ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺんのレビュー・感想・評価
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映像と色彩がシンプルで美しい
貴族の娘サーシャが、行方不明となった探検家の祖父が艦長を務める北極探検船ダバイ号を探す為、独り邸宅を出る。
利発な娘サーシャが、強く逞しく成長していく姿、巨大な流氷の美しさと恐ろしさ、厳しい極寒の中、ノルゲ号の乗組員達と共に苦難の捜索を重ねる様に引き込まれた。
字幕版で観たかった。
Eテレを録画にて鑑賞 (吹替版)
無謀でしょう・・・
高畑勲監督もお気に入りだったシンプルな画風の冒険少女アニメ。
主人公はアリスでなく14歳のロシア貴族の娘サーシャ、祖父譲りの冒険心から北極探検で消息を絶った祖父を探す旅なのだが、1年も前に北極海で消息不明、いくら無線の無い時代とはいえ無事でいるとは思えない、そこで製作陣も安否より祖父の名誉挽回に舵をきったようだ。
どう考えても無謀な旅なのだが、幸い祖父の船に懸賞金が掛けられており船乗りの支援を得られることになり北極への冒険の始まり・・・。
サーシャは可愛さより意思の強さを表すように強い目力で逞しく描いている、人物や犬などはシンプルなのだが船や氷山など背景は実写から加工したリアルな画風でコントラストが愉しめる。
見どころは自然の猛威との戦いというより、傲慢な王子や体面を重んじる貴族社会、食堂の肝っ玉母さん、船長兄弟の葛藤など様々な人物描写の方が人生勉強になるでしょう、これを観た子供たちには間違っても一人で冒険に出ないように祈るばかりです。
少女は探検家
フランス/デンマークの2015年のアニメーション映画。
その作風は、昨今の日本の緻密な作画やハリウッドのCGアニメとは全く違う魅力で、初期の宮崎/高畑作品、いやもっと言うと、日本アニメ映画の礎である東映動画を彷彿。
ヨーロッパのアニメと言うと独創的で芸術性高いイメージだが、躍動感に溢れた冒険活劇という言葉がぴったり!
不必要なものを削ぎ落とし、それこそ最小限の装備で冒険に出たような、コンパクトにまとめた81分。
かと言って、準備不足ではない。
19世紀のロシア。
1年前に北極圏へ探検に出たきり消息を絶った祖父。
祖父が生きてるかもしれない望みを掴み、再捜索を乞うも、皇帝の甥の王子どころか両親すら聞く耳持ってくれない。
ならば、私が。そして少女、サーシャは旅立つ…。
目的~旅立ちまでがしっかりと描かれている。
しかしこのサーシャ、苦難にも挫けぬ逞しいヒロインに非ず。世間知らずの令嬢。問題やトラブルにぶち当たる。
祖父のダバイ号が通ったと予想される航路を追って、北へ北へ北へーーー。
船に乗らなければならない。
乗せてくれる船を見つけるも、手違いで船は出港。船代代わりの大事な祖父がくれたイヤリングまで奪われ…。
お嬢様にこんな探検は一人じゃ無理。助けになってくれる人が現れる。
その港町の宿屋のおばさん。寝床と飲食と仕事を与える。初めての仕事にたった一日でヘトヘトバテバテだけど、ダバイ号を見つける為にーーー!
少女の成長。ここら辺、とてもジブリ的。
そして今度こそ間違いなく船に乗れる事になり、ここから本当の探検へ。
波の音、船内部のあらゆる音、船の揺れまで、それらがとてもリアル。
いよいよ北の海に近付くにつれ、それが緊張を増していく。
船が氷を割って進む音。軋み、亀裂が入る音。
当然、それは襲い掛かる。
手に汗握るほど、スリリング。
サーシャや船員たち、船は一瞬にして…。
負傷者も。物資も残り少ない。
引き返す事は出来ない。救助も待てない。
サーシャを信じ、ダバイ号目指して、進むしかない。
が…
寒さ、疲れ、飢え…。
不平不満…。
遂にサーシャにぶつけられる。
こんな小娘の戯言を信じたからだ!
