「逮捕ジャンパー」残念なアイドルはゾンビメイクがよく似合う KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0逮捕ジャンパー

2019年8月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

低予算アイドルゾンビ映画の裏、メイクルームの中で繰り広げられる人と人のやり取り。

完全ワンシチュエーションの舞台が面白い。
スタッフに出演者、個性的な面々が入れ替わり立ち替わり、それぞれの心の内を吐露していく。
メイクの都築さんがただ一人メイクルームに留まり、それぞれの心の内をふんわりと聞き込み受け止める。

アイドル大好きロリータのエリカ、やる気無さげなヘラヘラ態度のシオリ、三十路過ぎて燻るミサキ、デキる子なだけに傲慢な態度をとるサエコ、元トップアイドルの主演サナエ、緊張しすぎて奇妙なミズホ。
それぞれのマネージャーとの関係性や、監督への態度など、色々な対比が面白かった。
隙など見せてたまるかと言わんばかりのサナエマネージャーが好き。

出演者も製作陣も、誰もかれもが胸の内に色々なものを秘めている。
嫉妬も焦りも不安も不満も当たり前。
悩みに悩むも良し、ぶつかり合うも良し、お気楽もまた良し。

ポロポロと心情をこぼす彼女ら彼らに、適度にドライな空気感は保ちつつそっと寄り添う都築。
大したアドバイスなんてしない、極めて無難なことしか言わないけど、寛容な雰囲気でお母さんのように皆んなと接してくれる、その心地良さが大好き。
メイクに入るタイミングも絶妙。

だんだんぶつかり合い混ざり合い、彼女たちの関係性や人間性が変化していく様が胸を打って、不覚にもポロポロ泣いてしまった。
クサくてベッタベタな言葉、ありがちで安っぽい展開だけどジーンとする。

当たり前だけど、私の好きな人たちも色々と抱えながら活動しているんだろうなと思った。
もちろん裏で支える人たちも。
色々ひっくるめてアイドルが好きになったし、人間が好きになった。
お仕事がんばろーーーと思える。

撮影現場のドタバタも楽しめる。
こんなスケジュール変更されるものなんだとか、光がチラチラするのめちゃくちゃアナログだなとか、たくさんの人に囲まれながらカメラの前で演技するのって本当すごいなとか、色々と発見もあった。

それぞれの今後の活躍を願わずにはいられない。
サナエは脱アイドルの女優として頑張ってほしいし、ミサキはバラドルに向いてそうだし、サエコはエリカのライブに行くだろうし、シオリはプロ意識高めてほしい。
助監督の村田は撮りたいもの見つけてほしいし、カメラマンと監督はこれからもヤイヤイ言いながら一緒に仕事してほしい。
都築さんの話を聞いてくれる人もきっとどこかにいるだろうな。

アイドルだから推しメンを決めたい。
ビジュアルならミズホ、キャラで言えば圧倒的にエリカとサエコ。

シリーズも観たいと思う。途中来たお弁当屋さんは前二作の登場人物なのかな。

KinA