アルプススタンドのはしの方のレビュー・感想・評価
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映画館で観た“熱い試合”
最も記憶に残っている甲子園の試合は2009年、日本文理(新潟)-中京大中京(愛知)による決勝戦だ。9回でスコアは4-10。6点を追う日本文理だったが、あっさりと2アウトを取られる展開に誰もが思った。勝負はついたと…。しかし、日本文理はそこから驚異の粘りを見せ、1点差にまで詰め寄る猛攻を見せたのだ。諦めていた観客たちも点差が縮まるにつれて、次第に逆転を信じ、その声援を高めていった。
この映画に関して、もはや言うことは何もない。その名が示す通りアルプススタンドの端の方にいる人々の物語だ。野球は辞めた、ルールもよくわからない、ただ学校の義務として試合を見に来ただけ、そんな生徒たちにスポットを当てる。シュールでユーモラスな会話が物語を作り、グラウンドの熱量とは全く異なる他人事な世界がスクリーンに映し出される。度々口にされる「しょうがない」という言葉は少ししつこくも感じるが、その気持ちは我々観客も心のどこかに感じている言葉を代弁しているに他ならない。
しかし、ただスタンドに座っていようとも、グラウンド上では試合は進む。試合シーンを見せずにこの静と動との対比を描いた脚本の巧さに舌を巻く。自分たちは座ったままで良いのか?動かなくては何も始まらないのでは?2009年のあの決勝戦とも重なって見えてくる。本来スタンドで声援を送る側の人間が、野球のプレーによって逆に激励されてしまう高校野球あるあるをここまで面白く仕上げるとは恐れ入った。アルプススタンドの端から飛ばした声援を吹奏楽部が受け取り、演奏につながる連携プレーの心地良さは本作の白眉。
コロナウィルスのせいで今年は(通常通りの)夏の甲子園も中止となってしまったが、こんな“熱い試合”を映画館で観れたことはこの夏の良い想い出だ。
主人公
今年のこの時期だからこその思い
高校吹奏楽部は夏にコンクールと、高校野球県予選が重なります 「なんで応援演奏に行かなくちゃならないの」、現役吹奏楽部員の頃、特別扱いの野球部の応援に嫌々行きました 熱いスタンドや突然の夕立に楽器の傷みを心配し、迫ってくるコンクールを前に「早く負けたらいいのに」と思ったこともありました スタンドの演奏は、攻撃時は吹いてるばかりで試合もみれず、チャンスが続けばまわりの歓声を他所に、15分くらい吹きっぱなしでした そんな無関心生徒であっても、「狙いうち」や「コンバットマーチ」が聴こえてくると、胸躍るものがあります
苦戦しているこの時期の興行で、この作品のレビューが多くて、高評価なのはあの頃「ふた」をしていたものが、呼び起こされるようなそんな皆さんの思いがあるのでしょう
卒業して40年、数年前に「21世紀枠」で母校が甲子園に行ったとき、懸命に応援演奏をする後輩たちがうらやましくなりました あの頃の鬱々とした思いが自分を作っていることに懐かしさもありました 城定監督という興味もありました エンドロールに佐倉萌さんの名前がありましたが、監督のキャスティングでしょうね 気づかなくて残念でした
それにしても「狙いうち」は47年前の歌なのに、これからも高校野球を語るには外せない歌ですね
阿久さんの功績です (8月27日 イオンシネマ和歌山 にて鑑賞)
端の方の青春群像劇
兵庫県東播磨高校演劇部の名作戯曲の映画化。
作り方や、台詞の言い回し、間や調子も演劇臭が強くて、場面転換も殆ど無いので、演劇を観ている感覚が最後まで続いた。
それぞれのキャラクターとその背景も分かりやすく、誰しもが特別な自分になりたいと夢見る年頃のジレンマも、端っこが好きな人達らしい緩さと甘酸っぱさや笑いもあって、そして高校野球の素晴らしさを端っこが好きな人達を通して感じさせてくれるというのが、熱い。
テンポも良く、楽しめました。
映画化にあたり色々と研ぎ澄まされたのだろうけど、高校生でこんな戯曲が描けるなんて凄いし、高校生だからこそ素晴らしく、そして大人達が映画化するなんて、ほんと、素晴らしい!
