T-34 レジェンド・オブ・ウォーのレビュー・感想・評価
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戦車が踊る
むかし懐かしいナチスプロイテーションのノリの作品で、ソ連の戦車が大活躍する話である。この手のロシア映画はロシア軍がわりと協力していることがあるので、ディテールも本格的である。今回の戦車も本物だ。(その代わり、この手のロシア映画はプロパガンダ臭もただよう。) 戦車は動きが俊敏ではないので、案外アクションで魅せるのが難しい。重要なのは音だが、この映画の音もいろいろ工夫されている。「ガルパン」でも真に迫った砲撃音を作っていたが、こちらの音はかなりリアル。さらに砲弾が金属に擦れて、戦車内に残響音がこだまして、それが乗組員に多大なダメージを与えるなど、ユニークかつリアルな描写がされている。 動きが俊敏でないと先に書いたが、この映画に限ってはかなり俊敏に動く。白鳥の湖に合わせて戦車が華麗にダンスしたりする。あんな動きをできるものだとは思わなかった。戦車の魅力を余すところなく伝える痛快な娯楽アクション映画だ。
T-34ー76とT-34ー85
小学生の頃、タミヤ模型のT-34-85を作った記憶がある。中型の戦車で、アルミ合金のディーゼルエンジンで、機動力に優れていたという記憶がある。この映画では、最初の戦闘では76型が、捕虜になって逃走する際には、85型が使われている。ドイツ側では、Ⅳ号戦車とパンサーが出てくる。実際の戦車を使った戦闘シーンは、男性であれば心が躍ってしまうものだ。(本当の戦争だったら、悪魔のように感じるだろうが)
この映画の良い所は、戦車戦がどんなものかがよくわかるところだ。待伏せの仕方、歩兵との連携、戦車長、操縦士、装填係の役割分担、装甲は前面は強いが側面や後面は弱いとか。機動性、砲塔の旋回性能も重要だとか。T-34は中型戦車で、76型では、パンサーやタイガーに太刀打出来なくなり、改良型の85型が導入されたはず。車や建物を戦車で破壊したり、相手の背後や側面に回って攻撃するなど面白かった。また、徹甲弾と榴弾の違いがわかった。
あるあるだが、あれ程のドイツ軍が一両の戦車にやられるのは、痛快であるとともに、実際の戦場では有り得ないとも思った。
心と技術と頭脳で戦車隊の任務を遂行!
心。ナチス軍の捕虜となりながらも、戦車隊それぞれがロシアの軍人である魂を忘れず、ナチス軍と勇敢に戦う。 技術。武器の装填や発射を的確に行い、戦車を自らの体を動かすように自由自在に操る部下兵士たち。 頭脳。知恵や計算から、部下兵士は的確な指示を出す、戦車長。 この、心・技・頭により、脱出が遂行される。
T-34戦車自体のスピード、操縦性、破壊力をしっかりと見せつける映像と主人公の野生味と知性の共存
出だしの逸話、最初の独ソ戦車戦のエピソードが良く効いていて、なかなか良くできたストーリー。加えて、T-34戦車自体のスピード、操縦性、破壊力をしっかりと見せつける映像も
とても珍しくて、かなり楽しめた。
実戦は初と言いながら戦車の性能を知り尽くしている士官アレクサンドル・ペトロフの野生味と知性を兼ね備えたキャラクター設定と、彼の風貌・演技がとても良かった。リアリティは不明ながら、戦車に砲弾が掠った時の金属的衝撃音の描写が、何ともユニークでかなり笑えた。
アレクセイ・シドロフ監督による2018年公開のロシア映画。脚本はアレクセイ・シドロフ監督、撮影はミハイル・ミラシン。
出演は、アレクサンドル・ペトロフ、イリーナ・ストラシェンバウム、ビツェンツ・キーファー。
日本語吹き替え・字幕に若干の難あり
この映画の素晴らしさは他の方が語ってくれているので、あえて駄目な部分を書いていこうと思う。
他の言語から、日本語へと吹き替え・字幕表示するには、尺の都合、登場人物の口の動き、視聴者が理解しやすいように……と、多くの誓約があると言う。
だから、原文と日本語が異なるからと言って、それが駄目だと一概には否定しない。だが気になるものは気になるのだ。
序盤の戦車戦。
イヴシュキン(主人公)、イェーガー(敵)共に、戦闘中の部下との会話はほぼ指示だけである。
が、原文では部下を褒め、宥め、激励したりと、主人公には主人公達の、敵には敵達の間に、上司と部下の垣根を超えた、戦友としての強い信頼があることを描いている。
中盤で脱走中に、88mm対空砲(アハト・アハト)を、単なる『対空砲』と訳したのもマニアとしてはいただけない。
終盤でパンターが乗っ取られた時に、砲手が呑気に「味方を撃てません」と言っていたが、実際は「あの戦車には同期(友人)が乗っています」とそれなりに撃てない理由がある。
