アルプススタンドのはしの方のレビュー・感想・評価
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タッチアップのことですかね?
甲子園野球を頑張る選手たちをダラりと観ながら、イマイチうまくいかない青春をボヤく高校生達と、熱狂的に応援する暑苦しい先生が織りなす会話劇。
全く観る予定は無かったのですが、このサイトでよく訪問させていただくユーザーさん達の評価が皆良かったので、とりあえず観に行ってみることに。
う~ん、ただ話しているだけだし、特段面白いとは思えないな~…と思っていた序盤だったが…
簡単に人物紹介
①安田:
演劇部。元からの性格なのか、ある出来事の所為なのか、少しひねくれたボヤき少女。
どこにでもいそうなごく普通の女子高生。
②田宮:
演劇部。安田の友達。性格は優しく、天然な一面も。
どこにでもいそうなごく普通の女子高生。
③藤野:
元野球部。野球部の友達に、エースで4番の天才、園田君と、万年ベンチの矢野君がいる。
どこにでもいそうなごく普通の男子高校生。
④宮下
所謂、陰キャな女の子。基本的に、成績はいつもトップ。エースで4番の園田君を密かに想う。
成績がトップなことを除けば、どこにでもいそうな女子高生。
⑤厚木先生
暑苦しいまでに大声を上げ選手を応援する教師。覇気のない安田達に元気な応援を促す。
近年減りつつあると思うが、どの学校にも一人はいそうな熱血教師。
⑥久住
・小坂菜緒と川口春奈と有村架純の可愛さを一挙に持ち合わせたような恵まれたビジュアル。
・ハイスペックな彼氏持ち。
・ブラスバンド部部長。
・成績超優秀。
・宮下のような陰キャ女子にも滅茶苦茶優しい。
・生徒から疎ましがられる厚木先生にも礼儀正しい。
・多分、料理もうまい(妄想)。
よって、現実世界では存在しえない女子高生。
…以上6人をメインに展開される物語。
上述の通り、序盤は淡々とボヤいているだけなので、評価の高さに疑問を抱いたが、トイレに向かう宮下と厚木先生が会話するシーンあたりから徐々に変化がおとずれ…
終わってみれば、珍しく涙が溢れていました(笑)
素晴らしい映画だったと思います!
登場人物はそれぞれ置かれいる状況は様々で、それの対処方法も皆それぞれ。
しかし共通するのは、「何となく諦めている」こと。
そんな陰気な会話劇が、ちょっとしたきっかけや、頑張る選手を通して熱くなっていく展開はとても良かったし、悩みもシリアスすぎない分、多くの人が共感できる作品なのではないでしょうか。
何となく諦めていること、誰にでもありますよね~。
邦画を観る割合は低めの自分に、この映画と偶然にも引き合わせてくれた皆さんに感謝です!
ホント、グッとくることはよくあっても、涙が溢れるのは年に何度も無いんです(笑)
このような情勢の今、色々と何となく諦めている人たちに是非鑑賞してほしい作品でした。
~余談~
小学生の頃、親に無理やり地元の少年野球クラブに通わされていました。
滅茶苦茶怖いコーチ・監督、そもそもそれほど野球が好きでなかった自分は当然上達せず…。
同級生が皆、試合のレギュラーになっていく中、6年生になっても万年ベンチの自分(まぁ当然なのですが。そりゃあタッチアップの意味すらまともに理解してないくらいですからw)。
しかし、いつもは怖いコーチたちが、卒業間近の試合で、お情けで自分を試合に出してくれました。
緊張の中打席に立った時、どうせ振っても当たらないし、コーチに怒られたくないし、相手ピッチャーもそこまでコントロールも良くないし…
フォアボールにでもなれば良いや!とバットを振りもせずにいた結果…見逃し三振。。
当然、コーチ・監督の怒号が飛び、速攻交代させられました。
小学生当時の自分からすれば、親に無理やりやらされていた野球でこんなにも怒られるなんて…と、このことはずっと「嫌な思い出」として残っていたのですが…
映画内で、厚木先生の「人生は空振り三振の連続」だったり、安田の「送りバントなんかで良いの?」といったセリフ、さらに、万年ベンチでも頑張るという矢野君の存在があって、、、
あの時、与えられたチャンスで勝負にすら出なかった自分が、20年以上経った今とても情けなく感じ、後悔とともに凄く涙が溢れてしまいました。そりゃあコーチたちも怒りますよね。
野球を好きか嫌いかで、矢野君と自分の立場は全然違うのですが、与えられた環境で頑張るっていうことが大事というメッセージも込められた映画だったと思うので。
今日までずっと嫌な思い出として残っていたことに対して、何十年の時を経て自分を見直す機会をもらえたなぁ~と。
いやぁ~、映画って改めて良いですね(笑)!