若者よ、ありがとう😊
泣けて大変だったです。
全く知らない世界だが訳もわからずグッときた
夏の高校野球の予選1回戦。人がまばらな一塁側スタンドのはしの方。試合の中盤から母校の応援にきた野球を知らない演劇部の女子二名と元野球部の男子一名が交すまったりとした会話が気持ちいい。
友達がいない学年一番の女子やら、頑張り過ぎている吹奏楽部の部長の女子やらが交錯し、彼彼女たちの青春がやはりまったりと、しかし確実に熱を帯びていった。
母校の応援に行くという選択肢を持たなかった自分のようなアウトサイダーにとってはスタンドのはしの方さえ遥か遠い場所だが、これが青春そのものではないかとイメージした。訳もわからずグッときた。
そう、知らない世界を見せて感動させるのが映画のマジック。この作品にはそのマジックがあった。今年の日本映画のベストの一本だろう。
この機会に数ある城定秀夫作品にも注目が集まればと切に願うが、ピンク映画のフォーマットが多いので敷居が高いのかもなぁ。
報われない努力が、人を変える
「しょうがない」と諦めれば負け犬。
折れずに諦めなければ、違う世界が待っている。かも。的な。
やべー、見逃すとこだったぁ。SPOTTEDで、女子高生強調のポスターとか見たら「スルー確定」って言いたくなるじゃないですか。でもよくよく見ると、城定秀夫監督の名前が。ここで前日「糸」(瀬々敬久/斎藤幸一)を見てたもんで、何かこっちも見とかなきゃいけない気がしてしまい。
75分の短い尺の会話劇。アルプススタンドの端の方が落ち着く子達。スポットライトを浴びない場所で「しょうがない」と諦める生き方に、どんな価値があるんだろう。どんな場所でも良いし、どんな事でも良いから。しょうがない事はない。
応援しても何も変わらない。だから声を出さない。合理的な考えです。
何も変わらないかも知れないけど、頑張って欲しいから声を出す。想いをトランペットに込めて音を出す。情緒・感情・自己満足の世界です。
が、結局、声を出して人を応援した彼女たちと彼は、自分自身も頑張れる人になった。って言う、ポジティブ・ワールド。
オリンピックイヤーに、あえてこんな映画をぶつけてくる人もいれば、昨日見た「破壊の日」みたいな、「破壊欲求を煽るだけの'70年代革命プロパガンダ的フィルム」を作るヒトもいたりして。
ちょっとあざとくて、若者の心には刺さるんかねぇ、って心配になってしまいました。
良かった。結構。
みんなみんな、青春だ。
正直なことを言うと、DVD出てから見ようと思ってました。
でも。皆様のレビューの高さが後押しになり、映画館で見ようと決めました。
私は、高校時代、野球弱小校でしたが、1年次、2年次と野球応援で楽器を吹いていました。
3年次は楽器を置いて、アルプススタンドで声を出していました。
だから、今回の映画は、より近くに、より生々しく、感じました。
もちろん、普通の方でも楽しめるのでは?と思います。
野球のシーンは1秒もありません。
ずっとアルプススタンドのシーンのみです。
アルプススタンドでの学生たちと熱血先生のやりとりのみでした。
普通の映画にない目線だったから、より楽しめたと思います。
さて、内容ですが。
登場人物の学生は、それぞれに葛藤を抱えていました。
頑張ったのに敵わなかった、
頑張ったのにそれを体現できなかった、
頑張ったのに仲間の足を引っ張ってしまった、
頑張りたいけどどこか自分に負い目を感じている、
苦労してるのに周りから苦労してるように見てもらえない
どれもつらいことだったと思いました。
でも、野球の応援を通して、自分の葛藤を乗り越えていく。
とても素晴らしい映画でした。
33歳が映画館で泣いてました。
ノーマークだったのに、観た後に達成感。
こんな映画にまた出逢いたいものです。
頑張るとしょうがないの折り合い
人生って、頑張る事としょうがないと諦める事、これを折り合わせる場面の繰返しの様な気がします。
そしてこの作品は、しょうがないと諦める事を、必ずしも否定してない様に感じるんです。
しょうがないと諦める事に行き着くまでに、自分の中での気持ちとの闘いが有る。