……とは言え、この当りの指摘は映像との違和感を感じることも無く、正直イチャモンに近い。
真に問題なのは、イヴシュキンとイェーガーの最終決戦である。
そのシーンを簡単に振り返って見よう。
お互いの戦車が対峙し、先手はイェーガー。
「殺してやる」→「貫通させる!」と言い放ち、発砲するものの、一発目はキューポラ(砲塔の上についている大きなハッチ)に命中してダメージを与えられない。
次の射撃もイェーガー。「貫徹させる!」と言いながら放った二発目は予備履帯(車体に貼り付けているキャタピラ)に命中し跳弾。やはりダメージを与えられない。
一発目、二発目を外したイェーガーは、三発目は動きを止めるために履帯を狙う。しかし、イヴシュキン達が放った一発の砲弾により、イェーガーは敗北するのであった。
という流れだ。
ここで視聴者は、観ていて少し違和感を感じなかっただろうか。
『何故、ここまで優秀な人間として描かれていたイェーガーが、最終決戦に限って砲弾を三発も外したのか?』という疑問である。
実はこれ、原文と日本語で全く逆のことを言っている。
イェーガーは「殺してやる」→「貫通させる!」ではなく、「お前は殺さない」→「だがその砲塔を破壊する(戦闘力を奪ってやる)」と言っているのだ。
それを知ると、何故一発目~三発目を外したのかも説明がつく
・一発目→砲身を狙ったものの、急激な回避運動の結果、戦車が前傾し、右上に照準がズレてキューポラに命中
・二発目→ドライバーズハッチ(操縦手がいる場所)を狙ったものの、同じく回避運動をされた結果、左に照準がズレて予備履帯に命中
・三発目→戦闘力を奪うのが難しそうなので、移動が出来なくなるように履帯を狙うも反撃される
……といった感じだ。
つまり、最初からイェーガーはイヴシュキンを殺す気は無く、あくまで生け捕りにすることを考えていいたのだろう。
本当に殺す気があるならば、わざわざ一番強固な砲塔正面を狙ったりはせず、簡単に貫通出来る上に乗員の殺傷、砲弾の誘爆の可能性がある車体のド真ん中を狙うだろう。
中盤で「お前を戦車の教導員として迎えたい」と話していたり、イヴシュキンに抱く重い感情を考えると別段おかしいことではない。
何故最終決戦のセリフを真逆に翻訳したのか、少々理解に苦しむ。
その他は文句のつけようがない、非常に良い映画である。
戦車戦なのにスピード感と緊張感がハンバない
自宅で鑑賞しました。 ロシアの戦車映画は他でも見ましたが、本作品は話のテンポも良くてとてもよかったです。 アメリカ映画とは違う明るさと悲しさがありますね。戦争映画なので明るさというのは語弊がありますが、自由を手に入れることに前向きな気持ちには共感できました。 VFXも迫力があって良かったです。 戦車もリアルでいいですね。 ただ、ストーリーはイマイチ。
おもしろかったけど、
戦車戦では、わざわざ砲弾が当たるシーンをスローにする描写はいらんと思う。 個人的には。 ストーリーも、過酷な状況でハラハラもしながら楽しめつつ、ありえんような設定で、そういうもんだと割り切って楽しむべき映画かな、と。
戦車だからこそできるド迫力バトルアクション
予告編を事前に観ただけなので、「全露ナンバーワンの興行収入を記録した戦車アクション」という程度の事前知識で鑑賞しました。かなり評価が高いということは知っていたので、結構期待してました。
結論ですが、非常に楽しめました。小回りが利かず、砲撃に時間を要する戦車という兵器を使って行われる戦闘シーンは「いかに敵の行動を先読みするか」「いかに敵の裏をかくか」という戦略性に富んでいて、これがチェスのような面白さがあります。敵の戦車や地形を分かりやすく描写するのも上手く、自然と敵の戦車と自分の戦車の位置関係などを把握することができたのも良かったですね。主人公のイヴシュキンと宿敵イェーガー大佐との奇妙な関係性も、胸が熱くなるものがありました(変な意味じゃなく)。
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ソ連の戦車隊長だったイヴシュキン(アレクサンドル・ペトロフ)は、ドイツの戦車隊長イェーガー(ビツェンツ・キーファー)との戦いに敗れたことでナチス・ドイツ軍の捕虜となってしまう。その戦いから5年後、反抗的な捕虜だっため死刑を控えていたイヴシュキンの前に、かつての宿敵イェーガーが再び現れる。イヴシュキンは通訳を務める捕虜アーニャ(イリーナ・ストラシェンバウム)を人質にされ、半ば強引に軍事演習に参加させられることになる。それは、「戦車に乗ってドイツ軍の戦車の攻撃から逃げ続ける」というだけの自殺行為のような軍事演習だった。
