劇場のレビュー・感想・評価
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山崎賢人の汚れた目
周りにいたらさぞ迷惑だろうけどちょっと人生をのぞいてみたいと思わせる人っていると思う。この作品の主人公の2人はまさにそういう人物だ。一人は売れない劇作家。前衛的で理解しづらい作品ばかりを作って、日々の生活もままらない。そんなだらしない男をなぜか懸命に支えてしまう女性。男は女に頼りっきりでどんどんダメになり、女も男に依存し続け、夢も見失い駄目になっていく。二人が一緒にい続けることにメリットはない、だだ、互いに引き付ける引力のようなものはある。
主演の山崎賢人と松岡茉優が良い芝居をしている。二人ともこういう役柄に挑むことはあまりないだろうが、しっかりものにしていた。特に山崎賢人のやさぐれた感じはとても良かった。監督は彼の澄んだ目をどう汚すかを考えたそうだ。
舞台が下北沢の街の雰囲気もとてもリアルで、久しぶりに下北を散策したくなるような作品だった。あの街は演劇の街として有名だが、実際に多くの演劇関係者が暮らしている。街に暮らす人々のリアルな息使いを感じられる作品だった。
文学も映画も良いロールモデルを示すばかりじゃなくても良い、だらしない人間を見ることも学びである。
2020年を代表する意欲作
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり公開延期になった作品が数多くあるが、そんななかにあっても邦画は非常に充実している。
又吉直樹原作小説を行定勲監督のメガホンで映画化した「劇場」は、山崎賢人と松岡茉優のベストパフォーマンスと形容してしまえるほど生々しい演技に、思わず唸らされてしまう。
夢を追いかけたことがある人ならば、誰もが共感し、そして身悶えるほどに切なさを味わう。
見た人それぞれが自らの過去と再び対峙し、わかっちゃいるけど追体験させられるような感慨にとらわれる。
メタ化の仕掛けが行定勲監督らしい
又吉直樹のデビュー小説にして映画化第1弾の「花火」と同様、妥協せずオリジナリティを追求する表現者の葛藤や焦燥を描く点は共通するが、「劇場」の特徴は恋愛物として書かれたこと。独善的であるがゆえに創作でも対人関係でも行き詰り鬱屈していく男と、そんな男を天使のように愛し支え続ける女の組み合わせは、現実にも物語にもよくあるが、エピソードの具体性と、山崎賢人と松岡茉優の渾身の演技によって、ありきたりでない生々しさを伴う(それゆえ大勢に自身の体験を思い出させる)格別な映画になった。
原作のストーリーをメタ化するラストの仕掛けは、題の“劇場”に新たな意趣を重ねる点も含め、行定監督らしさを感じさせる。ただ、又吉の2作に共通する「夢破れし者への優しさ」という視点を弱めたかとも思う。あと松岡は確かに巧演だが、演技の上手さが透けて見えてしまい、原作の沙希にあった無垢さ、ピュアさは再現しきれなかったか。
「舞台」が好き「役者」が好き「リアリティー」が好き等、気になる要素があれば是非見てみてほしい作品
当初は、それなりの規模で劇場公開されるはずだった作品ですが、新型コロナウイルスの影響で、「劇場」というタイトルなのに、ほんの一部の「劇場」でしか見られなくなってしまいました。これも、いつか歴史的な1ページになるのでしょう。
とは言え、本作が万人受けするのか、というと、そういうわけでもないのかもしれません。
理由は、ベースが主人公の山崎賢人が扮する永田と、ヒロイン役の松岡茉優が扮する沙希の2人の物語、ということがあると思います。
もちろん本格的な「映画」なのですが、「舞台」に近い構造を持っている作品のようにも感じました。
そのため、2人に入り込める意味では他の作品より効果的に仕上がっています。
演劇に心血を注ぐ、どんよりとした天才肌の劇作家兼演出家を山崎賢人が人生初のヒゲを生やして臨んでいたり、そんな「成功」という夢を叶えようとする彼を健気に支える難役に松岡茉優が臨んでいたりと、これまでの、どの作品とも違った2人を見ることができます。
「夢」と「現実」の狭間で、もがき続ける2人の7年間は真に迫るものがあります。
2人の出会いがユニークである一方で、その後の「作家あるある」なディープな描写は、それを体験している行定勲監督だからこそ描けるわけで、監督自身が映像化を熱望したのも理解できます。
本作は、2019年の6月から7月にかけて撮影されたようですが、舞台となる下北沢の小劇場は常に使われていて借りることができず、結局スタジオに小劇場を作ったそうです。
それもあってか、ラストの仕掛けは、私は「映画」と「舞台」が見事に融合した凄いものになったと思っています。
7年間を凝縮した山崎賢人と松岡茉優の名演技と、「舞台」にも力を入れている行定勲監督の演出によって、「劇場」というタイトルに相応しい新しい映画が生まれたような瞬間を体験できました。
タイトルである「劇場」の意味を考えた
又吉直樹の2作目となる小説「劇場」の映画化。本作を見た私は「又吉直樹はこのようなストーリーも書くのか」と率直に驚いた。
ドラマ化や映画化された「火花」の印象が強烈に残っているため、「劇場」というタイトルからも泥沼に陥るような恋愛模様がメインになるなど想像できなかったからだ。
本作の主演は、演劇の脚本家かつ役者である「永田」役の山崎賢人で髭を生やし、初のアダルトな雰囲気を醸し出している。
そしてヒロインは、女優になる夢を持つ大学生「沙希」役の松岡茉優で、安定した演技を見せている。
「演劇においては天才かもしれない永田」と「彼の夢を支える沙希」のやり取りは、楽しくてお茶目な面が度々出てくるが、女性の視点で感情移入してしまい正直見ていて切なかった。
本作は、行定勲監督の「ピンクとグレー」(2016年)のような謎を辿る探索劇とは違い、恋愛をストレートに事細かに描いていく。
行定勲監督は人間描写に長けているので、2人の「根本的な信頼感」と「いつ崩れてもおかしくない繊細さ」が交差して進んでいく描写が、一つ一つ胸に突き刺さる。
演劇しかない永田に対して、沙希が永田のためにどんどん身を削っていく姿はいびつにも思えるが、両者とも「純粋」である点が本作の見どころの一つである。
そんな2人の理想と現実がどのような結末を迎えていくのかは、是非ご自身の目で確かめて欲しい。
中二病が痛いはずだけど
沙希の目線だと、男に尽くすのはまっぴらごめん。永田の目線だと、ずっと夢を追い続けて自己中すぎてある意味羨ましい。自分の側にいたら関わりたくない人物ですけど!永田の自己愛の肥大化具合とそれを体現した山崎賢人が良かったです。永田が気持ち悪いですが、表現者ってあんなもんなのかも。世間から常に批評ばかりされますから。映画としては面白かったです。
原作未読です。 最近で見た映画で1番理解ができず頭を抱えた映画でし...
