山中静夫氏の尊厳死のレビュー・感想・評価
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思った以上に人間ドラマ。
タイトルと派ポスターで、なんとなく内容が想像できるような?。
違いました。「(登場人物が)だれも泣かない映画にしたい」。
公開はもうほとんど終わってます。けどざっくりネタバレしない程度に。
これは誰に見てほしいかと考えました。
①医者を目指す学生さんに。
・どんなに医学が発達しても、人の死を止めることはできない。
医者の経験を積むことは、「助けられなかった患者」が増えていくということ。
その重圧に耐えられるかどうか。医師役・津田さんの「心が朽ちていく」様、さすが。
②同世代(50歳以上)に。
・もうそろそろ、人生のエンドマークが見れるかの境目世代。
やり残していること、しておきたいこと。きっとあるはず。
自分の命の期限を出された時に考えるのでは、遅すぎる。
患者役・梅雀さんの、最後にしておきたかったことへの執念。脱帽&あっぱれ!。
悲しいとかそういう言葉じゃ、ない。
もっと奥深い「人間の尊厳って、なんや?」と感じさせる作品でした。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「人間は、生きてきたようにしか、死ねないものですよ」。
死ぬ、って事を考えさせられる。
良作。だれにでも訪れる死、どうむかえるのがベストかを考えさせられた。どうしたら楽に満足した死が迎えられるのかなー。自分も家族も納得できる最後が良いけど。演者がみなベテランでうまいから真実味がある…。
お墓についても考えさせられた
ヨーロッパでは安楽死が合法な国もあり、その手記を読んでいたので、このテーマに興味があった。
確かに、医師の言うように静夫氏は安楽死でなく尊厳死だった。
この医師の、定義がわかった。
息子や後輩へ語る短い言葉に、医師の哲学が現れておりハッとする。
患者・医師とも、人情味ある演技で引き込まれる。医師の奥さんは従順すぎるかな。でも良いフォロー役なんだろう。
医師がどんなに大変か...勤務時間の長さや過労死が問題になっていることが思いやられる。
極楽さ行くだ!
大方さん演じる、いかにも死にそうもない老婆の「極楽さ行くだ!ウヒャヒャヒャ」という笑いと、主治医津田寛治と中村梅雀が「共犯」となって袋とじを破くオトコの友情、そしてケツをナイショで触らしてあげる看護師長、大島蓉子。
やっ、面白いというか、この作品わたしゃ好きですわ。ちょっと高畑淳子が顔面でか過ぎてスクリーンを圧迫してるなぁとは思うけど。
私も数年前に初期の癌になったことあるが、死なないレベルなのに、やはりオロオロするもんです。自分の死ってなかなか容れられない。尊厳ある死とはなにかわからないけど、死ぬんならふるさとで死にたいよね。
ムコ殿の静夫氏は山を択んだ。いい死に方だったのかな。
課題は個人に託される
主演の津田寛治の芝居が素晴らしい。テレビドラマのイメージが強い俳優だが、こういうナイーブな演技もできると知って感心した。自ら監督もするようなので、この人の監督主演作品を観てみたい。
本作品では生真面目な医師今井俊行を演じた。随分と痩せて見えたのは、もしかしたらこの役のためかもしれない。今井医師に似て、津田寛治も生真面目でストイックな役者だと思う。
オランダをはじめ安楽死が合法とされている国はいくつかあるが、殆どの国では安楽死は認められていない。無論日本でも非合法だ。これを扱った映画では周防正行監督の「終の信託」が有名である。
安楽死と尊厳死。ただ生かすだけの延命治療をせずに、患者の苦しみと痛みを取り除くところまでは同じだが、その先が違う。しかしその違いは実に微妙である。安楽死と尊厳死が違うことは誰もが解っているのだが、個々の医師によって解釈が異なる場合がある。また患者個別の事情によっても異なるだろう。
本作品のタイトルが単に「尊厳死」ではなく「山中静夫氏の尊厳死」であることに深い意味がある。山中静夫の死を山中静夫以外の人間が死ぬことは出来ない。他の誰の尊厳死でもない、山中静夫の尊厳死についての物語なのである。
日本国憲法第十三条には「すべて国民は、個人として尊重される」と書かれている。「尊重されなければならない」ではなく、敢えて「尊重される」と言い切ったところに、作成者たちの並々ならぬ覚悟が窺える。
個人の人格や生き方が尊重されるなら、同じように個人の死に方も尊重される筈だ。日本国憲法の精神からすれば当然のことだが、これを解っている医者は少ないと思う。人間の身体について医学で解っていることは1パーセントもないことは医学界の常識であり、どの医師も解っているはずなのだが、医療の現場にはまったく活かされない。つまり医者は他人の疾病に対して謙虚さを欠いているのだ。下手な料理人が食材をやっつけるように、医学で患者の身体をやっつけるのが医療だと思っているフシがある。
今井医師は、個人の死に方を尊重する数少ない医師のひとりである。個人の人格を重んじる姿勢は、息子とのシーンに如実に現れる。息子との禅問答のような会話は、父と息子の会話であると同時に、人と人の本音のやり取りである。今井医師の言葉はかつて自身も小説を書いた過去があることを示唆し、文学青年の息子はそれを敏感に感じ取ったに違いない。以降の息子の言葉には、父に対する尊敬の念が込められるようになった。
理解できない妻には、仕事で疲れ切っているから仕事を離れたときまで他人に気を遣うエネルギーが残っていないと話す。息子を他人と想定するのは、息子の人格を認めているからだ。それに、解らないからと言って妻を否定することはない。その妻役の田中美里も好演。夫を気遣う素直な妻の姿に癒やされる。
難しいテーマをひとりの人間の死に落とし込んで、現実の治療法や、患者の死が医師に及ぼす影響まで表現した意欲的な作品である。日本は世界史上、類を見ない超高齢化社会に突入している。今後どうなっていくのかは誰にも解らない。誕生よりも死亡が身近となった時代に、人はどのようにして死と向き合えばいいのか。課題は個人に託される。
ちなみに日本では高齢者の入院が90日を超えると、病院に支払われる金額が極端に減少する。石丸謙二郎演じる事務長の言葉の意味はそこにある。病院も商売なのだ。
どんどん他人事ではなくなってくる
とても考えさせられるお話でした。
命を終えるという場面で、本人の選択を尊重するって事を受け入れる親族の方々も、相当の覚悟が要るんだと感じました。
実際に自分、身内が同じ場面に遭遇する事は十分にあり得るので、とてもリアルに感じました。
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