柄にもなく(⁉)恥ずかしながら長々と自分語りをしてしまった(笑)
これからもこういう作品に出逢いたいですね。
不思議な魅力
タイトルなし
映画秘宝で大特集されているのに未見だった城定監督の映画は、前評判どおりのウェルメイドな佳作だった。いい映画です。他の方のレビューにもある「はしっこだけどど真ん中」、その通りの映画でした。
いいところは他の方のレビューに倣えで、一点だけ。
主演の小野莉奈という子は全く知らず、その演技の自然さに目を見張った。舞台でも同じ役をしていたとのこと、舞台舞台した演技されるのではと危惧していたが、特に興味がない男子との会話など本当に自然で、単に舞台を映画に置き換えた所からはみ出せているのではと思う。舞台みてないですが。 特にファーストカットなど全く可愛くも見えなかったんだけど、この映画としてはむしろこの普通さが必須だった。(帰宅して検索、本物はこの映画よりずっと可愛いことを認知しました。)
以下、僭越ながらもっと良くなったのでは、というポイントを。
まず暑い暑いとセリフで何度も言わせながら全く暑そうじゃない天気。曇っていたし、後ろの木々も風に結構揺れていたし、暑くない日だったという設定でも映画として全く問題なかったのでは? 自分はこういうディテールで乗らなかったりするので気になってしまった。あと、やはり先生がキンキンがなるのとか矢野のバッティングの真似を繰り返すところは微妙な伏線になっているとはいえもう少し普通でも十分だったかと。吹奏楽部の三人のうち二人とか、ラストにいいところが出るなら中盤もう少し膨らませといてもとかね。
おそらくロケ地とかエキストラとか撮影日数とか、考えられないほど低予算で製作されているんだと思う。Netflixなどで金をかけた映像に目が慣れてしまうと、こういう良作にもあと少し資金がかけられればと(、逆に画面を貧相に見させないようにもしてもらいたいと)、思ってしまいました。
清らかに流るゝ台詞の流れ
城定監督の作品。
ザ・Vシネマの監督の作品、とは思わずに見てほしい。
そこには言葉の清流が流れている。
とても純粋無垢な中に、複雑すぎないストーリーライン。
十分に楽しめる。
もちろんVシネのように笑えるところも作るところもあるけど、言葉を選ばずに言うならば全くもってアオハル。
もちろん作品の全体を見ると、同じ映像の作り手としては構成に対しては思うところはある。
ただ、一つのシチュエーション、一つの画面構成の中で、その上で表と裏を作る。
野球のようだね。
さらに言うならば、野球を知らなくてもなんか泣いてしまうだろうし、野球を知っている人ならば、野球愛さえも感じると思う。
途中、言葉の流れに負けて、涙が溢れ出てしまった。
劇場で久々に見た映画がとても暖かくて嬉しい限りでした。
オススメ。
細かく評価つけるとすれば3.75です。
無いので、3.5です。ごめんなさい。
でもオススメです。
映画としては・・・
この作品は第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞となる文部科学大臣賞を受賞し、全国の高校で上演され続けている兵庫県立東播磨高校演劇部の名作戯曲を映画化したものである。
邦画、洋画を問わず舞台劇を映画化する作品は数あれど、ものによってはやはり舞台の方がよかったとか、いや、映画の方が良かったと言う人、様々いるであろう。かくいう私も、この作品の舞台は未見なので、なんとも判断しようがないのだが、映画としては失敗しているように思えてならない。
なんと言っても映画としての奥行きが全く無いからである。舞台劇を映画化したのだから、当然そうなるはずだと言われればそうかもしれないが、ならば敢えて映画化する理由はどこにあるのだろうか。また会話劇も広がりに全く欠き、同じワードやフレーズを幾度どなく口にするのも気になった。
恐らく、この作品は舞台だからこそ味わえない表現力や演出が冴えるのであって映像化する意味など、どこにもない様に感じた。
其々の自由。其々の不自由。
元は高校生が大会の為に書いた戯曲?なの?そんな感じですよね。きっと元の本と舞台はもっと青臭く痒い感じだったりするのでしょうか。それもそれで観てみたい。その位にズバッとストライク獲られた作品でした。
但しほんの少しだけ残念なのは脇の立役者である高校野球かな。アレが地方大会のベスト16辺りだと状況や展開によりグッと来た気がするのだけれど、甲子園の一回戦となると実際はアルプススタンドももう少し舞い上がってるだろうなぁ、なんて思うわけです。関東の高校ですしね。全校応援なんて降って涌いたイベントでしょう?
