犬王のレビュー・感想・評価
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時空を超えたロック・オペラ!観る者の感性をビシビシ刺激する
平家滅亡から幾趨勢…南北朝時代から室町時代を背景に三種の神器のひとつに触れ、盲となり琵琶法師となった友魚と異形・異能の猿楽師犬王の物語。
この時空を超えたケレン味たっぷりのロック・オペラを撮り上げた湯浅監督は、松本大洋の代表作『ピンポン THE ANIMATION』から始まり、オリジナル『四畳半神話大系』でシュールや独特な抜け感で独自の世界観を構築、アニメをある意味アートに昇華させた人物である。
本作もその才をいかんごとなく発揮し、まさに集大成的な作品に仕上がっている。そしてこれが観る者の感性をビンビンに刺激するのだ。平安時代の琵琶法師にロックの要素をぶっ込み、現代演出の要素まで取り入れ最高にぶっ飛んだグルーブで魅せる魅せる。プロジェクションマッピングまで登場させてしまうケレンもカッコイイ!と思わせてしまうのだからもう観客の負けだ(笑)
自分の野望のため悪しきものに腹子を売り渡した父親である猿楽の棟梁、異形として生まれ舞うことで平家亡霊の供養を果たし、失った体を取り戻すというこのプロットは…手塚先生の名作「どろろ」インスパイア・リスペクトではないだろうか。
しかもその犬王を演じるが、女王蜂のアブちゃんである。奇しくも2019年版「どろろ」のOPを歌ったのも彼なのだ。こりゃとても偶然とは思えない。そして本作の犬王はその歌唱力と紡ぎ出す世界観からアブちゃんじゃないとダメだな…とつくづく思った。
また、この平安時代とロックのクロスオーバーは、近代におけるロック革命と保守や政治的配慮によるロック迫害の歴史の物語ともオーバーラップしてるとも思ったり。作品では、頑なに自身の琵琶と歌を貫き生命を落とす友魚。法師一門の命を守るため上皇の意を受け、自らの表現を捨てた犬王もまた精彩を欠き歴史の狭間に埋もれてしまう。そして時代を超えて互いを見つけ邂逅する所で幕が降りる。切なくも嬉しき終わりだ。破滅と再生…そう、ロックは死なない…である。
いや~これ、ロック・オペラとして舞台でも観てみたいなと思った。誰か企画してくれ。あと顔を取り戻した犬王が、面をとったその顔は…あのロック・オペラの名作「ロッキー・ホラー・ショウ」のフランクン・フルター博士(ティム・カリー)じゃないか?!と思ったのは僕だけだろうか?もしそこにリスペクトがあったのなら恐れ入る。
権力者に媚びいらなければ数多の思いも闇に消えるのか。
わたしが1番最初に湯浅監督の作品を見たのは「夜明け告げるルーのうた」でした。あの中でルーが踊り歌うところのリズムがすごく良くて、観ているこっちもステップを踏みたくなるように楽しい作品で、ストーリーもとっぴな設定をうまくまとめてあって、とても好きな作品です。
後は「夜は短し歩けよ乙女」。これもとても変わった作風ですか、台詞回しもリズム良くカラフルな色彩に目が離せない作品です。
犬王ですが、オープニングに現れた現代の風景、最初は?でしたが、友魚の奏でる琵琶の音に身を任せているとやがてそのリズムは全ての音(環境音も含めて)から構成されているように聞こえ、映像の切り替わりのテンポと相まってぐいぐいと作品世界に惹きつけられていきました。ああ、湯浅監督作品だなあと。
ストーリーでは犬王がなぜあのような異形で生まれてきたのか、少しわかりにくい。犬王の父が自らの地位の為に、異形の面に宿る悪霊的なものにかけた願の代償ではあるのだけど、初見で分かりにくさから頭の中に?が生まれてしまい作品に没入する自分と俯瞰する自分ができてしまった。また、音楽も好きなジャンルではないがショーとして見る(聴く?)分には良かったけれど長過ぎて飽きてしまった。
あれだけ2人で創り上げた新しい平家物語を、権力者の前でいともあっさりと捨ててしまう犬王。異形の体は反権力の象徴であったかもしれないが、五体満足となったときあっさり恭順の姿勢をみせて(いちご白書か?)、おいおい犬王それでエエんか?友魚を助けなくていいのか?
