「サイコロジカルホラーという概念」ミッドサマー R41さんの映画レビュー(感想・評価)
サイコロジカルホラーという概念
この作品が何を伝えたかったのか、まるで見当もつかないまましばし項垂れた。
作品の意図がわからなかった。
しかし少しググってみたらこれがサイコロジカルホラーというジャンルであることと言うので少しホッとした。
しかし、
実際に存在する国家とそこにあるミッドサマーという夏至祭
これを外国人が勝手な解釈に加え大きく曲解させて描くことは、道徳上許されることなのかと疑問を持って調べると、「一定の配慮の元に創作の自由の一環として許容されている」ということなので、それについての言及は避けることにする。
さて、
ホラーというにはあまりにも実在のものが多すぎて困惑してしまうが、これこそが監督が仕掛けたトリックなのだろう。
90年に1度の大きな祭り
大学の文化人類学を学ぶ仲間たちの論文の題材
彼らに紛れ込むように参加したダニーは、妹の精神疾患によって両親を巻き込んだ大きな自殺となってしまった。
妹からの相談のメールに毎回心を大きく揺さぶられていたダニーは、恋人とその友人たちからも異常だと思われていた。
この物語におけるダニーは、生と死の狭間にいたと考えられる。
そこにごく一般的なアメリカ人の若者のスタイルが隣り合わせになっている。
この取り合わせが、ダニーの心情の不安定さを際立たせている。
初めからダニーの心の不安定さで始まったこの物語は、実際の家族の死という悲劇に対して処理が追い付かずに苦しみ続けていた。
特に家族という言葉に強く反応してしまう自分自身を抑えるのに必死になっている姿が印象的だ。
喪失
最初はこの作品が喪失と再生の物語なのかなと思った。
そして、らせん状に1周回って、その通りだった。
この1周こそ、狂気なのだろう。
精神的に崩壊寸前のダニーは、この異常者たちが集うコミュニティで自分の居場所を見つけたことになる。
女性陣たちがダニーの心の叫びに合わせて一緒に叫ぶ。
それは彼女たちの言う通り、家族がそうであるように、姉妹がそうであるように、悲しみを分かち合うことに他ならなった。
ダニーは、恋人クリスチャンの喪失によって、同時に新たな家族ができたのだろう。
この、人間のぎりぎりのラインにあるものの正体が一番恐ろしいのかもしれない。
一言で言えば狂気
「それ」は当然だという風習
そこに染まった自分自身
さて、、
生贄という概念は、古来どこの国でもあったのだろう。
命を差し出すことこそが、神に対する信仰心の表現なのだろう。
この「神」についての考察は深いところになるので省くが、いまネットでも見ることができる「創世記」
この創世記に登場する「神」
創世記の第1章と第2章では、その「神」なるものが別人ではないのかと私は考えている。
その別人なる「偽の神」の概念が下敷きとなっているのが、この世界の様な気がしてならない。
さて、さて、、、
この物語の構図はとてもよく作りこんでいる。
それ故に冒頭の疑問が出たのだが、このミッドサマーでの儀式で偶然だったのはメイクイーンが誰になるのかという点だ。
ペレの役割こそが、すべての恐怖の始まりだった。
同時にイギリスからサイモンとコニーを連れてきた村人も生贄となる恐怖。
ペレはダニーに特別な思いを抱いている。
彼が見せたスマホの写真でダニーがスウェーデンに行く決心をしたのだろう。
同時に彼の嫁候補でもあった。
またマヤには姦通するという言葉がどうかわからないが、その権利が与えられ、彼女はクリスチャンを指名した。
このことが物語を面白くさせている。
9人という数字は90年ごとという数字に呼応しているのだろう。
そのうちの2名が、儀式の最初に自殺という形式で達成された。
そこに否応なく加算されたのが、それを見て逃げ出す計画をしたサイモンとコニーだ。
たまたま「罪」を犯したジョシュとマーク
そしてサイモンとコニーを生贄に連れてきた村人と彼らを殺した村人の2名
これで計8人となる。
ここで奇妙なのが、
動けない状態にされたクリスチャンがいるにもかかわらず、ビンゴみたいなものでもう一人の候補を抽出する方法だ。
それを選ぶ権利が、メイクイーンに与えられる。
おそらく、誰かを連れて帰れなかった分が、抽選となるのだろう。
90年に1度
この抽選は一生に一度のことだ。
黄色いログハウスが焼かれる際の狂喜乱舞はそれを表現しているが、同時にそこにある狂気と、どうしてもその土台にある神への生贄、つまり創世記の物語を想像してしまう。
メイクイーンの選択権
物語上ダニーに与えられていた情報とクリスチャンに対する失望が最後の犠牲者を選択させた。
しかし、
それでもまだダニーは失意の中にいる。
燃え上がるログハウスと鳴り響く歌声
次第にダニーの表情がほころび、笑いに変わる。
ダニーは、悲しみを分かち合ったのではなく、狂気を分かち合っていたのだ。
見終わった直後から、いったい何を見たのかわからなかった。
あっけにとられた。
思考が追い付かなかった。
ホラーでよかった。
架空の土地、架空の因習と事件という舞台装置で作ったホラーというなら、日本の作品なら古くは『八つ墓村』、近年では『ひぐらしの鳴く頃に』が近いかな?
ひぐらしと今作は、いずれも夏の陽射しのもとの狂気の物語。
割と共通点がある気がします。
こんにちは〜。共感ありがとうございます
ヤン君見たさの鑑賞だったので、内容は、変なの〜と思いながら観ていました。
そして、びっくりなのがビヨンアンドルセンさんが、出演していた事がびっくりです。