「経済は密室で作られている。」国家が破産する日 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
経済は密室で作られている。
映画の見方は色々あるものでして、今作を観て「ざまーみろ」と発言する方もいらっしゃるはず。現在の日韓関係の情勢が情勢だけに、そういう意見もわからなくもないが、同じアジア圏の国なのだから、いつ日本に飛び火してくるかもわからない。これを単なる隣国の悲劇としてとらえることも可能だが、もう一歩進んで、日本ではどうなるんだろ?と考える方が正しい見方かと思います。
国家が破産するというのはどういうことなのか。考えたくもないけど、第二次大戦後に国債が紙切れになってしまったという話は有名だ。そうした破産状態を選択するか、IMFに財政管理を委ねるかという危機的状況が国民に知らされることなく、密室による会議で進行していたという物語。実話ベースなだけに空恐ろしいものがあったけど、日本においてもいつこのような状況が起こるかわからない。IMFに頼ることになると、大企業だけ救って(ただし上位100社のうち11社を倒産させろと言われる)、中小企業は無視。そして外国資本を受け入れやすく(7%から50%)するなどといった提示を受けるのだった。
そんなIMFの専務理事が登場したとき、「あ、ヴァンサン・カッセルに似てるな」と感じたのですが、まさしく本人でした。若い金融コンサルタントのユン・ジョンハクに従う年配の投資家もロバート・デ・ニーロに似てるぞ!と思ったのですが、さすがにそれはなかったみたいです。
ストーリーは、韓国銀行のハン・シヒョンが経済危機を察知し、政府高官を交えて対策班のチーム長となって活躍する筋がメインであり、独自に株価とウォン下落から危機を予測した経済コンサルタントの話と、大手百貨店と契約を結んでぬか喜びしていたガプスの物語が同時進行する。特に経営コンサルタントの描き方はある意味ギャンブルのような投資家サスペンスみたいで興奮するし、ドルの為替相場が毎回テロップで書かれているのも面白い。
しかし、真の社会派要素はIMFの提案受入れをするとどうなるのか?といった点。シヒョンが労働者や零細企業経営者の立場になって考えている点、外資が流入して韓国文化を失ってしまう点など、また、シヒョンが破産させようと提案するも却下され、もし破産していた場合に現在どうなっていたのかも気になるところだ。
3つのストーリーのうち、シヒョンとガプスが兄妹だったという意外性や、自殺者が激増したという事実、現在の様子なども描かれているのですが、憤りや脱力、マイナスの感情しか沸かないほど重苦しい映画でした。そんな映画が好きなんですけど・・・