「Skåååålll!!!!」ミッドサマー KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
Skåååålll!!!!
1.はじめに
映画「ミッドサマー」はやたらと「9」という数字に拘っていたので、この感想文も9つの章に分けて書き連ねてみることにした。
完全に見切り発車である。やりづらい。
ちなみに鑑賞したのは一週間前なので、この感想は鮮度を失っている。熟成肉である。
2.いきなりの総評
快感の強い映画だった。
インパクトの付け方、モチーフの数々、ストーリー展開、全てたまらなく好きだ。
しかしどうしても苦しくない。
気持ちよくて気持ちよくて、圧倒的に痛みと恐怖が足りていなかった。
いっそのこと終始トランス状態に陥ってしまいたいのに、盛り上がってきたところで現実のテンションに引き戻されてしまうのがなかなかに辛い。
3.まだ続く総評
そもそもストーリー自体はかなり単純でありきたりだ。
ヤバい田舎のヤバい儀式に巻き込まれる系。
それをものすごい熱量で作り込み、やたらと仰々しく勿体ぶって描き、ドヤドヤのドヤ顔で観せてくるものだから、こちらは若干萎えてしまうのである。
しかし、表現力の強さは凄まじいものがあった。
後を引いてたまらないのだ。
この映画の中の色々な物事について、悶々と考えを巡らせてしまう。
そうさせるパワーがあるというのは、実は結構すごいことだと思う。
4.祝祭の開催頻度について
「90年に一度」は絶対に嘘だと思っている。
村人たちの受け入れ方、所作とパフォーマンスの揃い方、慣れ方、女王の写真の数。
それらを見れば、この祝祭が一生に一度あるかないかの催し事ではないことは明らかである。
毎年やるほどの体力は無さそうなので、「9年に一度」が正解ではなかろうか。ほら、だって、9だし。
もし万が一、本当に90年に一度開催しているのであれば、村人たちの練習量は相当のものだろう。
運動会だって卒業式だって練習するじゃない?ああいう感じで何回も何回もやってきたんだろう。
練習風景を想像するとシュールで可笑しい。
5.ダニーとクリスチャンについて
家族全員を失ったトラウマガール、ダニー。
主人公にしては魅力の薄さが気になるが、後半の彼女はなかなか輝いていた。
拒否、共鳴、同化、決別、昇華。
彼女に新しく家族ができて良かった。
あの家族たちはなかなか絶えないだろう。安心して良いんだ。
きっと、あのようにして増えた仲間が何人もいるんだろう。
恋のおまじないを描いたタペストリーの通り、村の少女に堕とされゆくクリスチャン。
「スウェーデンでヤリまくる」という宣言が実現する皮肉さよ。
少女の陰毛を喰らったことしか言及していなかったが、飲んだジュースには少女の血液が混ざり赤みを帯びていた。
あの血液。絵を見たときには経血かと思っていたが、「自分で性器を傷つけて採ったもの」だと認識し直した。そうか、破瓜か。
6.人肉について
明確に人肉を食べている描写は無かったが、喰ってないわけないだろうと思う。
死んだ人間の肉を食べてこそ、村の中で生命が廻っていることになるのではないか。
名前を受け継ぐ〜とか生温いこと言ってる場合じゃない。人肉を喰え人肉を。
崖から落ちた二人の死体を綺麗そのまま焼いていたシーンが信じられなくて、唖然としてしまった。
いや、綺麗そのまま、なわけない。
きっと身体の肉をくり抜いて、中に詰め物か何かして、火葬に出したのだろう。
あのミートパイの中身は二人の肉だったと、私は信じている。
7.ゴア表現について
人体破壊の描写、造形、映し方、インパクト、どれも申し分ない。
完全にパワフルでショッキングだった。
願わくば、その過程を見せて欲しい。
破壊が完成されている肉体をただ見せられても、痛みが伝わってこない。
コニーの絶叫の際、何をされたのか。観たいのだ。
身体を開かれ吊られてもなお息をしていたサイモンの苦しみ。感じたいのだ。
生意気なマークの皮が剥がされる瞬間の歪んだ顔。そのものを見たいのだ。
8.しつこく三度目の総評
最初にも述べたが、恐ろしくない映画だった。
村での出来事よりも、ダニーをめぐる友人たちの気まずい空気の方がよっぽど怖い。
明らかに敬遠したいマーク達と、それに気付けないダニーの構図。ゾワゾワするでしょう。
とはいえ、ここまでの量の感想を連ねるほど、力のある映画だった。
まんまと手の内に嵌っている、ということなのだろう。
正直微妙だったな…と思いつつ、きっと私はこの映画が好きなのだ。
そりゃそうだ。
ホラーなんて、どんなにつまらなくても嫌いにはなれないのだ。
ただし、公式サイトでめちゃくちゃに解説しまくるその姿勢は好きになれない。
「あれ、もしかして…」の状態になるのが一度良いのだ。私はそう思っている。
言われないと気付けなかった点もあったから悔しいんだけどね。
9.おわりに
この一見ボリューミーな感想文は、全然大したことを言っていない。
とりとめなく巡る私の想いを、仰々しく勿体ぶって綴ってみただけなのである。
いかにも「ミッドサマー的」かなと思って、小賢しいことをしてしまった。
いつもの文体とは違う形を取ってきたので、私自身やりづらかったし、読みづらいものになってしまったと思う。
しかし思い返してみれば私の文章はいつ何時も読みづらいものだったので、まあ良しとする。良しとしてくれ。
そもそもこの文章を読んでくれている人はどれくらいいるのだろう。どう考えても長すぎるだろう。ここまで辿り着いた人はいるのか。
実は私の文章を一番読んでいるのは私だと思う。
映画の感想を記録するために始めたものだけど、文章を作ることに楽しみを見出しているのもたしかなのである。
たまにはこういう試みもありかもしれない。
しかし、こうやって長々とずるずると語り続けてしまうのは悪い癖だなとつくづく思う。
「映画の感想」の範疇を明らかに超えている。いや、実は締め方がわからなくなっているだけだ。たぶんあと50行くらいは文章を生成できる。
やめておこう。この辺で。
とりあえず「Skåååålll!!!!」