「〈郷に入れば郷に従え〉」ミッドサマー YUKAさんの映画レビュー(感想・評価)
〈郷に入れば郷に従え〉
主人公のダニーは、信じられないくらい悲しい事件が起こり、恋人のクリスチャンを頼りますが、クリスチャンは友人達に彼女は病気だなどと言われ、愛がどんどん冷めていきます。そんな折りに友人の内の一人に海外に誘われ、ダニーも一緒に異なる文化の北欧の村のコミュニティに参加します。そこで冒頭のシーンにあるような世界がひっくり返る経験をします。最初に違和感を感じる性的な描写や、後々の死に繋がっていく命の輪へのショッキングなシーンは、観る人を確実に選びます。ディレクターズカットシーンも観ましたが、子供を生贄に捧げるような描写があり、それは本当にハラハラしました。主人公とその彼氏は困惑しながらも、村の文化に対応していきますが、一部の理解できない外部の人間には最初は村の人たちも優しく諭しますが、やはり生きては帰れません。花が咲くように、命は巡るように生贄としての肉となります。後日、ダニーは村の女王を決める踊りで最後の一人となり、優勝します。彼女はその村の『女王』として、共同体の『家族』となります。一方、主人公の彼氏は、村の女の子に誘われ、裸の女性が何人も手を繋いでる儀式の場で、その子とまぐわいます。しかし、そのシーンをダニーは鍵穴から観てしまいました。すると、女王の使者の女性たちが激しく嗚咽する彼女と共に嗚咽し、泣くと泣き、女王と同じ『共感』をします。そのシーンは、優しさもありますが言葉にできない怖さがあります。後日、山の神に捧げる生贄が必要となります。その決定権は女王となったダニーです。命の循環のために命を捧げます。女王が最後に高らかに笑うシーンは圧巻です。徐々に適応していく主人公のダニーと、誘ってくれた友人の思惑と、女王としてダニーが席に着いた際の、草や花のまるで生きているような動き。このコミュニティでは毎日繰り返されているライフサイクルの仕組み。そのすべてが、悲しみのどん底にいた主人公のダニーを呼ぶ為のものだったのではないのかと思います。