それでもある意味、彼等彼女等よりも鬱屈とした高校時代を過ごし、大人も大分過ぎて高校野球のファンになり、一年中地域の大会に足を運ぶ様になった自分には、あるあると共にその眩しい青春に一喜一憂してしまったわけでして、素晴らしい作品であることには間違いないです!
何よりもオチにほっこりして、観に来て良かったと思えました。真夏の明らかにこれから暑くなる午前中の劇場がオススメでしょうかね♪
なぜ長きに渡り硬式野球部ばかりを─
時を経ても、やっぱ硬式野球部を重んじてしまう風潮はあるのか─、自分も休みの日や休み時間に半ば強制的に応援にかり出された記憶が─、でもあんな端っこがあったら結構楽しめたかも─、面倒くせーと思いつつも最後は熱を帯びていた記憶が蘇り─、良い慣例とも思えなかった学校での活動が長きに渡っても続いている所以を垣間見た気がする。
出だし、かったりーとか、うんうん分かるよその気持ち、うぜー、そうそういるいるあんなやつ、等々かなりハマった気持ちで見ていたけれど、徐々に熱くなっていって、感情の高ぶりにも無条件に共感して、やっぱ青春っていいのかも、なんて単純に素直に思いに耽ることができました。
さすが高校演劇の頂点を極めた作品と思うと同時に、その劇作品を越えた映画だけであろうプラス劇も素晴らしいものがありました。
超ナチュラルな演技にも結構感動してしまったし、かなりいい作品。
シンプルなのに熱い、無駄がないストーリー
国立劇場と青春舞台で元の高校演劇を観たとき、彼らには映っていないはずの球場がまさに客席にあるように体感され、存在するはずのないボールを追う目線の一体感に心を奪われました。映画化に嬉しさを感じつつ、また多少の不安も感じつつ鑑賞しました。
原作には出てこなかった吹奏楽部の久住さんも登場し、吹奏楽も全て想像の対象だった部分は変わっていましたが、逆に演奏シーンが終盤の熱さを突き上げてくれました。久住さんの感情をLINEのやり取りと少しの友達関係から引き出すには少し共感するのに時間が足りない部分もありましたが(自分で真ん中と言ってしまうことも多少強引かな…)ポカリスエットを差し出すシーンは飲料水のCMにバッチリな美しい描写でした笑 あと田宮さんの「割りと好き」発言は失恋の傷口に塗るのに優しい傷薬になるなぁと…勉強になりました。それと藤野くんとあすはちゃんが語り合うシーンが二人とも可愛くて凄く好きです。
ラストシーンはなんなんですかね、絶対に感動しちゃうマジックみたいな。最後の矢野君には感情移入してみてると涙無しには見られないです。
ただ視覚的なドラマ性、恋愛のキュンを求めてる人、リアルな甲子園球場と真夏の吹奏楽を体感したい人にはおすすめできないです。会話の輪になかなか入れない人、凄い人を見ると素直に誉められない人、がんばってる人がダサく見える人、スポーツよくわかんない人。そんな人に共感できるシーンが見つかるはず。
原作の籔さんの作品の舞台(映画でも)、監督の城定さんの青春映画、もっと見てみたいなぁと思いました。この夏に見るのにベストな傑作でした!
