劇場公開日 2020年2月21日

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「素朴で明るい絵面は恐怖の額縁」ミッドサマー ニコさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0素朴で明るい絵面は恐怖の額縁

2020年2月26日
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 急に怖いものが出てきて驚かされるということがないという風評を聞き、ホラーは苦手だが観に行った。結果、並のホラーよりメンタルにクリティカルなダメージを受けた。中辛のグロあり。身近な人間に理解されない傷を抱えた人だけは、最後に爽快感を得られるだろう。
 この作品の舞台に限らず、地方の古い風習とは、それを見慣れないものの目には時にどこか得体の知れないものとして映る。主人公たちが村を訪れた時、観客もその得体の知れなさを感じるのだが、村人は友好的であり、自然や花と明るい光にあふれた空間がある。残酷な儀式はあるが、彼らなりの信仰に基づいて行われている。カルトではあるがこれは文化や信仰の違いとみなして侵さざるべきものなのか。などと思考がうろうろしているうちに、中盤以降どんどんとんでもないことになる。
 監督へのインタビュー記事によると、ヴァイキングの風習に劇中で行われることと近いものがあったらしい(もちろんあくまで参考にしたということで、全てが事実そのままなわけではない)。北欧神話を下敷きにしていることも見て取れる。
 ざっくりした言い方になるが、ホラー映画にありがちな、未知の怪物や幽霊や巨大生物やサイコパス等が敵として襲ってくるパターンならば、敵から逃げ切ったりやっつけたりして終われば鑑賞後の気持ちのキレはいい。だがこの作品で恐怖をもたらすものはそういった敵ではなく、おぞましいイベントがいにしえの風習とシームレスに融合し、明るくふんわりした風景の中で、素朴な善意をもって行われている姿だ。鑑賞後もなおまとわりつくような恐怖の後味が残るのはそのためかも知れない。
 序盤で主人公に起こることは監督の実体験がモデルとなっており、映画製作は監督のトラウマの癒しになっているという。確かにアウトプットは優れたメンタルケアだし、そういうスタンスならラストはあれしかない。監督の作った箱庭をスクリーンで見せられたということか。
 独特の世界観と重たいパワーを持った映画。2回観に行くエネルギーは、私にはありません。

ニコ
かせさんさんのコメント
2023年6月16日

オーディン信仰があちこちに垣間見られましたね。

かせさん
ニコさんのコメント
2020年2月27日

メモ:見た人限定完全解析ページ(公式)https://www.phantom-film.com/midsommar/mystery/index.html

ニコ