「「鬼になって闘う。真実がほしい」」太陽がほしい 劇場版 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
「鬼になって闘う。真実がほしい」
国家間の「賠償放棄」の取り決めのもとで、取り残されてしまった被害者の話という意味では、タイムリーなドキュメンタリーである。
彼女たちは、嘘つきなのか? いや、間違いなくそうではあるまい。証言映像の説得力は、すごいと思い知らされたし、今まで分からなかったことも見えてきた。
隣国の大統領が、日本だけが悪いような暴言を吐いているが、告発されるべきなのは、勝手に手を結んだ双方の国家である。
正直な感想を言えば、過去において満足のいく形で補償がなされなかったために、現在を生きる我々や子供の世代が、ツケ(金銭とは限らない)を払わせられることが苦々しい。しかし例えば、戦勝国の個人だけに請求権があるのか、同じ中国でも共産党と国民党はどうかなどと考えると、正しい補償のあり方とは何かが分からなくなってくる。
また、上映後に監督が語っていたように、日本では比較的単純な朝鮮人慰安婦問題だけがクローズアップされ、矮小化された議論で火花を散らしているが、アジア全体に目を向ければ、実は多様で複雑な問題であることが、この映画から理解できる。
舞台は中国で、映画「亡命」の班忠義監督が、かなり長期にわたって録り溜めた映像をまとめたものである。そのため、被害者の多くは今や亡くなっており、話としてはいささか旧聞に属する。
共産ゲリラ掃討のために戦場となり、無法地帯と化した中国山西省では、レイプ殺人が半ば公然と認められ、いわゆる慰安所のレベルを越えた悲惨な蛮行が行われた。
映された被害者は後遺症で障害を抱え、その後の人生は厳しいものであった。家族が持てず、貧窮した⼈⽣を送った⼈も多いという。
映画は、被害者のインタビューに始まり、日本兵の証言、日本における訴訟活動と続く。
病床に伏せったお婆さんは、「死んでも鬼になって闘う。真実がほしい」と語るが、自分のことよりも、赤ん坊の虐殺に怒りを隠さない。
監督は、十字架のキリストの死が“愛”の象徴となったように、この悲惨な物語が今後に役立って欲しいと語っていた。