権力者に頑なに恭順しない人気者友魚は疎ましがられるしかなく、三条河原で首を刎ねられてしまう。もうそこに音楽は無く、最後は湯浅監督の作品と違う趣を見せて唐突に終わりを迎える。
現代まで漂う霊と化した友魚に、あっさりと権力に恭順した犬王が現れるが、果たして救いとなるのだろうか。
原作ありきの作品だから仕方のないことだが、ラストの展開以外は充分に湯浅監督作品を楽しめるものだったけれど(音楽シーンは長すぎると思う)、ややストーリーに説明不足を感じ(三種の神器、草薙剣はどうなったのか?犬王の行く末はどうなったのか?)て、ラストもイマイチに感じましたがほんの些細なことかもしれません。
もう一度、台詞をはっきりと聞いてみたいから観るかも。日本語字幕が付けば良いかも。
惜しい映画 もっと刺激がほしい
良かった点
・アヴちゃんの人外感・映像
個人的にちょっと…な点
・安易にギターなど使わず、全部 和楽器かつ聴いた事がないようなインパクトのある楽曲が欲しかった
・どこかで見たような踊りではなく、もっと見た事がないような前衛的な踊りに
・犬王・友魚の行動に説得力が足りない(特に友魚...途中で誰?って感じだった)
・LIVEシーンのテンポが悪くて、単純に気持ちが良くない
・犬王の親父の狂気さが足りない(才能がない事への共感が持てると良かった)
個人的にQUEENとかに興味がないのでLIVEシーンはイマイチに感じました(加齢臭を感じた)
手垢のつきまくったロックなどから安易にパクってきて演出に妥協している感じがありました。
もう少しゴリゴリに日本を押したものが見たかったかな。
トチ狂った狂気というか、不安になるくらいの曲と踊りのインパクトが欲しかったです。
(せっかくアヴちゃんと森山未來さんが居るので)
もう少し「今までにない物を見せてやる!」という映画製作者の気概が感じられると良かったなと思いました。
製作側にも事情があるだろうなとは思いましたが、色々と無い物ねだりをしたくなる惜しい映画でした。
能というかロックフェス
アヴちゃん声優も素晴らしい✨
森山未來は森山未來らしくて良い✨
ほとんどロックフェス的な能が繰り広げられ
映像は琵琶と太鼓だけだが、ドラムもギターの音も聞こえる音楽が繰り広げられ
QUEENオマージュなところもあり
犬王が河原で繰り広げる能は、かなりのお金がかかりそうな大掛かりな仕掛け笑
それがまた楽しい
犬王の父が殺されるシーンはなかなかグロい
声優津田さんが見事に演じている
脚本野木亜紀子さんなんですね
善き善き
自分の名前はあまり変えない方が良いみたいですね😊
古典に対する表現
原作を読んでから鑑賞。
ラストの犬王が迎えにくるシーンにグッときた。
ってか、アヴちゃんがすごい。
年齢の幅と表現の幅とめっちゃすごい。
語彙力なくなった。
あの時代で舞台機構を表現したりとかもめっちゃ面白かった。
ただ、どうしても失われた平家物語の猿楽のナンバーとかは少したるかったかもしれん、、、
あとは、友魚の聞こえてる世界を見せる描写めっちゃ良かった。
雨のシーンの展開の仕方もいいし、コメが溢れてるシーンも良かった。
あのシーンの音の表現がヤベェ。
友魚の世界になった時の音の解像度がすごかった。
我はここにあり、いるんだ!って言うのが終わりまで通しのテーマになってたのは面白かった。
76/100
見届けよおぜええええ。
見届けよおぜええええ。
という歌詞が耳に残った。
ある種映画館で見るべき作品。コンサートだもん。
ストーリーは特に重視でない。音楽が大事。
アニメとしては実写というか写実というか。
見といて悪くない。
映画の新たな世界、とまではいかなくても新鮮な気持ちになれる。
