劇場公開日 2020年2月21日

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「新たな血と新たな女王」ミッドサマー 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0新たな血と新たな女王

2020年3月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

衝撃だった。彼らはカルト集団なのか、極めて純粋な伝統継承者たちなのか。あまりにも開放的で牧歌的な風景がそれをぼやかしてしまうほど、狂信的で盲目的。冷静に見つめれば、これはスウェーデンのいち山村の出来事なのではなく、多少形を変えながらも世界中にある(いや、かつてあった)風習なのではないか。アフリカでだって、アジアでだって、そして日本でだって。むしろ日本を舞台にして焼き直してみれば、ごく自然に物語が生まれるんじゃないかとさえ思った。
祭事は、人間の思考とは関係がなく、何かの意図に添って行われていく。老人は、老いてゆく苦しみよりは、自らの命を与える。それを見送る村人たちもそれを当たり前のように笑顔で見届ける。そして時折、よそから新しい血を迎える。似つかわしくないものは排除され、選ばれし者には同化を強要しながら。
なんておぞましいのだ。姿が見えないのに赤ん坊の泣き声がする不気味さが、その気分を駆り立てる。不穏な音楽に、不穏な空気。なのに幸せそうに村人たちは笑っている。これはきついなあ。感情を揺すられたことを評価の対象とすれば星数は増えるが、嫌悪をマイナスに査定するとなれば、数は減る。差し引いて、プラマイゼロ。

栗太郎