劇場公開日 2020年7月24日

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「後から感情が吹き上がってくる」アルプススタンドのはしの方 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5後から感情が吹き上がってくる

2020年8月6日
Androidアプリから投稿

上映時間は75分。
軽いコメディタッチで爽やかなラストを迎えるこの作品。

観た直後はそれほどでも無かったのに、レビューを書こうといろいろ考えている内に気付けばハートを掴まれてしまっていた感じ。

「いわゆる『青春』なんてモノは、そもそも大人が振り返った過去の幻想の中にしか存在しないんだ。
素敵な異性との恋愛なんてとんでもない。
当時は不安と諦めと妬み、後悔と妥協と同調圧力の狭間で体裁を取り繕うのに必死だったからこそ、後になってそれが輝いて見えるし憧れの対象にもなる。
そしていつだって中高生は、そんな大人が勝手に作って勝手に示した幻想の『青春』像に支配され、そのギャップにまた苦しめられるんだ。」

そう思っている私の様な人種(でも多くの人がそうなんじゃないのかな)にとっては、この「アルプススタンドのはしの方」こそが私のメインステージだったことを突きつけられる。
でも、それは決して恥部を晒される様な嫌な感じではなく、「それでいいんだ」と思わせてくれる。

それぞれ全く違う立場や視点で、なんとなく眺めていた野球部の試合。
しかし最後には我々劇場内の観客も巻き込んで全員が「彼」に想いを託すことになろうとは。
キャラクター全員が愛おしく思えて試合終了。…からのあのラスト。

TVをつければ不安を煽られるこのご時世。
たった75分で清々しい気持ちになれる。

上映館数が少ないのは残念。
ぜひ夏に見て欲しい傑作です。

キレンジャー