映像体験としては極上
不勉強な自分には難しいかと思ったが、(勿論拾えてない所は多々あろうが)意外にもストーリーラインは分かり易かった。
ただ、メインとなる楽曲が完全に現代ロックだったのは残念。昔、三味線と太鼓だけでロックな演奏を聴かせてくれたユニットが居たので、そういう方向性を期待していた。
舞台演出なども含め、当時のリアルな部分がほぼ無いため、常に(※これはイメージです)と言われている感じ。
また、アニメ『平家物語』が事象よりも心象にフォーカスが当たっていて素晴らしかったのに対し、今作はそこが薄かった。犬王と友魚の関係も深掘りされず、周りのメンバーは触れられもしない(画面と音を一致させないなら、いなくてもよかった)。筋は追えるが、感情移入までは出来ませんでした。
とはいえ、演出や歌唱はすばらしものがあります。
正直、本職以外は声優として80点くらいですが、特に犬王は歌唱シーンで200点なので、余裕で相殺される。そのくらい魅力的。
作画のレベルも非常に高く、ライブシーンは言わずもがな、異形の犬王の、重心がおかしな位置にあるハズなのに実在感のある動きは必見。
結論として、物語というよりは映像体験として価値の高いものだったかと思います。
いまいち…
女王蜂が好きだったし、予告観て期待してました。
内容は良かったし、映像の表現がすごく美しくて映像作品としてはとても良かったです。
アヴちゃんの歌や声がすごい犬王にあっていて、彼女の才能を感じました。
ただ、歌パートを多くとりすぎている割に、犬王と友魚の繋がりが薄い…。
もっと2人の友愛とか、唯一無二の繋がりの深さが描かれていた方が感動できたのでは?
歌パートはやったもん勝ち的?私は少しダサく感じました。
蜷川幸雄の舞台みたく、ロック取り入れて派手さを出してるのかな?と思ったけど、同じフレーズ繰り返しで単調…ちょっと飽きちゃいました。
あの時代だからあの程度が限界ってことなのかな?でももうファンタジー色濃いめなのだから、攻めた曲使って欲しかったです。
そして再度言うけどダサい。笑
映画館のスクーンで観るには迫力があったけど、DVDで観たら歌のシーンはヤバそう。
後、個人的に犬王の素顔は美青年であって欲しかった…
アヴちゃん使っておいてデーモン閣下かよ!!絶対に中性的な美青年だろうが!!
振り回された挙句のすがすがしさ
ほとんど前情報を入れずに行った。平家関係なようだし怨霊の登場するファンタジー的な物かなと予想してはいたけれど、間違ってはいないがもっと破天荒。
まさかのポップカルチャーが室町南北朝の京都に一大ムーブメントとして巻き起こるなどと予想できたはずがない。
中盤から口を開けた状態で流れ去るままに振り回されて、新体操やバレエまで出てきた?とぽかんとしているとまた激流がやってくる。
ああ、己の道を通した結果か。と思っていると最後にやってくるのは救いか希望か。
すごいものを観てしまった。
期待した分少し残念だった
アヴちゃんが初声優ということで、
PVを見て映画館に駆け込んだ。
アヴちゃんの表現力は圧巻そのもので、
犬王という異形のキャラクターを声を節々で変えることにより飽きさせない素晴らしい物だった。
そして、湯浅監督と松本大洋氏のタッグ、
まぁ大方予想通りの絵面ではあったが、
どうしてもクレヨンしんちゃん感が拭いきれず、
それが狂気じみたストーリーを緩和しているといえばそれまでかもしれないが、もう少し繊細な絵でも良かった気がした。
しかし、最後明らかにデーモン小暮閣下なのはどうしても気になったしこれは無いと思った。
そして、脚本は逃げ恥を書いた方だったかな?
