劇場公開日 2020年1月24日

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「世界文学でした」キャッツ piさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0世界文学でした

2020年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

この有名なミュージカルをタイトルしか知らなかった私は、
猫ちゃんがいっぱい出てくる楽しいミュージカルなんだろうなって、ずっと長年思っていました。
映画館で予告を見た時にメモリーが流れていて、
あぁ、この曲はこのミュージカルの曲だったのか。と思って
もしかしたら楽しい系のミュージカルじゃないのかもしれないなぁ。
と思って、でも絶対イイでしょ。この曲聞きたいでしょ。
って思って見に行って、ビックリ。
こ、こんな、こんなミュージカルがあるなんて!!凄すぎない!?
えぇぇぇぇ!? です。

登場する猫たちそれぞれの生き様、
その一匹一匹が集団となった時に見せる顔。
そしてその集団に入れない猫。集団にいながらも馴染めない猫、自分だけがいい思いをしようと企む猫とそれに便乗する猫。様々な世界で活躍する、又はしていた猫。色んな猫がいます。
人間が演じていますが、その向こうに本物の猫が見えるようでした。
まさに「人間の目から見た猫の世界」です。
原作者の猫を慈しみ尊ぶ気持ちが十二分に表現されています。

ミュージカルパフォーマンスなのは間違いないのですが、
ほぼ描写なのでそのパフォーマンス云々よりも終始猫たちの心情や生き方に惹きつけられていました。
グリザベラにおいてはもう登場から切なくて、メモリーから終演までは涙が止まりませんでした。

文学的に素晴らしい映画は沢山見た事がありますが、
ここまで文学をありのまま映像にすることに成功した映画はほとんどないのではないかと思います。
これが欧米の凄さなんだなと、思い知らされた気がしました。
とはいえ私は原作を知りません。でもこの映画から十分に理解できたように思います。

本当に素晴らしかった。
とりあえず字幕版を一度見ただけなので、
今度は吹替を見てみようと思います。

あと最後に、レビューを見ていて気になった事を。
ストーリーが無いとか、薄いとか、歌に意味が無いとかいう内容のコメントを結構見かけました。
これだけしっかりした濃い物語があるのにもかかわらず、それを見過ごしてしまっているというのは日本人に多い傾向かと思います。
日本人はこういうものを見られる人があまり多くない。日本はアニメや漫画などのエンタメ作品が発達しすぎているのと同時に物語を読み取れない人も多くなっています。ストーリーや意味が無いのではなくて、それを読み取る力がないのだと自覚してほしいです。
あと、舞台と比較している方を結構見かけます。
私はこれが初めてだったので舞台がどうなっているのかはまったく分かりませんが、この繊細な表現は映画でしか出来ないものなのではないのかなと想像しています。
映像と舞台ではそもそも役者の演じ方も観客の視点(視線)も違いますし、受ける印象はかなり違うのかなぁとも。
だから舞台ではどんな風に作っているんだろうと舞台の方を見た事がない私は気になっていて、そのうちチケットをとって見に行くかもしれません。

pi