「衝撃的に良い。」ウエスト・サイド・ストーリー bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃的に良い。
Musical大好きなbloodです。劇場公開されるMusicalやMusical的なヤツは、ほぼ見逃さず、かつ無条件リピート。これは、賛否両論湧き上がるやつだよなぁ、ってのは容易に予測できるんですが、私は「全面肯定派」です!
もうね。衝撃的に良かったです。最高です。大して泣けてませんし、感動もありませんが。兎に角、鑑賞中はドキドキワクワクしっぱなし。嬉しさと興奮で、代謝、上がりまくりでした。
ロミオとジュリエットが、未だ自分たちがロミオとジュリエットである事を知らずに、お互いを「見つける」場面の美しさ。VFXですか?CG組み合わさってますか?2人の間にいるはずの人々の向こう側に。光の合間に。トニーが居てマリアが居る。Looking Through の教科書の様なベタな場面で、こんなに素敵な画を初めて見ました。スピルバーグは伊達じゃないよ、やっぱり。多様な技術を駆使して、その技術を使い切りました!的な表現が、スピルバーグですよ。もうね、ここでノックアウト。
このダンスパーティーの場面で明確に分かりました。群衆ダンスはMusicalの命。昨今、特にインド映画の群衆ダンスのクオリティには目を見張るものがあります。一糸乱れぬ統率性です。
ところがところが。
スピルバーグは、これを明確に否定してるます!ダンスパーティの場面のカメラの動き。下に潜ります。踊る人々を見上げるんです。それから上って、また潜って、回って。ダンサーは統率されたシンクロナイズドな動きではなく、あくまでも、生々しさと躍動追求にございます。一人一人の踊りの逞しさと言うか、力強さと言うか、何て言えば良いの?この躍動感!
Tonightの場面は、映画の歴史に残る名場面だったそうですが、リアルタイムでWestsideを知らない世代にはピンと来なかったんですが、これは良いですわ。子猫の様に丸めた身体。格子の下にいるトニーに伸ばすマリアの指。触れるだけで全身が幸せに包まれる2人。こりゃ素敵。今、アタマの中は「トゥーナーイ、トゥーナイ」の無限リピート状態ですw
ラストシーンはベッタベタです。捻りはありません。冒頭、空から降りて来たカメラは、ゆっくりとボロボロのアパートの階段を、静かに上って行き、葬送の隊列が消えると止まります。この辺りの計算された動きは、いかにもスピルバーグ。過剰演出無しで、若者の物語りに終止符を打ちます。
ベイビー・ドライバーで共感獲得能力の半端なさを見せつけたアンセル・エルゴート。憎めないんですよ、彼。ついつい肩入れしたくなるよな外見。レイチェル・ゼグラーの透き通った歌声は「マリア」に相応しいのが彼女だって事を証明してます。バーンスタインのスコアのまんまで脱エレキの音楽も最高だった。
良かった。とーーーっても。
※オマケ
バーでリフに拳銃を売る男の口から "Mutual Destruction" と言う言葉が飛び出しました、多分。一瞬だったので聞き間違いかもしれませんが。この「相互(確証)破壊」と言う言葉は、米露の間で成立している「軍事力の均衡状態」を指し示す言葉であり、今は中国の核武装と軍拡の根拠となっている考え方です。この物語自体を、ミリタリー視点で見ると「抑止力の暴走」とも見れたりする訳で。現代社会への批判も入ってるよ、って事ですね。
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2/21 2回目鑑賞
109シネマズ20:30の回。ま、ま、まさかの貸し切り。入りは良く無いのは薄々感じてたものの、ここまでとは思わなんだ。贅沢したよな気分でしたが、ちょっと寂しかったw
同じく全面肯定派で〜す♪
おそらくVFXは使っていないと思うんですよ。スピルバーグとカミンスキーの頭の中には、最初っから「フィルムで撮れるハズの映像」しかなくって、それでもどうしても思い通りの仕上がりにならなかった場合のみ、最後の手段としてデジタル修正使う程度だと思うんです。
じゃなきゃ、わざわざ全編フィルム撮りしないでしょうし。
「dance at the gym」はフレーム内全員をシャープに映す為、F値8〜11くらいにして「膨大な量の光」を用意したそうです。
「america」などでも、自然光で顔に陰影が出来ないように、めちゃくちゃ強烈な照明を当てているとか。ダンサーの周辺気温は50度くらいですって!フィルムリールが1本10分程度だから数分ごとに休憩は出来たそうだけど。
マリアとトニーの出会いもだけど、チャペルで将来を誓うシーンも素晴らしかったですね!レンズと光とフィルターのマジックです〜。カミンスキーって本当に天才か!と思いました〜。