内容が濃いだけに90分に無理やり押し込んだ感が凄くあった。全体を通して分かるようにはなっていたが、順番を少し変えてもよかったと思う箇所も少々。
音楽はなぜロック調にしてしまったのか。
題材が題材だけに残念だった。
〜総評〜
一言で言えば、
アヴちゃんが素晴らしすぎて
周りが霞んでしまう。
画角やキャラの動きはとても良いと思った。
が、友情・能楽をテーマにしていたのを感じさせないなんともテーマ感が薄い残念な作品であった。そして最後のデーモン小暮閣下。
聖飢魔IIは個人的に大好きだが、
ここは違うよ。
( ◠‿◠ ) ボヘミアンラプソディin室町?
クイーンのボヘミアンラプソディin室町って感じですかね。
犬王がフレディ!?友魚がブライアンメイ!?欲を言えば他のメンバーも描いて欲しかったかなぁ。エレキを琵琶に変えて弾きまくる友魚、異形の姿の歌い手の犬王、壇ノ浦を演じたステージは最高です。そして支配者足利義満を前に最後のステージ、美しい!美しすぎる。
まさに魂を語り継ぎそして解放していく伝説のステージ。ありだなぁ、、、、この映画。
発想がいい!
昔、メタルが好きでいろんなバンドのアルバムを聞いたけど、どのバンドもファーストが衝撃的で1番いい!そしてだんだん廃れていくんだけど犬王たちもそうだったのかなぁ。友魚は最後まで自分たちのスタイルを曲げず、、、、、そして犬王は、、、。
比べちゃうのは『平家物語』。今年の3月くらいにやってたアニメ。こちらも主人公の琵琶という少女が平家の魂を語り継ぐ話。こちらも琵琶の音色が印象的。おすすめです。
古典と現代の融合
僕は毎月歌舞伎を見に行く。
従って歌舞伎の物語の題材になることが多い平家物語、そして歌舞伎よりも古い伝統芸能「能楽」の誕生にまつわる話ということで期待を膨らませて行った。
冒頭、いきなり現代の街の描写から始まるので驚く。
その後琵琶法師(友魚)が琵琶をかき鳴らして犬王の話を始める。
これで一気に現代から古典の世界へ観客はタイムスリップする。
音楽も鼓や琵琶を使いながら現代楽器ともコラボして、テンションが上がり上々の掴み。
そして、友魚が盲目になる場面が描かれる。
歌舞伎で言えば発端にあたる部分。
平家が海の底へ持っていった草薙剣を引き上げ抜いたことによって父は死に友魚は盲目になる。
ここら辺は因縁話めいていて面白い。
そしてここで興奮したのが平家蟹の話が出てきたこと。
これだけでも古典好きとしては満足。
そしてそこから琵琶と出会い都へ行き犬王と出会う。
そしてクライマックス。
南北朝を統一した義満が平家物語を一つにまとめ、犬王の舞を否定して藤若の舞に統一する。
ここで義満が権力者としての怖さを見せた。
それまではどちらも大手を振って興行できてたものが、権力者の言葉によって正統と異端にわけられる。
義満次第では犬王の曲の方が現代に残っていたかもしれない。
権力と芸能の関係とはどうあるべきかという問いかけになっていて素晴らしい。
最後の方音楽のない中で優美に舞を舞う犬王の姿が悲しい。
そこから最後、冒頭の現代の街中の場面に戻って友有と犬王が再会する。
そこから2人が自由に踊る。
今ある能楽の曲は当時から現代まで作られてきた膨大な曲の中のごくごく一部だ。
現在でも能楽師の方は復曲と言って忘れられた曲を復活されたりする。
その忘れられた曲の中にも人々の魂はこもってる。
そんな事を感じた。
そしてもう一つ。
津田健次郎さん演じる犬王の父が素晴らしい。
ライバルに心を乱され、完璧を求めるが余り息子までをも犠牲にするまでの闇堕ちの過程を丁寧に描写していて人の妄執がよく伝わってきた。
この犬王の父のシーンはそれまでの伏線が回収されていって野木さんが脚本を書いてるという事を思い出されたし、鳥肌が立った。
さて、ここまで手放しで絶賛してきたがいまひとつな点も幾つか。
まず作画と音にズレがある箇所がいくつかある事。
そして、声優さんが津田健次郎さん以外は今ひとつな所。
途中のライブシーンがいくらなんでも長すぎる所。
途中から琵琶がエレキギターに変わってることにすら気づかなかった(琵琶でロック風の音楽を弾いてると思っていた)程興奮していた僕ですら途中寝そうになってしまった。