確かに少々自分一人の意見を押し通し、船員たちの反発も分からんではないが、堪らず、猛吹雪の中を飛び出すサーシャ。
その吹雪の描写の圧巻さもさることながら、まるでサーシャの絶望を表しているかのよう。
しかしその吹雪の中で…
ラスト辺りはご都合主義と意見分かれるかもしれない。
しかし、自分は肯定派。こう見れないだろうか。
あの吹雪の中、苦難の末遂に見つけたダバイ号、帰路の美しい夕陽…。
サーシャは祖父の元に辿り着いた。
同じ景色を見た。
偉大な探検家の祖父を持つ少女もまた、探検家になった。
北の果てを目指して一緒に旅する気分になれます。正統派の冒険アニメーション作品です。
ポスターを観た瞬間に「観たい」と思った作品です。
観る機会がなく、今回ようやく鑑賞することができました。
ポスターを見たときの印象としては
キャラデザの雰囲気もあって、「白蛇伝」 や 「ホルスの大冒険」
みたいな作品かなと思っていました。
当たらずとも遠からず。 …いや、遠いかも (弱気)
探検から戻らぬ祖父を探しに旅立つ少女。
立ちはだかる苦難の連続。
どんな展開になるのか最後までハラハラ。
王道を行く、良質な冒険物語でした。
観終わったあとに頭に浮かんだのが 「世界名作劇場」。
「母を訪ねて三千里」 の マルコ とか
「家なき子」 の レミ とか
「ペリーヌ物語」 の ペリーヌ とか
いずれも主人公が苦難を乗り越えながら旅をし、
旅を通して成長していくお話。
この作品は、主人公サーシャの成長物語でした。
◇
19世紀末
ヒロイン・サーシャはロシア貴族の娘
大好きな祖父は冒険家
北極点を目指したまま戻ってこない…
捜索隊が出るも、手がかり無し
それなら自分が探しにいかなくちゃ
というわけで
一人旅立つサーシャの運命やいかに
という冒険活劇(※)です。
エンディングまで、しっかりと楽しめる作品でした。 満足。
※ 古い表現なのかもしれませんが、
これが一番あっている気がしました。
◇ あれこれ
■エンディング その1 父と娘
出航した港に戻ってきた際の場面がエンドロールとして流れる中
家出も同然に旅立った(というか家出そのもの) サーシャを
何も言わず、ただ抱きしめる父親。
父の首にしがみつき、顔を埋めるサーシャ。
↑ この場面、エンディングなのでセリフはありません。
なのに、心情がとても良く伝わってきました。
思わずほろり
■シロクマさん
食料が尽きたクルーから離れ一人吹雪の中を行くサーシャ
シロクマが現れた 大ピンチ
食われてしまう~
…
ずどーん
…
めでたく食料となるシロクマさんでした。
白熊ってどんな味なのでしょうね。
「しろくまアイス」しか食べたことありません ←これは好き ♡
※三毛別羆事件みたいな悲惨なエンディングに
ならなくて良かったと、しみじみ。
■エンディング その2 フラグ
おじいさんが北極点に立てた「旗」
最後の最後に、それが
風に飛ばされていく描写で終わるのです。 ぴゅぅ
うーん
これを、どう解釈したらいいのかなと
あれこれ思案…
・「航海日誌」は祖父の願いどおりサーシャの手にわたった
・祖父の北極点到達も世間の知るところにもなった
・北極探検船も、無事にロシアに帰ることができた
↑ということからすると
「祖父の願いが叶ったので、祖父の立てた旗が天に昇った」
と、そういうことなのでしょうか。 はて
実に奥の深いエンディングです。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
欧州動画の底力
故高畑勲も強烈な推薦をしていたという今作品、確かに鑑賞後にその想いが深く心に染込む内容であった。
先ずは何と言ってもその画の圧倒的透明さ。まるで切り絵のようなシンプルな質感だが、この全体的に黄色い色彩設計をどうやったら日本で表現出来るか困難な程の、マットで、しかし透明感振れる鮮やかな色彩なのである。勿論、夜のシーン、暗い部屋のシーン、大嵐の洋上シーン等は一気に薄暗くなるのだが、それとの対象の凄まじさは計算され尽くした演出となって映し出される。目映いばかりの太陽と、だからこそ強調される影、これは北極近くだからこその太陽の強さを印象付ける意味でしっかり画力となって伝わるのだ。確かに映像とというより、一枚一枚のセンス溢れるイラストがスムースに繋がっているかのような錯覚さえ覚える。日本アニメの倍のコマ数で動く贅沢な動画は、その滑らかな動きを遺憾なく写し取られ、観る者に感嘆と羨望のため息を誘発させる。そしてその魅力的な画に載せる叙情感ある、そして最新のハイセンスの劇伴。エモーショナルを存分に引き出す楽曲に、これ又心地よさを引っ張り出される。
ストーリー内容も、万国共通の易しい冒険譚になっていて、自分のアイデンティティを探すジュブナイル物としての要素もしっかり織込まれる。特に港の居酒屋的食堂の女将さんのパートは、そのテンポ感が驚くほど心地よく、1ヶ月という期間で、所謂“お嬢様”から一人の探検家に成長する件は、只々優秀なアニメを見惚れる程の出来映えである。こんなシンプルな画なのに、空の広さ、風景の圧倒的広がり、グラデーションの妙等々、正に高畑版かぐや姫にも通づる大胆な構図と余白の置き方は素人でも充分理解できる。
スペクタクルなシーンも充分見応えを感じたし、そして極限状態に於ける人間の行動はまるで“八甲田山”を想起させるストレートな演出に心が抉られ、そしてそこからの自然を超越した神的な流れの中で、探していた祖父との再会迄を演出したブリザードの表現と、幻想的で冷気をたっぷり含んだ濃霧の超絶リアリティな動き。目の生き生きとした動きと力強さはあのシンプルな作画でどうやって心理描写を表現させているのか感心することしきりである。