そしてその葛藤が一番大きいのが、高校生の頃じゃないかと思うんです。
だからこそ、それを乗り越え頑張り続ける者たちを応援する気持ちが湧いてくるんじゃないかな。
その辺の若者が抱える葛藤を、押し付けがましくなく見せてくれる良作だと思います。
実は私、この原作をテレビで観た事が有るんです。
チャンネル回してたら偶々やっていて見入っちゃいました。
なので、途中からなんで偉そうに観たと言えないんですが。
軽妙な会話劇が魅力の一つだと思うのですが、映画にも巧く取り入れられていましたね。
ただ、映画オリジナル(?)のエピローグ的な部分、悪くはないと思うのですが、ヤノ君がプロになっちゃうと映画全体が何か軽くなってしまう気がするんですよね。私の好みの問題かもしれませんが。
でも、良作だと思います。
桐島で描かれなかった吹部ダークサイド
意外と触れられないスクールカーストの中の吹奏楽部描写が良かった。「ああいうのって意味わかんないよね」と吐き捨てながら、応援終わったら満足して勝手に号泣したり。
君らちょっと汗かかなすぎじゃない?
真ん中も大変なんだよ!って知らんがな。
ダークサイドに落ちそうになるたびに、黒髪ちゃんがいいボケかましてくれて救われました。「黒豆茶以外240円するんだよ!」(爆笑)
最優秀助演男優賞・ヤノくん(出てきてない)
撮影許可してほしかったなぁ甲子園球場さん!
まず台詞が生きているのは、高校演劇部顧問の先生の戯曲が原作だからだろうなぁ。生徒とまっすぐ向き合ってきた先生だからこそのリアルな高校生の言葉や思考にニンマリ。それは大人から(上から)みた高校生の姿では全くなかった。
そして部員4人の演劇部のために書かれた戯曲らしくアルプススタンドの4人の会話劇でテンポ良く進んでいくのが舞台演出をも想像できてその戯曲のアイデアに脱帽。
舞台の映画化だからと言って急に演出が派手になることもなくグランドが一切映らないのも有名俳優を使っていないのもこの作品にはかえって良かったと思う。変にキラキラさせなかったことによって等身大の高校生が、私が、確実にあそこ(アルプススタンド)にいた!
「しようがない」って言葉で自分を納得させようとしても結局は納得などできない。だったら不器用でもいい、人に笑われてもいい、自分が納得できるまでやってみようよ、と背中を押してもらった気がした。歳とともに分厚くなっていた心の錆が最後には大量の涙となって流されていった。なんとも清々しい映画だ。
ただ、甲子園球場での撮影が許可されなかったのがとても残念。それも含めてドラマになってるけどね。
帰宅部には帰宅部なりの挫折があった元高校生より。
久々の小野莉奈
しょうがない人生はひとつもない
野球の応援を通して描かれる、高校生たちの人間ドラマです。共感の度合いが徐々に増していくのが分かりました。
片隅。すみっこ。はしっこ。
そういうキーワードを見かけると、つい観たくなります。
この作品は「はしの方」。 うん。見なきゃ
そんな訳で鑑賞です。
最初から最後まで、舞台は野球場のスタンド。
グラウンドでの試合風景が全く出てこない。 へぇ
そんな、相当変わった印象の
高校野球応援青春ドラマでした。
大きな展開がある訳ではないのですが
スタジアムの応援席(の、はしっこ)に座って
甲子園大会(!)の1回戦に出場した母校の応援をする
高校生男女数名が主人公。
(そうそう 茶道部の熱血教師も忘れてはダメですね)
試合開始前、応援にあまり熱心でなかった彼らが
それぞれの抱える悩み・置かれた状況や心情を吐露し始め
試合の展開に合わせ、気持ちが変化していく。
中盤から終盤にかけての、その変化の見せ方が
すごい 「むず痒さ」 を伴って伝わってきました。
うん。
こういうの悪くないです。 いいな (…と、遠い目)
観て良かった。
そうそう
そしてヤノ君
名前でしか登場しない野球部員。
ヘタだけど、練習が大好き。
そんな彼の努力が最後には報われていて。
…
こういう終わり方、これもいいです。
◇
甲子園
って
球児のあこがれ。 聖地 …のハズ
なのに劇中のスタジアム
ココ ドコ? というか
ナンカチガウ感 というか
甲子園球場って、あんな感じなのでしょうか?
