ブラジル 消えゆく民主主義のレビュー・感想・評価
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ブラジルが、なぜ、こんな残念な国になってしまったのかが良く分かる
ルーラ(人気者)→ジルマ(初の女性大統領)→ボルソナーロ(極右)にいたるブラジル民主主義の混乱を描いて、オスカー候補になったドキュメンタリー。BRICsの一角を占めたいたブラジルが、なぜ、こんな残念な国になってしまったのかが良く分かる。それにしても、ボルソナーロ大統領は、コロナウイルスの対応も無茶苦茶でしたからね。
民主主義の後退
2021年5月31日
映画 #ブラジルー消えゆく民主主義ー (2019年)鑑賞
#アカデミー賞 #ドキュメンタリー長編賞
#ルーラ・ダ・シルヴァ 大統領は、貧困層への支援に成功しただけではなく、経済政策も成功したそう
なのに今の #ジャイル・ボルソナーロ 大統領は #熱帯のトランプ だしな、何でそうなるの?
たくさん不正が起きるシステム
さらっといろいろ触れられていたが、国のシステムがヤバい。権力者に都合のよい数々のシステム。日本の比ではない。
まず司法制度から…
1.証拠のないことが犯罪を犯している証拠であるという理由が刑事告発の理由になってしまうという信じられない司法制度
2.検察官が裁判官に転身することができ、かつ検察官として担当していた事件の裁判官を務めることができるという極めて不公正な司法制度
3.違法行為の証拠がある等の理由ではなく、景気低迷、失業率の悪化、慣例となっていた期をまたいだ予算の組み替えなど、行政上の成績不振や瑕疵を理由に恣意的な弾劾ができる司法制度
メディア面でいえば…
4.約10の一族系メディアが、ブラジルのメディアを独占し、公正な報道ではなく、大衆扇動的な売らんがための報道になっていること。どこも横並びの報道で、ファクトチェックもせず事実でないことを報道し、嘘が蔓延する仕組みとなっていること。
そして銀行は…
5.経済が安定化していくなか、より健全な経済を目指そうと金利引き下げをルセフ大統領が進めようとした途端、石油採掘を行う国営企業と政府高官との癒着があっという間に暴かれ始める。それをメディアが異常な速さで報道。銀行に楯突くと政府は一気に低迷。銀行の権力が半端ない。
そして、最大の問題は、軍政権時代の残党たち…副大統領のポストは彼らのもとに…軍政権時代の残党が依然強力である証拠。
6.彼らを冷遇するとどうなるか…この人たちが手のひらをかえしたかのように一気に敵に回り、上にあげた司法、銀行、メディアに裏で働きかけて大統領を一気に潰そうとしてくる。彼らには副大統領のポストを用意する必要があるらしい。勇敢なルセフ大統領は彼らを権力の座から引き離すという虎の尾を踏んでしまった。なぜ、別政党の人間をNo.2に?この闇の理由こそ暴いて欲しかった。でもそんなことしたら命が危ないかも。。。
大統領2人の栄枯盛衰を左派の視点から寄り添って見つめる渾身のドキュメンタリー
原題は”Democracia em Vertigem”なので『めまいの最中にある民主主義』とでも訳せばいいでしょうか、ジュッセリーノ・クビシェキ大統領指揮下でのブラジリアへの遷都、その後成立した軍事独裁政権による圧政を経ての再民主化。鉄鋼労働組合リーダーとして軍事政権下で大規模なストライキを先導し虐げられし労働者の指示を集め何度も落選を繰り返した末に2003年に大統領となったルーラ、軍事政権下では左翼ゲリラの闘士として活躍、投獄され拷問も受けた経験を持ちルーラの後継者に指名された後ブラジル初の女性大統領となったジウマというブラジル労働党を代表する人物の栄枯盛衰に左派の視点から寄り添って見つめる作品。
ペトラ・コスタ監督の両親も軍事政権下で民主化を求めて戦った左翼の闘士。それでいて祖父がブラジリア遷都の頃に立ち上げた会社がその後ブラジル全土を席巻した疑獄事件に登場する某社だったりとかなり複雑な立場からブラジルの現況を見つめている点が大変ユニーク。ルーラ、ジウマの失脚とその背景にある黒い闇をアグレッシブに論う映画はたくさんありますが、大統領選の進捗や弾劾裁判の行方も見守る2人の姿を至近距離でカメラで捉える等は身内にしか出来ないもの。疑獄事件の担当検事で現政権では法務大臣にまで登りつめたモロ検事とルーラの直接対決シーンは迫力満点ですが、全編に漂うのは多くの血を流した結果として手に入れたはずの民主主義が泥にまみれ、極右のボウソナーロ大統領の元で迷走するのを悲しげに見つめているかのような物悲しさ。この栄枯盛衰は実際に私が当地に住んでいた頃にリアルタイムで見ていたものですが、結局労働党の栄光とは主義主張の異なる他政党との妥協によって辛うじて成り立っていたものであっという間に崩れ去るのは道理だったという内省もあったりして、当地でメディアを通じて得た印象とはまるでトーンが異なっているのがとにかく印象的。事実は一つしかないが真実とは視点の数だけあるということを思い知らされる作品でした。