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第二次世界大戦を描いたロシア映画は重くて悲しい映画が多いらしいですね。これはロシアが第二次世界大戦中に多くの戦死者を出したという悲しい歴史によるところが大きいとのことです。しかしながら本作はそのような過去のロシアの戦争映画とは大きく異なり、極めてエンタメに振り切った戦争映画だと思います。悲壮感漂うようなシーンは全くと言っていいほどありませんし、「バスを待っていたら戦車が来た」みたいな笑ってしまうような展開も随所に散りばめられいたので、難しいこと考えずに楽しめる映画でした。
ただ逆に「悲壮感のある重い戦争映画」が好きな方には合わないかもしれませんね。否定的なレビューをする人の中には本作のような「エンタメ寄りの戦争映画」に対して「不謹慎」と感じてしまった方が一定数いるように見受けられました。ロシアの戦時中の悲惨なエピソードを鑑みれば、それも致し方ないことにも思えます。
ストーリーは「ナチスドイツ収容所からの脱走」と非常にシンプルで、戦車での戦闘シーンは最新のVFXやスローモーションを多用した迫力満点の内容になっています。「シンプルで分かりやすくて面白い」という、エンタメ映画としては100点満点の映画だったと思います。
味方の戦車隊員も良かったんですが、何より良かったのはイェーガー大佐がしっかりと「魅力的な悪役」として描かれていたことです。イヴシュキンとイェーガー大佐の関係って、どことなくバットマンとジョーカーの関係と似ているように感じましたね。敵でありながらイヴシュキンの実力を認め、愛情にも似た敬意を払うイェーガー大佐は私の推しキャラですね。ここ最近観た映画の中で一番好きなキャラかもしれない。
あと、私は専門外なんですがミリタリー描写もしっかりと考証されているようで、例えば撮影に実際の戦争で使用されていたT-34を使っていたり、戦車内部の映像も役者本人に戦車を操縦させている実際の映像だったり、第二次大戦中にドイツが暗視ゴーグルを実用化していたという史実からドイツ軍が暗視ゴーグルを使って夜間に待ち伏せを仕掛けてくるなど、「ちゃんと考えられて作られているんだなぁ」と納得する描写が非常に多くて良かったです。
ただ全く不満点が無いわけではなく、取ってつけたようなイヴシュキンとアーニャのラブロマンスとかは完全に蛇足のように思いましたし、夜の見張り中に二人がイチャイチャし始めるのは違和感がありましたね。小説原作の日本映画でも原作に無い恋愛描写が歪に追加されていたりすることがありますけど、ロシア映画にも似たような病理があるんですかね。「大衆ウケするから適当に恋愛要素足しとけ」みたいな。
まぁ、上記のような不満点はありましたが全体的に見れば最高に楽しんで盛り上がれる映画だったことは間違いありません。オススメです!!!
映画館で見たら、もっとテンションが上がっただろう
ストーリーは単純明快。
捕虜のロシア兵が、ナチスを出し抜く、という。
「そんなに上手くいくワケないじゃん」というツッコミもあるが、そんな野暮なことは言わない。
一級のエンタメ。
感情を表に出さない、と言われるロシア人でも、本作の上映された映画館では違ったのでは。
特に演習で戦車や指令所を吹き飛ばした時は、観客も歓声を上げたのではないだろうか。
「スター・ウォーズ」でデス・スターを破壊した時や、
「アベンジャーズ/エンドゲーム」でアベンジャーズが全員集合した時と同様に。
握手
ドイツ軍の捕虜となったソ連兵士が、演習用のT-35に乗り込み脱走を図る物語。
戦争物ではなく、戦場を舞台にしたヒーローものですね。
戦車同士のバトルは、大掛かりではありませんが臨場感たっぷり。
クライマックスの市街戦も、迫力十分だったと思います。
また、女性通訳の登用も良かったと思います。ラブシーンは個人的には余計に感じましたが、銃で脅かされ恐怖に怯えるシーンや、地図を盗む設定などは、映画に厚みを持たせたように感じます。
ただ、それだけに「ヒーロー物」になってしまったのが残念です。そもそも、主人公が凄すぎます。士官学校出たての戦車長が、ドイツの戦車中隊相手に奮闘し、拷問に耐え抜いて・・・特別なバックボーンがなければ納得感が産まれません。
ラストも決闘仕立てにしてしまい、個人的には興ざめ。やり過ぎです。
ただ、それでも評価は3.5。そのラストにあった、ドイツ軍将校との握手シーンは秀逸で評価を1点爆上げしました。「助けを求める手?」「崖に引きずり込もうとする手?」と思わせての握手。主人公の戸惑いと恐怖とそして敬意の表情変化も見事で感心しました。
内臓がちぎれろ!
