
「通貨危機はどうして起きたのか?」って原理を説明されても解んないんだよ。なんか、その辺のセンスなくて。
それでも「大変なことが起こったんだな」ってドラマで見せてくのがうまい。町工場は大変なことになっちゃうし、一発当てる奴は大儲けするし。ここの描き方がうまいなと思った。
政府高官も、国の独立性を保って危機を打開しようとする一派と、これを契機に構造改革をしよう(ついでに私服も肥やそう)という一派に分かれんのね。主人公は独立性を保つ派なんだけど、政治力の差で負けてしまうの。
どんどん負けてくんだけど、それでも最後まで使命を貫こうとするところがカッコよかったな。
韓国って、ソウル五輪の頃は絶好調な感じで「いずれ日本を抜く」と言われてたんだけど、この頃、存在感が薄い気がすんだよね。それは通貨危機あたりにターニングポイントがあったのかなあと思いながら観たから、面白かったよ。
経済は密室で作られている。
映画の見方は色々あるものでして、今作を観て「ざまーみろ」と発言する方もいらっしゃるはず。現在の日韓関係の情勢が情勢だけに、そういう意見もわからなくもないが、同じアジア圏の国なのだから、いつ日本に飛び火してくるかもわからない。これを単なる隣国の悲劇としてとらえることも可能だが、もう一歩進んで、日本ではどうなるんだろ?と考える方が正しい見方かと思います。
国家が破産するというのはどういうことなのか。考えたくもないけど、第二次大戦後に国債が紙切れになってしまったという話は有名だ。そうした破産状態を選択するか、IMFに財政管理を委ねるかという危機的状況が国民に知らされることなく、密室による会議で進行していたという物語。実話ベースなだけに空恐ろしいものがあったけど、日本においてもいつこのような状況が起こるかわからない。IMFに頼ることになると、大企業だけ救って(ただし上位100社のうち11社を倒産させろと言われる)、中小企業は無視。そして外国資本を受け入れやすく(7%から50%)するなどといった提示を受けるのだった。
そんなIMFの専務理事が登場したとき、「あ、ヴァンサン・カッセルに似てるな」と感じたのですが、まさしく本人でした。若い金融コンサルタントのユン・ジョンハクに従う年配の投資家もロバート・デ・ニーロに似てるぞ!と思ったのですが、さすがにそれはなかったみたいです。
ストーリーは、韓国銀行のハン・シヒョンが経済危機を察知し、政府高官を交えて対策班のチーム長となって活躍する筋がメインであり、独自に株価とウォン下落から危機を予測した経済コンサルタントの話と、大手百貨店と契約を結んでぬか喜びしていたガプスの物語が同時進行する。特に経営コンサルタントの描き方はある意味ギャンブルのような投資家サスペンスみたいで興奮するし、ドルの為替相場が毎回テロップで書かれているのも面白い。
しかし、真の社会派要素はIMFの提案受入れをするとどうなるのか?といった点。シヒョンが労働者や零細企業経営者の立場になって考えている点、外資が流入して韓国文化を失ってしまう点など、また、シヒョンが破産させようと提案するも却下され、もし破産していた場合に現在どうなっていたのかも気になるところだ。
3つのストーリーのうち、シヒョンとガプスが兄妹だったという意外性や、自殺者が激増したという事実、現在の様子なども描かれているのですが、憤りや脱力、マイナスの感情しか沸かないほど重苦しい映画でした。そんな映画が好きなんですけど・・・
まあまあだった
経済の問題は絵にならないので映画と食い合わせがよくない。国民から金をかき集めていたのは記憶に残っているのでどんな場面になるのかわくわくしていたら映像にはなかった。手形決済のデパートがひどい。
勉強になりました
経済にまったく疎い自分にとっては難しかった。所々で経済に関する説明的シーンがあるが、そのユ・アインが投資家に韓国経済の現状を説明するシーンでもうついていけず。。
それでも韓国映画によくある権力者の腐敗が描かれてたりして映画としてそれなりに面白かった。(最終的に銀行のトップになっている政府高官は竹中平蔵を想起してしまった。)
どうでもいいけど、先日観た『8番目の男』といい、最近教育的な映画ばっかり観てるなあ。
民主自由党 ➡ 共に民主党
1997,11,5 East Asia Division Morgan Stanley Headquarters
"All investors leave Korea. Right now."
この映画では、3つの群像劇ともとれる場面が同時進行する形で、描かれていている。
まず第一にデフォルトを回避するために奔走する韓国中央銀行の金融政策アナリストであるシヒョン。政府要人のステレオタイプ的人間像に対して、力の限り努力をする様子を視聴者に対して、わかりやすく描いている。
第二に若き金融ブローカー・ジョンハク。ひとり、政府の無能ぶりが、この経済危機になろうとしていることを利用して、”お金”もうけ話を投資家に説明するが...
第三に、金属加工工場のオーナー・ギャブス。信用できるほどの規模のデパートからの大きな取引。少しはためらうが、今、韓国がどのような状況に経済がなっているか? 知るよしもなく、約束手形で決済をすまし、そのデパートもまた銀行に対して、手形で済ましている。どちらかというと、この第三の登場人物が一般の視聴者の視点からこのIMF通貨危機を捉えていて、身近に感じるものと個人的には考えている。
If the government cannot guarantee export and import activities...
It means national bankruptcy.
経済というジャンルに無縁のものでも、あまり頭を痛めるようなことにはならず、ましてお隣の国韓国の事を知らない方でも案外面白く見ることが出来る映画ではないかと思う。ラストも思ったほどというよりは、すっきりした内容となっているので、後味も悪くはないと思える。
Los Angeles Timesのエディターが端的にこの映画を紹介している。「韓国映画”国家が破産する日”は、世界的な金融危機を、魅力的で教育的な映画にすることに成功しました。」
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