劇場公開日 2020年7月24日

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「しょうがなくない」アルプススタンドのはしの方 aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5しょうがなくない

2020年12月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

幸せ

野球場なのに野球シーンが一切ない、ワンシチュエーションドラマ。舞台は高校野球地方大会の開催されている野球場のスタンド(の端の方)。それぞれ少しづつ挫折を味わっている高校生の、他愛無い会話を通してストーリーが展開される。

灼熱の夏のスタンドの無理矢理、野球部の応援に駆り出された演劇部の女子高校生安田と田宮の二人。応援にも身が入らず、少しでも涼を求めて上の端の方に移る。そこへ同じくやる気の出ない男子学生藤野が加わり、少し離れたところで、ひとり一番上の通路でフィールドを見つめる宮下が絡んで、会話劇が展開される。

ひとりひとりの挫折やあきらめを反映しているように、試合の展開は劣勢。相手は強豪校。次第にそれぞれの事情が明らかになってゆき、それとともに試合も終盤へ進んでゆく。この試合が、まったく画面に出てこないのだが、想像の中で臨場感が強くなる。うだるようなスタンド、熱気を帯びる応援団、一球に注がれる視線。限られた画角だからこそ、画面の外の世界にイメージが広がる。そこに畳みかける終盤の熱戦。未来への諦めや人間関係の悩みなどが、灼熱のスタンドで広がる応援の盛り上がりを通して融解していく。
スポーツ観戦、音楽やダンスなどのライブパフォーマンスに熱狂する群衆に身を置いてみて感じる、あの感覚。諦めないことを共有できる、喜び。感染症対策で分断された今年、改めてその貴重さが感じられらるからこそ、この作品がより光るのだと思う。

本作2020年の最後の鑑賞作品。大晦日に家でゆっくりと、劇場で見逃した本作を鑑賞。今年最後に良いプレゼントをもらいました。

今年は劇場鑑賞が例年より、かなり少なくなってしまいましたが、早く気軽に映画でも…という日常が返ってきてほしいものです。

いやー、映画って本当にいいもんですね!

AMaclean