「少女は探検家」ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
少女は探検家
フランス/デンマークの2015年のアニメーション映画。
その作風は、昨今の日本の緻密な作画やハリウッドのCGアニメとは全く違う魅力で、初期の宮崎/高畑作品、いやもっと言うと、日本アニメ映画の礎である東映動画を彷彿。
ヨーロッパのアニメと言うと独創的で芸術性高いイメージだが、躍動感に溢れた冒険活劇という言葉がぴったり!
不必要なものを削ぎ落とし、それこそ最小限の装備で冒険に出たような、コンパクトにまとめた81分。
かと言って、準備不足ではない。
19世紀のロシア。
1年前に北極圏へ探検に出たきり消息を絶った祖父。
祖父が生きてるかもしれない望みを掴み、再捜索を乞うも、皇帝の甥の王子どころか両親すら聞く耳持ってくれない。
ならば、私が。そして少女、サーシャは旅立つ…。
目的~旅立ちまでがしっかりと描かれている。
しかしこのサーシャ、苦難にも挫けぬ逞しいヒロインに非ず。世間知らずの令嬢。問題やトラブルにぶち当たる。
祖父のダバイ号が通ったと予想される航路を追って、北へ北へ北へーーー。
船に乗らなければならない。
乗せてくれる船を見つけるも、手違いで船は出港。船代代わりの大事な祖父がくれたイヤリングまで奪われ…。
お嬢様にこんな探検は一人じゃ無理。助けになってくれる人が現れる。
その港町の宿屋のおばさん。寝床と飲食と仕事を与える。初めての仕事にたった一日でヘトヘトバテバテだけど、ダバイ号を見つける為にーーー!
少女の成長。ここら辺、とてもジブリ的。
そして今度こそ間違いなく船に乗れる事になり、ここから本当の探検へ。
波の音、船内部のあらゆる音、船の揺れまで、それらがとてもリアル。
いよいよ北の海に近付くにつれ、それが緊張を増していく。
船が氷を割って進む音。軋み、亀裂が入る音。
当然、それは襲い掛かる。
手に汗握るほど、スリリング。
サーシャや船員たち、船は一瞬にして…。
負傷者も。物資も残り少ない。
引き返す事は出来ない。救助も待てない。
サーシャを信じ、ダバイ号目指して、進むしかない。
が…
寒さ、疲れ、飢え…。
不平不満…。
遂にサーシャにぶつけられる。
こんな小娘の戯言を信じたからだ!
確かに少々自分一人の意見を押し通し、船員たちの反発も分からんではないが、堪らず、猛吹雪の中を飛び出すサーシャ。
その吹雪の描写の圧巻さもさることながら、まるでサーシャの絶望を表しているかのよう。
しかしその吹雪の中で…
ラスト辺りはご都合主義と意見分かれるかもしれない。
しかし、自分は肯定派。こう見れないだろうか。
あの吹雪の中、苦難の末遂に見つけたダバイ号、帰路の美しい夕陽…。
サーシャは祖父の元に辿り着いた。
同じ景色を見た。
偉大な探検家の祖父を持つ少女もまた、探検家になった。