「戦車だからこそできるド迫力バトルアクション」T-34 レジェンド・オブ・ウォー といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
戦車だからこそできるド迫力バトルアクション
予告編を事前に観ただけなので、「全露ナンバーワンの興行収入を記録した戦車アクション」という程度の事前知識で鑑賞しました。かなり評価が高いということは知っていたので、結構期待してました。
結論ですが、非常に楽しめました。小回りが利かず、砲撃に時間を要する戦車という兵器を使って行われる戦闘シーンは「いかに敵の行動を先読みするか」「いかに敵の裏をかくか」という戦略性に富んでいて、これがチェスのような面白さがあります。敵の戦車や地形を分かりやすく描写するのも上手く、自然と敵の戦車と自分の戦車の位置関係などを把握することができたのも良かったですね。主人公のイヴシュキンと宿敵イェーガー大佐との奇妙な関係性も、胸が熱くなるものがありました(変な意味じゃなく)。
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ソ連の戦車隊長だったイヴシュキン(アレクサンドル・ペトロフ)は、ドイツの戦車隊長イェーガー(ビツェンツ・キーファー)との戦いに敗れたことでナチス・ドイツ軍の捕虜となってしまう。その戦いから5年後、反抗的な捕虜だっため死刑を控えていたイヴシュキンの前に、かつての宿敵イェーガーが再び現れる。イヴシュキンは通訳を務める捕虜アーニャ(イリーナ・ストラシェンバウム)を人質にされ、半ば強引に軍事演習に参加させられることになる。それは、「戦車に乗ってドイツ軍の戦車の攻撃から逃げ続ける」というだけの自殺行為のような軍事演習だった。
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第二次世界大戦を描いたロシア映画は重くて悲しい映画が多いらしいですね。これはロシアが第二次世界大戦中に多くの戦死者を出したという悲しい歴史によるところが大きいとのことです。しかしながら本作はそのような過去のロシアの戦争映画とは大きく異なり、極めてエンタメに振り切った戦争映画だと思います。悲壮感漂うようなシーンは全くと言っていいほどありませんし、「バスを待っていたら戦車が来た」みたいな笑ってしまうような展開も随所に散りばめられいたので、難しいこと考えずに楽しめる映画でした。
ただ逆に「悲壮感のある重い戦争映画」が好きな方には合わないかもしれませんね。否定的なレビューをする人の中には本作のような「エンタメ寄りの戦争映画」に対して「不謹慎」と感じてしまった方が一定数いるように見受けられました。ロシアの戦時中の悲惨なエピソードを鑑みれば、それも致し方ないことにも思えます。
ストーリーは「ナチスドイツ収容所からの脱走」と非常にシンプルで、戦車での戦闘シーンは最新のVFXやスローモーションを多用した迫力満点の内容になっています。「シンプルで分かりやすくて面白い」という、エンタメ映画としては100点満点の映画だったと思います。
味方の戦車隊員も良かったんですが、何より良かったのはイェーガー大佐がしっかりと「魅力的な悪役」として描かれていたことです。イヴシュキンとイェーガー大佐の関係って、どことなくバットマンとジョーカーの関係と似ているように感じましたね。敵でありながらイヴシュキンの実力を認め、愛情にも似た敬意を払うイェーガー大佐は私の推しキャラですね。ここ最近観た映画の中で一番好きなキャラかもしれない。
あと、私は専門外なんですがミリタリー描写もしっかりと考証されているようで、例えば撮影に実際の戦争で使用されていたT-34を使っていたり、戦車内部の映像も役者本人に戦車を操縦させている実際の映像だったり、第二次大戦中にドイツが暗視ゴーグルを実用化していたという史実からドイツ軍が暗視ゴーグルを使って夜間に待ち伏せを仕掛けてくるなど、「ちゃんと考えられて作られているんだなぁ」と納得する描写が非常に多くて良かったです。
ただ全く不満点が無いわけではなく、取ってつけたようなイヴシュキンとアーニャのラブロマンスとかは完全に蛇足のように思いましたし、夜の見張り中に二人がイチャイチャし始めるのは違和感がありましたね。小説原作の日本映画でも原作に無い恋愛描写が歪に追加されていたりすることがありますけど、ロシア映画にも似たような病理があるんですかね。「大衆ウケするから適当に恋愛要素足しとけ」みたいな。
まぁ、上記のような不満点はありましたが全体的に見れば最高に楽しんで盛り上がれる映画だったことは間違いありません。オススメです!!!