原作未読です。
最近で見た映画で1番理解ができず頭を抱えた映画でした。
人物、恋愛、演劇など全ての表現が中途半端だと感じて一切入り込めませんでした。
特に沙希が意味不明でただの奇妙な女に思えました。
永くんに惹かれた理由や離れられない理由を、もっと丁寧に描く必要があったと思います。
バイクのシーンはシュールで面白かったので0.5をつけました。
こういう作品、で括れない
この映画が公開された当時、こういう普通の男女を描いた作品が流行っていたけど、この作品はちょっと異彩を放っている。
汚くて、頑張らなくて、クズなんだけど、リアルで生々しくて良い。
山﨑賢人くんの演技が上手いことがよく分かる作品。
ラストは本作のタイトルの意味を考えさせられる仕掛けになっていて面白かった。
監督の市場分析能力が優秀
この作品に描かれているような経験は、それなりに目標を追いかけ、その未熟な段階で恋愛をし、尚且つその相手が菩薩の如き余裕のある人間であるというかなり限られた前提条件を満たした経験をしたことのある人間にしか完璧には理解できないかもしれない。
それにもかかわらず、おそらくその経験がない者にでも追体験出来るように仕上げた監督の力量は称賛すべきものだ。
人選も見事だ。
男ウケと女ウケが必ず見込めるであろう俳優を的確に選択しており、また、その俳優たちの演技も見事だ。
しかしその力量も監督の力量があるからこそ的確に映画の中の描写となっていると感じた。
又吉については言及しない。
劇団がらみの人なんて別れなさい
山崎賢人扮する前衛的で酷評の作家永田は、松岡茉優扮する沙希に出会った。
どちらかと言うと繊細な世界なのかな。劇団ってのは小難しい事をひねくり返すみたいな。永田は沙希のところへ転がり込むのだが、結局偉そうな事言って金を稼ぐ事も出来ずにいるんだよね。そんなみじめな男にまとわりつかれた女性は大変だ。知人なら劇団がらみの人なんて別れなさいと言うべきだろうな。
ナレーションが多い
主人公男性の心情にナレーションが入ることが多すぎる。
無口な主人公でも表情や仕草で心情を伝えるのが映画なのでは?
退廃的な映画かと思いきやSEXもバイオレスも無しです。。あるのはアル中のみ。
そこら辺も物足りない。
原作を読んでから見た感想
感想
原作を読んだ後に映画版を鑑賞。初めは永田が関西弁を使わない等のちょっとした違和感があったがどんどん世界観に入ることができた。また、本作の一番の見所だったラストシーンが映像ならではの演出だったので見た甲斐は大いにあった。演劇がテーマだったので映画との相性も良かったのかもしれない。
概要
同級生と二人で劇団「おろか」を立ち上げ、脚本家として活動をする永田。人気が出ずにどん底の気分で路頭に迷っている最中、服飾の学校に通っている沙希に出会う。不審な言動で近づく永田に沙希は怯えるが次第に距離が縮まっていく。いつしか永田は沙希の家に転がり込むようになり寄生を始めてしまう。
クリント・イーストウッドを褒めただけで機嫌が悪くなる・・・
あーわかる!その気持ち。自分がミュージシャンになる夢を持っていた学生時代を思い出してしまった。あまりにも似ていたので感情移入もしやすかったけど、現実を見つめたり、演劇に見切りをつけたりする決意がないのはダメダメ。
だらだらと同棲生活を続けると、どうしても甘えが出てきてしまう。また、それを許してしまう沙希の存在。「永くん、すごい」と思っていても、それを言葉には出来ないし、間接的に伝わってしまうのなら、もっと協力してもいいのかも・・・とまで感じてしまった。結局は甘い生活があったから言えないんだよね。感じたことと表現することが違う、ある意味女優向きな性格の沙希だからこそ。
途中までは、あるあるの連続だったから自分の過去をも懐かしむことが出来ました。しかし、ストーリー全体的には抑揚もなく、訴えてくるものもない。せめて沙希が学校を卒業する辺りで大きな変化がある方が面白い。そんな中でも、久しぶりに会った元劇団員・青山(伊藤沙莉)が言う「あー、そっちか」の辺りで気づいても良かった。そのままじゃ完全にヒモ男の物語になっちゃうもんなぁ。
松岡茉優の演技は絶品だったと思うし、山崎賢人もなかなか良かった。最近、伊藤沙莉が気になってしょうがない。
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