「テンポのいいストーリー」DANCING MARY ダンシング・マリー 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
テンポのいいストーリー
SABU監督には前作の「砕け散るところを見せてあげる」で度肝を抜かれたが、本作品は少しおとなしめである。加えてキャストもかなりおとなしめで、多分予算もおとなしめなのだろう。
ということで作品のスケールはかなり小さくなってしまったが、SABU監督の想像力は相変わらず多方向に破れかぶれに進んでいく。「砕け散るところを見せてあげる」では主人公が善意の塊で、まさしくヒーローであったが、本作品の主人公フジモトは小役人の小心者である。幽霊対策を頼んだ女子高生の雪子に引きずられるようにして行動する。
物語の山場は石橋凌が八面六臂の活躍をする場面である。このあたりの存在感は流石だ。娘の石橋静河は演技派で、映画にドラマに大忙しだが、父親の演技力もまだまだ衰えていない。
主演のEXILE NAOTOは映画「フードラック!食運」では、脇役陣との演技力の差がありすぎて悪目立ちしてしまったが、本作品ではそんなこともなかった。しかしあまりにも普通の現代っ子で、主人公としての魅力には欠けている。会話がSNSみたいで人間的な深みがないのだ。
ただストーリーがいい。主人公のつまらなさをものともせずにグイグイと引っ張っていく。この辺は「砕け散るところを見せてあげる」を彷彿させるテンポのよさである。ラストシーンで少しだけ主人公を救ったのはSABU監督の優しさだろう。
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