エンドロール後の、祖父が北極点に挿したお子様ランチのような旗が風で飛ばされるシーンは、多用な解釈を想起させる。北極はどの国のモノでもない、孫娘が迎えに来てくれたことでやっと待つことを終えることが出来た安堵、折角挿した旗が無常に飛ばされる一種の皮肉とコメディ要素、etc・・・ そんな解釈の余白をも描写する今作品の恐ろしさは驚くばかりである。
日本は勿論アニメーションとしては世界中で認められている産業だが、果たしてこういう情緒を養う芸術的な作品はどれだけ制作されているのだろうか…。フランスのアニメのレベルの高さに憂慮を隠せない自分がいる。
英語題名+フランス語題名
この作品は、1880年代つまりロシア革命の30年ばかし前の時代に15才のサーシャという女性の北極での冒険を描いている。
映画の冒頭、ロシアの文化的位置付けにあるサンクト・ペテルブルグの港からサーシャが愛する冒険家の祖父が乗る船が今まさに出港をしようとしている。その後祖父の乗った船が行方不明となり人々は、船が沈没したと考えていたが、サーシャだけは、不沈船が遭難するとは考えていなかった。ある日、祖父の書斎で、北極点までのルートの手掛かりになるノートの切れ端が出てきた。それをもとにロシア皇帝の甥にあたる王子や父親に祖父の消息を捜しに行きたいと提案しても誰一人彼女に耳を貸そうとする者がおらず、ついには後先を考えず、豪邸を飛び出して北極を目指すことのできる船のある港まで無一文で行ってしまう。ダバイという船に乗ることを一等航海士のラーソンと約束するが、見事に騙され、失望しているとレストランの女主人が手を差し伸べる。始め怖そうなおばさんと思いきや..........? 掃除洗濯、もちろん食事の支度や給仕など生まれてからこの方1度も経験もしようとさえ思ったことのない、何不自由のない生活をしてきたお嬢様で何もできない非力なサーシャがついに1ヶ月で祖父の消息を捜しに行くことが出きるまでに成長する..................。
デフォルメされ色の配色などが統一され、あたかも無駄なものは無視するかのように全体的にそぎ落とし簡素化して見やすく、そうはいっても迫力のある氷山が砕け散るところやダバイが押しつぶされてしまうシーンなどは迫力があり、簡素化されたものの中でも例外もあり、船のドバイのマストやロープ、船外の描写は具体的に表現されている。
この映画の特徴として15才の女性の北極を舞台にした過酷なしかも生死を分けてしまうような北極という荒々しい自然環境におけるサバイバルを描いていて、観ているものにワクワク感が半端なく伝わってくるし、しかもシナリオ自体もよどみなく進んでいきサックと観ることができた。犬のシャックルのかわいいワンポイントも登場します。
この映画を観て、個人的な意見として、プロデューサーであり、東映の代表取締であった大川博という人物を思い出す。ステレオタイプのワンマン社長でその風貌に特徴があるにもかかわらず彼がいなければ、今皆さんが見ているアニメーションが、ただの子供の読みものの漫画で終わっているか、アニメーションという言葉も存在しないかもしれないと思っている。その当時の漫画を数段階飛躍させて"文部省推薦"なんて言う冠もつけることができている。その中でも劇場公開映画「ガリバーの宇宙旅行(1965)」や「少年ジャックと魔法使い(1967)」のデフォルメ感や冒険活劇のストリー性などを彷彿とさせる。また2009年の、フランス、ベルギー、アイルランド合作の長編アニメーション映画「ブレンダンとケルズの秘密」というものも参考にできるかもしれない。
amazon.comではすでにプライムビデオとして配信されていて、そこには"goofs"としていくつかの変なというか歴史的に存在する訳がないものも出てくるし、この映画自体、1880年代では北極点近くまで人類は誰一人として到達はしていないのが歴史上明白なことで、重箱をつつきたいものとしては?
しかし、そんな馬鹿げたチンケなことはどうでもよくてほっといたほうが得策で、面白い映画は面白いと鑑賞されたほうが、よいのは当たり前のことかもしれない。
1873年に創業したときライバル新聞紙のビルの1部を借りて事業開始したミシガン州における2大新聞紙の1つThe Detroit News その見出し
"Review: ‘Long Way North’ a story of dream fulfilled"
「全体からすると、映画"ロング・ウェイ・ノース"は、魅力的で受け入れやすいフェミニストメッセージを含む、視覚的満足のできる映画である。」
ジャーナリズムの文学的スタイルと芸術、特に映画と演劇に特化した週刊誌、Chicago Reader
"Long Way North strikes a blow for 2-D animation in a 3-D
marketplace " と題された2016年12月15日の記事から
「スマートで、エキサイティング、そして鋭くはっきりとしたキャラ設定がされている。このフランス - デンマークのアニメーションは最高位の家族向け娯楽です。」
2016年7月28日(木)アンスティチュ・フランセ東京で以前公開されている。
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