ミッドナイト・トラベラーのレビュー・感想・評価
全4件を表示
リアリティとは残酷と地獄をも鮮明に描く。
アフガニスタンからタジキスタン、トルコ、ブルガリア、セルビア、ハンガリーと3年かけて難民として移動する様子、日常の様子を描いたもの。
生まれた場所によって、生活どころか命の危険にまでさらされ、親友もあっけなく亡くすというのは日本人であれば全く想像もできないことだ。でも、それで平和ボケしてはいけない。
難民を受け入れることに賛成反対の意見はあるだろうが、まずは難民の現実を知ることが第一歩である。
劣悪な環境の難民キャンプ、ダニがいてもマットレスで寝れるだけマシな生活、不法入国しないと前へ進めない、悪徳業者に全財産取られても生き抜いていかないといけない。知らなかったこともあり、勉強になった。
生き地獄にいる難民の実態
タリバン政権の恐ろしさというより、各国で難民がどう扱われるのかという実態の一部を描く映画。
感情と感覚に訴えかけてくる描写なので、細かな点で不明点も多い。
たとえば
・スマホの通信費用は誰が払っているのか(動画は通信しなくてもとれるが、娘はネットでMichael Jacksonを閲覧していたし、ハッサンも電話もかけていたことから通信機能は損なわれていないだろう)
・靴をもらった施設はどこなのか
・トランジットから家族は出ることができたのか
・映像は誰に手渡され、商業ベースにのることができたのか
日本語の持つ曖昧さがそうさせてるのか、訳が悪いのか娘の最後のセリフは過去形なのか現在進行形なのか、わからない。
一番最後にたどりついた場所が、やっと自由への一歩を踏み出せる場所であるはずなのに、監獄を象徴する最低の場所だったという絶望。見終わった後もあの家族はトランジットから無事解放されたのかが気になり、そうか、この曖昧で不安な状態がほんの少しでも難民に近しいのだとしたら、観客がこのまま放り出されるのも意味があるのだな、と思った。
否が応でも日本の入管のことを連想する。ネットなどの書き込みでは不法入国者は犯罪者だと辛辣なコメントも飛び交う。だが、彼らはただ単に「安全な場所で働き、生きたい」と渡ってきただけであり、生来は殆どの日本人となんら代わりのないただの小市民である。言葉のわからない国で、手続きのミスや悪質な斡旋業者のせいで終刊された人もいる。
本来、人間の数が少なければ、移動して好きな土地に住み着くことだって可能だろう。生来、人間も動物であれば、むしろどこに住もうと自由なはずなのだ。ハッサンたちは、国家の枠組みと管理により、「人間」から「難民」にさせられているだけなのだ。
そして盗みなど働かなければ暮らせないような状態に、追い込まれいるだけなのだ。
彼らがアフガンで生まれなければ?同じ映画を撮っても、自由を阻まれることなく暮らしていただろう。
しかし世界が誤解しない方がいいのは、恐らく難民の大多数が愛国心を持っていて、子供への危害や紛争がなければ母国に帰りたいと思っていることである(勿論難民キャンプで生まれた世代ではまた違うだろう)。
なのでシュプレヒコールで「母国へ帰れ!」とうのはとんでもない愚かさだ。ユダヤ人に対して、ナチスの台頭していたドイツに帰れと言うようなものである。
ジャレド・ダイアモンドの著書『危機と人類』の日本の章で、日本の難民の受け入れが低いことに言及、難民を受け入れベビーシッターなどとして雇うことにすれば、女性の産後の社会復帰にも役立つと西洋のモデルを例にしていたが、上の例ではなくてもいいが難民を閉じこめておくのではなく、市民の一部として社会活動に加える枠組みが早急に必要だと思う。
マイケル・ジャクソンは正義や差別や偏見と闘う歌を作ってきた。ハッサンのこどもが、意識的にしろ無意識にしろ、あの状況でマイケル・ジャクソンを選んだ感性が泣けてくる。
難民なるということとは
難民という言葉は知っていても、難民を知っているという人は少ないです。
この映画は、難民に降りかかる現実を知ることができるドキュメンタリー映画です。
この映画は、スマートフォンで撮影されています。
上映時間は、87分ですが、映像がブレまくるので、スクリーンから離れた席から鑑賞することをお勧めします。
タリバンは、アフガニスタン国民にタリバンになるか、殺されるか、難民になるかという選択を強いて、支持者を増やし、米国を追い出しました。
米国は、大統領は守りますが、アフガニスタン国民を守れず、アフガニスタンから追い出されました。
登場人物は、このドキュメンタリーを撮影したハッサン・ファジリ、妻で女優のファティマ・フサイニ、長女のナルギスと次女のザフラです。
ハッサン・ファジリは、映画監督になり、カフェを経営し、タリバンから抜けた元タリバン指導者という映像を撮影し、公開し、タリバンから死刑を宣告されます。
この映像に出演した元タリバン指導者は、タリバンにより処刑されます。
ハッサン・ファジリの親友で、タリバンになったハシェミが、ハッサン・ファジリに
身の危険を伝えます。
ハシェミは、投獄され、獄死します。
ハッサン・ファジリ一家は、タジキスタンへ逃亡しますが、難民申請が認められず、アフガニスタンのマザリシャリフに戻ります。
ハッサン・ファジリ一家は、イランのコム、トルコのイスタンブールへ自動車で
移動します。
ハッサン・ファジリ一家は、ブルガリア、セルビアへ徒歩で密入国します。
ハッサン・ファジリ一家は、ハンガリーへ向かいますが、トランジットゾーンで留め置かれます。
トランジットゾーンは、国境沿いの金網に囲まれた幅十数メートルの区域です。
ハンガリー政府は、難民の入国を認めず、難民をトランジットゾーンで、拘束します。
日本政府も同じようなことをしています。
2021年3月6日、名古屋出入国管理局で収用中のスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(33)が死亡しました。
国と都市を把握していると、5600kmという距離の遠さが理解できます。
4000ユーロは、約50万円です。
パレスチナ問題を含む、難民問題は、難民だけが居住し、世界が支援する国家でも樹立しない限り、解決策はないと感じています。
日本で観ることのできる奇跡
アフガンの映画作家が、タリバンの指導者を主人公に作品を撮り、文化的なカフェを営業したことで、タリバンから死刑宣告を受け、難民となることを受け入れて家族4人で旅をすることに。走行距離は5600k、期間は3年。
アフガニスタン→イラン→トルコ→セルビア→ブルガリア→ハンガリーと旅するが、待ち受けるのは難民排除の反発と弱味に付け入る密航協力業者たちだ。
撮影は3台のスマートフォンでされ、その都度、デバイスの容量を圧迫しないよう、アメリカの編集者に送られて、この90分のドキュメンタリーが完成した。
ヒリヒリするような命の危険とまさに隣り合わせの、「真夜中の旅」。しかし、さすが映画作家、スマホで撮ったとは思えない自然の美しさや、子供たちの笑顔、妻の魅力をきちんと映像に留めている。「大人になってもヒジャーブで髪の毛を覆わない」と明るく話す長女の姿がイスラム圏の人々のリアルを伝える。
映画の可能性を大いに感じた90分。そして、今まさに大揺れに揺れるアフガニスタンの現実を日本で観ることができる奇跡に感動する。誰も報じない映像を1900円で見ることができる幸せ。本年度ベストワン候補の一作となった。
今後上映館が広がることを切望します。
全4件を表示