「神作ヤンキーミュージカル映画の金字塔、上書き保存で生き埋めに。」ウエスト・サイド・ストーリー こばたけThunderさんの映画レビュー(感想・評価)
神作ヤンキーミュージカル映画の金字塔、上書き保存で生き埋めに。
旧作は40数年前にロンドンの映画館、新作は水曜日に新宿の映画館で観ました。全体的に歌舞よりもセリフでの説明が多く。予算も多く取れていただろうに音楽先行で流して、後から編集しているからか、出演者のテンポと言うよりはオーケストラのテンポで流れるので体育館でのマンボの演奏でもオーケストラの音にトランペット奏者が当て振りをしたり、全体的に出演者の演技プランや自主性を軽んじる制限やそもそも白人の親が職を取られた事や有色人種でかたまらないとリンチに遭うなど旧作で見えた差別を歌舞で華麗に見せていたミュージカルの良さを損ねていた気がしました。
個人的には旧作でベオナルド演じるジョージ・チャキリスのコンバースのハイカットを今回はどちらかと言えばイケてないトニーが履いていたり、原案のシェークスピア「ロミオとジュリエット」の墓地で主役が落ち合うシーンがなぜか美術館なっていて 死が二人を分かつ暗喩になっていないし、親身になるドクの店の奥さん役リタ・モレノは正直嬉しかったが…あんたが歌うんかいソレ!!と言うツッコミ…。
前に観たミュージカル映画のCATSの映画化にしても そもそもモラルに問題のあるキャラや状況が社会の中で改善され許容され、お説教臭い言葉や矛盾する気持ちと現実の比喩表現として歌が存在しているのに、最初から差別も問題もない社会に設定したら 人間として考えて正す、伝えていく、と言う人間の向上心を低くみているエセポリコレ業界人が作品を改悪しているとしか見えなくなってしまう…。
アイフィールプリティーでは旧作は洗濯と寸法直しの仕事をして、マリアとアニタの義理姉妹の可愛いシーンが新作では高級ブランド店での大レビューになっているし、男達の決闘シーンの塩倉庫がモロにマイケル・ジャクソンのBeat It…いちいち小ネタがダサく 心が冷える。
振付師には言いたい「その振り付けで歌ってみろ」指揮者には言いたい。「それは本当にティーンの歌うテンポなのか?旧作を観てからつくってるのか?」と。役者が反芻して自分の意志で心身を動かせない環境にするなら CGの方がよほど言うことを聞くし、ハリウッドの最近の原作読解力心配になるレベルだ。
ゼレンスキー大統領は欧米向けのスピーチで言った「リメンバー(映画版)パールハーバーを!!」と日本軍が学校や公共施設まで攻撃したあの映画だが、映画になってしまえば歴史は事実上改悪されたまま、今回の新作でも旧作は数年塩漬けになり、新作だけを観た若い観客にはこれがオリジナルとして認識されてしまう。
もう脚本家や作曲家は数百年生き続けるか 権利関係を専門法律事務所に内容についての細かい権利書を書いて貰うしか方法はないのか?