「高校演劇の戯曲の映画化を多作な監督が映画と演劇の中間で表現」アルプススタンドのはしの方 ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
高校演劇の戯曲の映画化を多作な監督が映画と演劇の中間で表現
夏の甲子園一回戦を応援する高校生男女の人間模様。
かなり限定された空間と基本アルプススタンドのみに拘るカメラワークが、舞台演劇感を強くしているが、冒頭や球場通路でのスタンド以外の場面や人物アップありと、映画としての利点を活かして演出されていると感じる。
舞台演劇版との比較は、未見なので出来ないが、鑑賞後に読んだ監督のインタビューによると、ワンシチュエーションで登場人物も4人のみの高校演劇版から人物を増やしつつネタギャグ要素は減らしたらしい。
それでも本作には、充分にユーモアやギャグがあるので、元の舞台は、笑いが多めと思う。
カットバックや試合や球場外観等の描写を省き、主に人物のグループショットの撮影メインで演劇に準拠しているのも潔いと思う。
それぞれの人物に有るわだかまりや躓きを試合の応援を共にする事で、理解して変化するシンプルなドラマも良く出来ている。
個人的には、もう少し映画ならではの飛翔を入れても、演劇版へのリスペクトあれば、変えてもいいと思ってしまうが。
ネタバレあり
四人がラストに再会して近況報告をする後日談は、マンガやアニメによくある手法で、登場人物に好感を持った観客へのサービス的な場面だけど分かり易いその後を提示してしまうので、その後は、観客に想い巡らせる暗示でも良かったのでは?と思う。
後半で演劇部女子二人に風の影響で、髪の毛が顔に被さる場面が度々ありそれを治さずに演技しているところは結構なノイズ感じる。
熱血教師のキャラは、ノリノリ過ぎてコントにも見えてので、もう少し抑えても良いのではと。
役者では、平井亜門が、挫折し優等生に恋心持つ元野球部を、素直な感じて演じて好演。バッティングフォームは今ひとつだけど。
演劇部女子二人は、一般公演された本舞台版と同じであるらしく、とりあえずの代表作を巧みに演じてこれからが楽しみ。
元の演劇版はもとより城定秀夫監督作品も初見ですが、タイトな手腕も含めて何となくの作家性も垣間見れる良作。