「明るく美しく不快で凶悪な、逆襲のファンタジー」ミッドサマー ぐちたさんの映画レビュー(感想・評価)
明るく美しく不快で凶悪な、逆襲のファンタジー
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まず、てんこ盛りの不快さについて。
フローレンス・ピューが演じる主人公ダニは、精神を病んでいた妹と両親を無理心中で失う。
恋人は頼りにならない。音楽は不協和音を奏でる。ドラッグによる幻視。花の飾りつけも過剰であればそれは美しいというより異様である。
そして、ダニたちが訪れたスウェーデンの村の不気味さ。
白夜の明るさの中で、住人が揃って同じ白い服を着てにこにこしている。皆がにこにこしているのは不自然であるし、喜ぶ、泣く、そうした感情を皆で共有するのも気味が悪い。個人の感じ方や感情はないのか。
セックスは全裸の女性たちが見守り、かけ声をかけ続ける中で行われる。
ここではセックスは、男女が個人の選択として行うのではなく、村の意思として個人に強いるものである。つけ足すと、全くエロくない。
さらに、村の作法に反したときは、仮に作法に無知であったとしても処罰され命を奪われる。
祭は9人の生贄を捧げて終わる。
最後の一人の選択を任されたダニは恋人を生贄に選ぶ。そして生贄たちが焼き殺されるのを見たダニは笑顔を浮かべる。
二度見したが、笑顔を浮かべている。信頼できない恋人は殺す。死ね。
家族を失い、恋人も頼りにできないダニの逆襲のファンタジーである。
明るく美しく、不快で凶悪な映像が次々と繰り出され、147分という長尺であることを感じなかった。
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