そしてアヴちゃんさんの歌がもう一つな所。
いや、ロックスターとしてはとても歌が上手いのかもしれない。
しかし、犬王が演っているのはあくまで猿楽である。
ロックみたいに斬新な猿楽であったとしてもお客さんに伝わることが大事であると思うので、途中の腕塚とか歌舞伎で昔の言葉に慣れてるはずの僕でも何を言ってるのか聞き取れなかった。
犬王の気持ちとしても周りについてる平家の霊の物語を伝えるというところが大事なんだからもっと伝わるように歌ってほしかった。
最後に、この映画を観ると世阿弥から始まる現代の能楽が悪者のように思う人もいるかもしれないが、「余分なものを削ぎ落とす」ことで美を作り上げた能楽も素晴らしいという事をお伝えしておきたい。
【良かった点】 アニメではなくもはやフェス!、ここ数年行けていない...
【良かった点】
アニメではなくもはやフェス!、ここ数年行けていないフェスの熱気をスクリーン越しに感じられる最高に熱い一本。
映像革命。見たことのないギミックの連続で、それだけで楽しいのにさらにアヴちゃんと森山未來さんの歌が相まって初体験づくしの贅沢。
【良くなかった点】
後半の急なシリアス展開は若干ついていけなかった。もう少しライヴの余韻に浸らせて…。
史実ベースなので仕方ないが、個人的にはもっとハッピーであってほしかった。
ロックンロールの鐘の声、リズム&ブルースの響きあり。 盛者必衰の理に抗う、二人の阿呆が踊り狂う!
南北朝時代の京都を舞台に、実在した猿楽師・犬王と盲目の琵琶法師・友魚との、友情と狂乱を描いたミュージカル・アニメ。
監督は『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』の、巨匠・湯浅正明。
脚本は『図書館戦争』シリーズや『アイアムアヒーロー』の野木亜紀子。
琵琶法師・友魚を演じるのは『20世紀少年』シリーズや『怒り』の森山未來。
室町幕府第3代征夷大将軍・足利義満を演じるのは『横道世之介』『ピースオブケイク』の柄本佑。
友魚の父を演じるのは『探偵はBARにいる』シリーズや『ミュージアム』の松重豊。
国内外から高い評価を得ているアニメ監督・湯浅正明。
正直言って、自分は湯浅正明作品が苦手。
唯一無二な映像表現は確かに魅力的だが、大体どの作品もお話がいい加減🌀
絶賛されている『ピンポン THE ANIMATION』もそれほど良い作品だとは思えない…(追記:原作は『SLAM DANK』と対をなす、史上最高のスポーツ漫画の一つだと思っていますよ!ただ、アニメ版は改変が酷くて…)。
『映像研には手を出すな!』は面白かったけど、これは原作に忠実だったし。『映像研』は原作漫画が既に面白いからねぇ…🤨
という訳で今回もあまり期待していなかったが、松本大洋先生がキャラクター原案を担当している&予告編の出来が良かったので観賞。
結論から言えば、これまで観てきた湯浅正明作品の中ではダントツで素晴らしいっ✨
というか、日本アニメ映画の歴史に新たな1ページを刻み込んだと言っても過言では無い、紛うことなき傑作だと思います!湯浅監督凄いっ!👏
舞台は南北朝時代の京都。主人公は実在の猿楽師・犬王。
これだけ聞くと「なんだか難しそうな映画だな〜🤔」という印象を持たれることでしょう。
しかし、本作の観賞にあたり、事前知識は0でも大丈夫(さすがに源平合戦の事くらいは知っていないとダメだろうけど…)。
というか、普通犬王なんて人知らないよ。
この「犬王のことなんて知らない」という共通認識こそ、本作の要。
当時は絶大な人気を誇っていたにも拘らず、現代では忘れ去られてしまった猿楽師・犬王。
これもまた「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」ということなのでしょう。
盛者必衰。諸行無常。
この必定の理に対し、どこまでも抗おうという姿勢がこの映画には感じられる。
生きるということが、結局は風の前の塵に同じだとしても、風前の灯火なのだとしても、それでも意味があるのだと言うことを全力で叫ぶこの映画を、嫌いになれる筈がないっ!
