「人を殺すことしかできない」ザ・ゴーレム KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
人を殺すことしかできない
その子供は、救世主か悪魔か。
ぽょぽょほっぺたをすべすべもちもちしたいな。
隔離されたユダヤ人達の小さな集落が舞台。
7年前の悲劇とトラウマ、どこか義務的な夫婦仲、古い考え方の義父と、積もった苦の中でも「学び」を心の支えにして生きるハンナに心を持っていかれた。
女性が学ぶことに対して夫が協力的だったことが嬉しかった。
離れて暮らすことで街の疫病からも逃れられていた彼らに突如現れる敵意満々の来訪者。
ハンナだけが信じ持っていた、祈るな!受け入れるな!戦え!の精神はなんとも心強い。
さて、それは正しかったのか、間違いだったのか。
その子の覚醒と共にハンナの目に力が入り、女の部分が覚醒していく。
自分の子供を投影して愛しむハンナの態度にゾクッとして、夫と仲睦まじい様子に嫉妬したようなゴーレムのいたずらにドキドキした。
創った者と創られた者。母と子。二人にしか感じられない強い繋がりを考えると胸キュンが止まらない。
ゴーレムが言葉を発さず表情が無いのも良かった。
あどけない子供が無情で残酷な殺戮を遂げる姿はダークヒーローそのもの。
黒く満たされた目ピキピキと血管が浮き上がった顔に昂り、どうしたってこの可愛らしいゴーレムボーイの側に立ってしまう。
彼を仕えて命を下すハンナがこれまたかっこいいことよ。
ただ、ラストの切なさを全身で感じきるには少し感情移入不足だったかも。
もっともっと過剰なくらいのハンナとゴーレムの描写が欲しかった。
途中でかなり間延びしたのもいただけない。情緒たっぷりに押し切っておくれ。
ゴーレムの脅威と侵略してくる街の人々の脅威に挟まれた村人の混乱がスリリングで良かった。
火の海の中、死にゆく大量の人々はもはや神々しいほど。
人を殺すことしかできない化け物の哀しみが爆発していたと思う。
殺害の描写が最高だっただけに、ゴーレム無双はもっと丁寧に堪能したかったけれど。
男性陣の髪型が終始気になっていた。
もみあげを伸ばしてふわふわさせた、羊みたいな触覚ヘアー。
なんなのそれ?どういうセンスなの?
彫りの深い顔面でかっこいいのに謎の触覚ヘアーが全てを台無しにしている気がするよ!