レビュー300本目。 第二次世界大戦下、ナチス・ドイツの捕虜となってしまったソ連兵イヴシュキン。 そんな彼は戦車の指揮官であったことから、ナチスが確保しているソ連軍最強の戦車T-34を軍事演習で操縦せよと命じられる。 この演習を、収容所から脱走する絶好のチャンスだと考えたイヴシュキンは、同じ収容所内のソ連兵の捕虜とともに共謀し脱走を図るのだが… 独ソ戦で活躍した戦車T-34のバトルアクション。 T-34って日本で言う戦艦大和みたいな感じなのかな。 これは映画館で観た方が絶対面白いやつだ! もちろん充分迫力満点で凄かったけど、これだけのVFXと爆発音を映画館で観れなかったのは少し残念。 アクションの映像ももちろん良いが、自然の映像がすごく壮大で綺麗。 そしてまさかのラブストーリー。 男だけの汗臭い戦いの中に、結構ガッツリ恋愛要素が入ってくるので、紅一点のアーニャが際立って見えた。 アーニャというモチベーションがあったらそりゃ頑張れちゃうよね⁉︎ ソ連兵同士の友情も涙もの。だって5分休戦懇願して、あの状況で普通見捨ててしまうだろうにやられた仲間助けに行っちゃうんだもん。 とにかく緩急がすごい。 緊迫感あるシーンは本当に息も詰まるようだし、人間ドラマのシーンではじっくり美しく描かれている。 砲弾を撃った時はスローモーションで着弾してから普通のスピードになるのも然り。 確かに戦車も凄いのかもしれないけど、それを上手く操縦できる乗組員が凄いんだよ。きっと。 一点だけ、ナチスの行動がちょっと意味不明だった。 なぜ、軍事演習なんかやろうとしたのか。 せっかく手に入れた最強戦車をなぜ壊すようなことをしようとしていたのか? それに捕虜たちが逃げることなんて容易に想像できたはず。 雑にしていた割には、逃げ出した途端に躍起になって探し出そうとするし。 私自身が読み取れてないだけかもです。ご了承ください。
戦車エンターテインメント
戦争映画ではあるが戦車エンターテインメントと言った方が良いかもしれない。
近年のロシア製映画は、お国柄は希釈して海外市場を意識、ハリウッドより娯楽性に寄せた作品が多い気がします。本作でも戦争の生々しさしさと言うより戦車乗り同士の宿命の対決のような描き方、死人も少ないですし略奪はだめ、恵んで頂きなさいとの紳士ぶり、ラブロマンスも織り交ぜてハッピーエンドに持ち込むのですから良くも悪くも並みの戦争映画とは方向性が違います。
開戦初期にはT-34は無敵だったからソ連の自慢なのでしょう、日本人のゼロ戦びいきと似ているのかもしれませんね。ドイツ軍もT-34を研究してパンサーやタイガーと言った名戦車を産み出したがソ連も量産性と改良型のT-34(85mm砲)で対抗した。
収容所から戦車で脱走したと言うのは実話らしい、「鬼戦車T34(1964・ソ連)」も脱出劇だったのでリメイクとかパクリといわれたようだが元が実話なら問題ないでしょう。
「ホワイトタイガー(2012・ロシア)」でもT-34が出てきたが本作は本物を使っているので迫力が違う。何より砲弾が生き物のよう、装甲で弾かれる様やスローですれ違い火花をあげる、パンサーの床下にワンバウンドで命中させるウルトラ技、VFXを駆使した見せ所が満載だから戦車もののファンは狂喜乱舞するでしょう。興業的にも大当たりして気をよくしたのでしょうかロシアでは独ソ戦勝75周年を記念して3時間越えの長時間バージョンも作られ登場人物の掘り下げなどエピソードが追加されたようです。戦争ものを面白いと言うのも語弊がありますが映画ですのでご容赦ください。
反戦そっちのけでエンタメ、という成功作。
DVD初見。 なるほど快作。 気付くと反戦メッセージ皆無でエンタメに徹したのが吉と出た。 ある意味英断。 闘うことが楽しげですらある。 潜水艦ものより狭い密室劇で体全体を撮れず殆どが顔のドアップという圧迫感。 被弾衝撃表現の新味。 劇場で見ねばだった。
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