モーガン夫人の秘密のレビュー・感想・評価
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戦争に勝者はいない
イギリス軍の空爆により廃墟と化したハンブルク。町には未だ2万5千人の行方不明者がいて、生き残った人々も餓死寸前の状況。そして地下活動を続けているナチス残党もいたりして、戦後でもテロも行われている1945年冬。
腕に“88”という刺青を入れている者は間違いなくヒトラー信奉者。アルファベットの8が“H”を意味して、88(achtundachtzig)は“ハイル・ヒットラー”の意味となり、今でも忌み嫌われている数字だそうだ。そして原題のAFTERMATHとは(災害・戦争・大事件などの)余波、後遺症といった意味。レイチェルの呟く「戦争に勝者はいない」という言葉が重くのしかかる。
そんな状況においての不倫劇ではあるのですが、前半は戦争についての知らなかった知識が学べます。ヒトラー、ナチスは憎むべき存在ではあるものの、一般庶民は同じように戦争被害者ということが改めて理解できる。まぁ、三国同盟を結んでいた日本だって同じ。この戦後処理や復興も含めて、結局は勝者なんていないんだという強いメッセージも込められていました。
イギリス人レイチェルと夫のルイスの息子マイケルも爆風により死亡。ドイツ人ルバートも空爆により妻を亡くしている。愛する人を失ってしまうのが戦争なのだ。まぁ、ストーリー的には呆れてしまう人もいるかもしれませんが、互いに慰め合うことは悲惨な状況下ではしょうがないことのようにも思います。こんな事件があったからこそ、ルイスも息子の死を悲しむことができたのだし、みんな前向きに生きてほしいなどと色んな思いを巡らせてしまいました。イギリス空爆の4倍ほど爆弾を落としてやったぜ!と豪語するのも止めてください・・・
タイトルなし
戦争では戦勝国、敗戦国あるものの、失った家族がいれば、悲劇には変わりない。第二次世界大戦終戦まもなく連合国軍のイギリスが敗戦国ドイツに入り、戦争で息子を失った軍の幹部である夫妻が、妻を空爆で亡くしたドイツ人建築家の家を占拠し、建築家一家は屋根裏だが一緒に住むことになる。妻キーラは当初息子を殺したドイツで生活すること自体、許せなかった。軍人の夫ジェイソン・クラークは戦争はどちらも悲劇であり、空爆後のドイツの酷い状況に建築家一家を追い出すことをしなかった。それは自分も戦時中は妻にも言えない酷い事をしてきた、裏返しでもあった。キーラは息子を亡くしてから、精神的助けが必要だったが、夫はそれから逃げるように仕事に、従事した。戦争が終わり、ドイツでの生活でも同様で、次第に心が離れていく。建築家アレクサンダーも妻をなくした寂しさから、キーラを求めるようになり、二人は恋に落ちる。そりゃターザンの方がイケメンだし、分からないでもないけど、ドイツにおいても寂しい想いをさせてしまったのは悪いとしても、珍しく良い人役の悪人顔ジェイソンが可哀想だ。別れを告げられ、自分が悪いとまで言うジェイソン。ラスト、ターザンと家を出たキーラは結局汽車に乗らず、夫の元に戻り、やり直しを誓う。キーラに振り回されたターザンも可哀想。戦争が無ければ、何も無かったのだが。
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