「戦争に勝者はいない」モーガン夫人の秘密 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5戦争に勝者はいない

2020年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 イギリス軍の空爆により廃墟と化したハンブルク。町には未だ2万5千人の行方不明者がいて、生き残った人々も餓死寸前の状況。そして地下活動を続けているナチス残党もいたりして、戦後でもテロも行われている1945年冬。

 腕に“88”という刺青を入れている者は間違いなくヒトラー信奉者。アルファベットの8が“H”を意味して、88(achtundachtzig)は“ハイル・ヒットラー”の意味となり、今でも忌み嫌われている数字だそうだ。そして原題のAFTERMATHとは(災害・戦争・大事件などの)余波、後遺症といった意味。レイチェルの呟く「戦争に勝者はいない」という言葉が重くのしかかる。

 そんな状況においての不倫劇ではあるのですが、前半は戦争についての知らなかった知識が学べます。ヒトラー、ナチスは憎むべき存在ではあるものの、一般庶民は同じように戦争被害者ということが改めて理解できる。まぁ、三国同盟を結んでいた日本だって同じ。この戦後処理や復興も含めて、結局は勝者なんていないんだという強いメッセージも込められていました。

 イギリス人レイチェルと夫のルイスの息子マイケルも爆風により死亡。ドイツ人ルバートも空爆により妻を亡くしている。愛する人を失ってしまうのが戦争なのだ。まぁ、ストーリー的には呆れてしまう人もいるかもしれませんが、互いに慰め合うことは悲惨な状況下ではしょうがないことのようにも思います。こんな事件があったからこそ、ルイスも息子の死を悲しむことができたのだし、みんな前向きに生きてほしいなどと色んな思いを巡らせてしまいました。イギリス空爆の4倍ほど爆弾を落としてやったぜ!と豪語するのも止めてください・・・

kossy