観られて良かった
演劇好きなはたまらない
なるほど、2017年の高校生が原作の演劇なのですね。とにかく、ストーリーが秀逸。演劇らしく、場面の切り替えかが少なめ。野球選手は1人も出てこない(笑)。
高校野球の主役はもちろん選手たち。
選手たちでも、投手、外野手、ベンチと主役度が違う。
それらを応援するスタンド、応援団、吹奏楽部、補欠の選手たち、、、
さらに、脇、スタンドの端の方にいる高校生を主役にします。
ただ、多くの人はこのポジションだと思う。そういう意味で共感します。
まさに演劇、会話劇で、テンポ良い掛け合いがあり、クスクス笑ってしまうやり取りがあり、さらに、涙まで。
無理にカット割りせず、映画っぽくない手法も潔い。素晴らしい。
下手したら一日で撮影終わる?ってくらいさっぱり塩味。その分、野球シーンや生徒たちの生活や想いを想像出来る余白が沢山ある。
ここにでてき役者さん達はも応援したくなる。
高校演劇の戯曲の映画化を多作な監督が映画と演劇の中間で表現
夏の甲子園一回戦を応援する高校生男女の人間模様。
かなり限定された空間と基本アルプススタンドのみに拘るカメラワークが、舞台演劇感を強くしているが、冒頭や球場通路でのスタンド以外の場面や人物アップありと、映画としての利点を活かして演出されていると感じる。
舞台演劇版との比較は、未見なので出来ないが、鑑賞後に読んだ監督のインタビューによると、ワンシチュエーションで登場人物も4人のみの高校演劇版から人物を増やしつつネタギャグ要素は減らしたらしい。
それでも本作には、充分にユーモアやギャグがあるので、元の舞台は、笑いが多めと思う。
カットバックや試合や球場外観等の描写を省き、主に人物のグループショットの撮影メインで演劇に準拠しているのも潔いと思う。
それぞれの人物に有るわだかまりや躓きを試合の応援を共にする事で、理解して変化するシンプルなドラマも良く出来ている。
個人的には、もう少し映画ならではの飛翔を入れても、演劇版へのリスペクトあれば、変えてもいいと思ってしまうが。
ネタバレあり
四人がラストに再会して近況報告をする後日談は、マンガやアニメによくある手法で、登場人物に好感を持った観客へのサービス的な場面だけど分かり易いその後を提示してしまうので、その後は、観客に想い巡らせる暗示でも良かったのでは?と思う。
後半で演劇部女子二人に風の影響で、髪の毛が顔に被さる場面が度々ありそれを治さずに演技しているところは結構なノイズ感じる。
熱血教師のキャラは、ノリノリ過ぎてコントにも見えてので、もう少し抑えても良いのではと。
役者では、平井亜門が、挫折し優等生に恋心持つ元野球部を、素直な感じて演じて好演。バッティングフォームは今ひとつだけど。
演劇部女子二人は、一般公演された本舞台版と同じであるらしく、とりあえずの代表作を巧みに演じてこれからが楽しみ。
元の演劇版はもとより城定秀夫監督作品も初見ですが、タイトな手腕も含めて何となくの作家性も垣間見れる良作。
期待の5倍以上!涙が自然と湧き流れます。
見返りのないことに熱狂できるのが若さの特権。
見返りのないことに熱中できるのが若さの特権。保護者の庇護の下でお金のことをあまり考えずに行動できる限られた時間。日々の生活に追われる今となっては懐かしいですね。
甲子園球場での高校野球全国大会なのに試合の場面が全くないのは、斬新。
もっとも、甲子園球場とは思えなかったスタジアムは何とかならなかったのかな。
演劇ベースのお話だそうですが、演劇では許されても映画ではいかがなものか。
75分という短い映画なので、「しょうがない」の言葉の裏にある登場人物それぞれの背景をもう少し詳しく入れる余裕はあったのでは(特に孤独な才女)。
主役4人はいずれも知らないけど綺麗な方々ですね。
後日談は悪くはないけど、中身がちょっと安っぽいと感じた。
ほんとに端の方を切り抜いた作品
高評価なので見てみた。
やっぱ学生の時代ってそのときにしかないいいものがあるよねぇ。。俺も中学時代の野球部の最後の試合を思い出しつつ、高校時代の強かったサッカー部(紫ユニホームだからなおさら)の応援を思い出しながらじーんときた。
ストーリーはシンプルでほんとにアルプススタンドの端の方の様子を1時間半切り取っただけなのかもしれない。だけど、他人と比べて自分に劣等感を感じたり、一生懸命になることに臆病になったり、そんな感情を応援しながら吹き飛ばしていく様はとても素敵でした。元気の出る映画。ちゃんと試合に負けるのがいいなと思いました。勝ったら冷めてた、笑。そしてプロになるのが矢野くんってのもね、いいね。
