「孤独 憎悪 共感 解放」ミッドサマー takaさんの映画レビュー(感想・評価)
孤独 憎悪 共感 解放
「ヘレディタリー/継承」でオカルトともスプラッターとも言えぬ
独自のホラー感を醸し出したアリ・アスター監督の最新作。
前作も彼自身の体験を映像化したとし、
今作も家族を失った彼自身が当時付き合っていた
彼女に支えてもらえなかったという体験から
本作を生み出したと言う。
付き合って数年のダニーとクリスチャン。
二人は倦怠期であり、ダニーが家族を失ったことの
精神苦痛を支えるに至らずにクリスチャンは
別れを切り出せずにいた。
二人は知人のペレの誘いで彼の故郷の
スウェーデンの夏至祭に参加する事になるが…
ところどころ現れる絵画やキーワード。
北欧のバイキングが残した文化。生命のサイクル。
すべて本当に過去に存在していた文化であるという。
ダニーの視点で物語を鑑賞すると…
孤独になったダニーは精神的な支えが必要な状態で
彼はいるがいつか私を置いて立ち去りそうだ。
そんな中で出会った異文化の人間たちは
私の存在を認めクイーンとしてくれる。
そして彼に裏切られた感情を同様に理解して
共感し同じく嗚咽してくれる。
新たな共感者たちは彼という不安要素や
呪縛から解放してくれ、まさに生気を得ることが出来た。
前半はダニの心情を表現するように夜の闇の
情景が多いのに対し、夏至祭に訪れる辺りから
ずっと日中になり明るい風景が終わりまで続く。
ヘレディタリーは息子が悪魔の器として
捧げられ、家族たちが生贄になった映画だったが
本作は母国の知人たちが生贄になったことにより
ダニーが呪縛から解放され、異国の地で
女王として降り立った物語だったのだろう…。
必ずしも、今いる環境が自分に適してる訳ではない。
遠くの異文化にこそ自分を理解してくれる人達が
いるのかもしれないという、目前にある
当たり前の文化へのアンチテーゼにも感じた。