エンドクレジットを彩るのはバーデン・パウエルの「オサーニャの歌』。使われているのはギターインストですが、元々はヴィニシウス・ジ・モラエスが歌詞を手がけた曲。ここでは語られない歌詞が実はこの作品のテーマとしっかりシンクロしている点にも驚嘆しました。ブラジルを知らない人にはイマイチピンとこない作品ですが、人生の2割を彼の地で過ごした身としてはグッと胸に迫る力作でした。
民主主義というものの不都合な真実がここにある
いやぁ・・・これは非常に興味深い映画であった。民主主義というものの「不都合な真実」的な事実が描かれていると思いました。
100%ドキュメンタリーです。映画というよりは、ドキュメンタリー番組という捉え方で観た方が良い。従って、映画としてよくできているかどうか、それを論じることには、あまり意味がない。
もしあなたが日本人であるならば、観ておくと良いかもしれない・・・がしかし、観ないほうが良いかもしれない。何故なら、ブラジルの現在は、遠からず訪れる日本の未来だと思うから、それと、民主主義というものの欠陥を痛いほど見せつけられるから。民主主義が唯一のあるべき姿だと信じている人は、この映画を知らない方が幸せかもね。そういう意味では、ホラー映画よりも怖いことを、この映画は示唆していると思う。
この映画に描かれていることは、何故、民主化は独裁政権に戻ってしまったのか?ブラジルの民主主義が衆愚政治と化してゆく過程なんだけど、その過程が、どこかの国と酷似している。そう。我が国日本。
この映画の中で、かつて民主主義を達成したはずのブラジルの労働党に対して、民衆は攻撃を始める。一旦、そういう「空気」が醸成されてしまったら、もう誰にも止めることはできない。「空気」のみが支配する世界。その世界における正義と悪は、民衆の感情によってのみ判断される。昔から暗黙の了解とされてきた賄賂文化が、民衆の感情により、突如として悪になる。もう何が正しいか分からない。個人の感情の集合が存在してるだけ。もちろん、それを先導しているのはメディア。しかしメディアが全て悪いわけではない。要は、ブラジルは民主主義国家になりきれていなかっただけの話。
「空気」が支配する世界の恐ろしさについては、日本では山本七平が語っている。これを山本学と呼ぶのだが、この映画にあるのは正に、山本学における空気だと思った。
最近、社会学関係の書籍をたくさん読んだ。そこに書かれていることは、そもそも民主主義というものは、極めて特殊な条件下でしか機能しないものであるということ。その観点からすると、日本の民主主義は機能していない。日本は、民主主義の仮面をかぶった、最も栄えた社会主義国家であるとの主張さえある。
民主主義ってのは、一夜にして成るものではない。真の民主主義を達成するためには、過去の慣習を全て壊し、完膚なきまでに撃滅し、全く新しい世界を作るぐらいの気概がないと達成は不可能なものなのだ。この映画の登場人物が着ているTシャツに “give me democracy or give me death” と書かれているのだけど、民主主義ってのはそういうもんだ。民主主義を得るためにはたくさんの血が流れる。そして、その成熟には長い年月を要する。
ブラジルの民主主義の生成過程は、血を流す過程はあった。しかし惜しいことに、長い年月を要して成熟しなかったんだ。
日本人としてやばいなぁ・・・と思う理由は、日本の社会・政治・メディア状況が、この映画の中のブラジルと酷似しているところなんだよね。ブラジルと日本で異なる唯一の点は、日本には、経済的な余裕がまだまだあるということだけ。今の日本社会は、かつての繁栄が産んでくれた遺産だけで持っている状況。そして、日本の民主主義は血を流して達成されたものではない。もし、日本の経済が破綻したら、日本は一気にブラジルみたいになる可能性がある。
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