周りから見るほど人がどう感じてるかなんかわからなくて、順風満帆に見えてる吹部の部長も、野球しか見てない彼氏に苦しんでいたり、なにが幸せかなんか結局自分にしかわからない。
それでもやっぱり頑張るんだよ。頑張った先にしか幸せはない。そんな前向きなメッセージをもらった感じがします。
吹部の部長はかわいかった。
園田くんの顔は見たかった。
先生の暑苦しさはまぁまぁ素敵だった。けど、なんであの人が長袖なのか最後まで謎だった、笑。
わかりやすく戯曲
ロイス・レーンやジミー・オルセンを見つめる高校野球版『ブレックファスト・クラブ』
念願の甲子園夏の大会に出場した埼玉県立東入間高校野球部。1回戦の対戦相手は強豪平成実業高校。生徒総出で応援する中、演劇部のやすはと田宮はアルプススタンドの隅っこでつまらなそうに試合を眺めていた。そこにやってきたのは元野球部の藤野、そして帰宅部の宮下。そんな4人のところでもっと腹から声を出して応援しろとハッパをかけに来た厚木先生。やたらにハイテンションな先生にローテンションのツッコミを入れる4人は試合が進むにつれて自身が抱える悩みや葛藤に向き合わざるを得なくなってくる。
これはヤバイレベルの傑作青春映画。
青春映画の金字塔『桐島、部活やめるってよ』と同じく、本来であればドラマの中心人物は姿を見せず、その周りにいる何者でもない普通の高校生達を優しく見つめるドラマ。言うなればゾッド提督と戦うスーパーマンを見つめているロイス・レーンやジミー・オルセンの物語。劇中で何度も溢される“しょうがない”という呟きの向こう側にあるルサンチマンを突き破るように響く金属バットの音。4番ピッチャー園田のテーマとして青空の下で高らかと奏でられる『TRAIN-TRAIN』。試合が進むにつれて登場人物の心情が少しずつ詳らかになり、劇中に響く様々な声や音がそこに集う人達の魂と共鳴するクライマックスで思わず泣き崩れました。
個人的に一番印象的なのは、ずっと学年トップの成績だった宮下と彼女を破った吹奏楽部部長の久住の確執。絶望的な現実を突きつけられる宮下を演じる中村守里の、眼鏡の奥に光る澄んだ瞳と透き通るような白い肌に青春の理想と現実を見ました。
とにかく邦画史に残るべき傑作ですし、今年観賞した作品で文句なしのベストワンです。
【”しょうがないって簡単に言うな!” ワンシチュエーション青春映画の良作。】
ークスリと笑えて、少し心に沁みる・・。小品だが、素敵な映画である。-
以下、一部内容に触れています・・
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・ライトスタンドの”はしっこ”に(どうしても、甲子園には見えないのがご愛敬。途中まで地区予選の三回戦位を描いているのかと思っていた・・。)にひっそりと座る”ある理由”で全国大会に行けなかった演劇部の女子、安田さんと田宮さんの、野球知識ほぼゼロの会話が、まずオモシロイ。
”え、え、何でアウトになったのに、あの人が次のベースに行けるの?私たちだけが捕ったように見えたけど、落としてたのかな・・。”"迷宮入りだね・・”
(あのね、それは、タッチアップっていうんだよ・・。
まるで高校野球地区予選にたまにいる、野球をよく知らない女性が、連れの男性に問いかけるシーンのようである・・。あー、オカシイ。)
・野球部元在籍者だが、絶対的エースがいるために”しょうがなく”野球部を辞めた藤野君の万年補欠の矢野君のバッティングフォームを揶揄するシーン。タオルをバット代わりにして、安田さんと田宮さんに違いを体現して説明するが、女子二人理解出来ずに藤野君、汗だく・・。
(藤野君、私も分からないよ‥(苦笑))
・矢鱈に”声を出せ”と煩い熱きじゃなかった厚木先生の存在と、お茶飲料の美味しさを彼がほめた時、”茶道部の顧問がそれを言っては・・”。
■少し、沁みるシーン
・成績優秀だが、友人がいない宮下さんは小さな声しか出ないが、密かに思うエース応援のために徐々に大きな声で応援していく姿や、
・ブラバン部部長で、成績優秀で、エースともお付き合いしているといわれている、久住さんのセリフ”真ん中は真ん中でイロイロ辛いんだよ!”
<今夏、多くの高校三年生が最後の舞台で三年間の練習の成果を発揮することが出来ない無念さは察するに余りある。
けれども、これを”しょうがない”で済ませずに、皆さんの何らかの糧となれば、と昔、高校三年間部活にのめりこんだ男は思うのであります・・。
あの、はしっこに座っていた4人と矢野君のように・・。>
■蛇足
高校野球を応援する人々を描きながら、一切、野球のシーンが出てこない・・。(効果音だけ) 却って清々しいぞ!
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