(行ったこと無いので、チガウと断言しきれません しくしく)
---- 2020.08.17 追記 ----
またまたヤノ君
作品に全く登場しないのに、
終わってみればすごい存在感。
こういうキャラって、なかなか無いよねぇ
と、思っていたのですが
寝る前にふとアタマに浮かんだのが 「ウチのかみさん」
セリフ中に出てくるものの、決して姿が出てこない
刑事コロンボの奥さん。
この方も存在感凄かったですよねぇ
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
「しょうがない」をブッ飛ばせ!
題名通り、物語はアルプススタンド(甲子園ロケ不可につき、本物のアルプスではないが…)の端の方での、4名での会話劇がほとんどです。動きがほぼありません(笑)。
それもそのハズ、部員4名のみの演劇部の為に、顧問が書いた戯曲が原作との事。
その事を頭に入れて見に行くと、チープな作風も(偽物アルプス含めw)むしろ愛おしく、思い入れタップリに映画を堪能できると思います。
誰かを本気で応援できる時って、自分の事にも本気になれたりしません?
強豪校相手の甲子園1回戦。「どうせ負けるわ~」から「かっ飛ばせー!」に至るまでの4名の心象風景の中には、自分の置かれた「しょうがない」状況を「ブッ飛ばす!」までの変化があります。
そう考えると、冒頭~中盤にかけてのユルい流れは、当初のユルい気分を表す為の必然性だったのですね。75分しか尺がナイのに、こんなにユルくて大丈夫?話がちゃんとまとまる?って心配しておりました(汗)。しかし最後はきっちりオチがあり、涙とともに爽やかな気分で映画を見終える事ができます。
きっと、かの「カメ止め」をはるかに下回る(であろう)低予算の本作。感動との費用対効果では、間違いなく世界トップレベルの映画です。
「しょうがない」の先にある青春
今年ほど「しょうがない」と言って涙を飲んだ人々が数多くいた夏はないと思う。
兵庫県立東播磨高校演劇部の名作戯曲を映画化した本作は、夏の甲子園の1回戦に出場している母校を応援しているアルプススタンドを舞台に、様々な「しょうがない」を抱えた若者達の群像劇を繰り広げていく。
普通、高校野球を題材にした作品だとプレイする選手達を中心に描いていくが、本作は選手はおろか試合が展開されているフィールドを全く映さず、あくまでアルプススタンドで応援している“部外者達”が中心になっている。
この“部外者達”は様々な「しょうがない」事情で、諦念を抱えてアルプススタンドに仕方なくいる。
映画は登場人物一人一人の「しょうがない」事情を、ストーリーの展開と共に徐々に紐解いていく。
人間どんなに汗水垂らして努力しても、その努力が必ずしも報われるとは限らない。
ましてや今年のような異常事態下にあっては、「どうしようもない」としか言い様がないと思う。
それでも本作は、「どうしようもない」「しょうがない」の先にある“何か”を希望と共に見出だそうとしている。
初めは白けて観戦していた登場人物達が、終盤の或る切っ掛けから変わっていく様は、何度観ても胸が熱くなる。
“後日談”のようなラストの展開にある優しさや温もりが何時までも心に残ります。
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