明日はどうなるか知らねども、今この瞬間だけは何者にも譲らない。その姿勢、正にロックンロール!yeah!
犬王と友魚の演じる猿楽を、まるでロック・コンサートのように描くという大発明は見事👏
湯浅監督曰く、これは何も誇張して描いたわけではないらしい。
記録に残っていないだけで、もしかしたら本当にこういう猿楽が演じられていたのかも知れない。
だったら、それを思うまま自由に描いてやろう!というのが湯浅監督の目的だったようです。
常識の殻に収まらず、自由な発想で歴史を紡ぎ直す。湯浅正明監督の独特なアニメーションは、正にこの歴史の修正にピッタリだと言えるでしょう!
異形でありながら、稀代のロックスターでもある犬王。その声を演じるという難業をやり遂げたのは、ロックバンド「女王蜂」のVo.アヴちゃん。
「まーた話題性重視の芸能人キャスティングかよ!素人に声優が出来るわけねーだろー💢」とか思っていてすみませんでしたっ💦
アヴちゃんの演技は本当に素晴らしかったです!ステージにおける歌唱シーンは勿論のこと、平場での会話シーンなども完璧✨しかも、犬王の形態が変わるごとに声音を変えるという常人離れした技も披露してくれます。
アヴちゃん、あなた天才!👏
忌憚のない意見を言いますが、プロの声優よりも上手いっすよこの人。この先もどんどん活躍してほしい。
(そういえば、2019年のTVアニメ『どろろ』の主題歌を歌っていたのは女王蜂だった。この映画の下敷きになっているのは間違いなく『どろろ』だが、何か関係があるのだろうか?)
犬王と友魚は、「名」を自ら選択する。自らの手で自分の名前を決めた彼らだけが、その生き方を選択する事が出来た。
しかし、足利という絶対的な「名」を持つ義満によって、彼らは悲劇的な運命を辿ることになる。
また観世座という「名」に従順だった世阿弥は後世まで語り継がれる存在となり、名を自由に決めた犬王は歴史の闇に葬り去られた。
この物語では、「名」に縛られて生きる者が栄光を手にし、「名」から自由になった者は破滅の道を辿る。
だがしかし、「名」の軛から逃れたものだけが、一瞬の生の煌めきを得る事が出来、またかつて「名」に縛られたが為に無念の死を遂げた者たちを鎮魂することも出来るのだ。
「名」に縛られるか、「名」を断ち切るか。言い換えれば家や組織に縛られるのか、自由に生きるのか。
どうせ人の一生は「風の前の塵に同じ」。
どっちを選んだところで、大きな違いはないのかも知れない。
んじゃあ、自分の好きな方を選べば良いんじゃない?とこの映画は言ってくれているような気がする。
大好きな設定とメッセージ性💕
だが、実はかなり大きな不満も残る…。
本作の目玉である猿楽ロック・ミュージカル。
正直、ここの描き方に疑問が…。
友魚がまず四条大橋の上で前座ストリート・ライヴ。そして、その後六条の方(だったかな?)で犬王のメイン・ステージが開催される、というのがパターン。
これが結構ワンパターンに感じてしまった。
特に友魚の路上ライヴはかなり同じような映像が続くし、それが繰り返されるので映像的に飽きてくる。
もっと多彩なパターンを見せてくれたら良かったのだが。
犬王の初舞台となる「腕塚」。
楽曲の素晴らしさも相まって、始まってすぐはかなりテンションが上がったのだが…。
犬王の派手な動きは確かに楽しいんだけど、割と動きがパターン化されていて、「そのダンスさっきも見た…」という感情が沸き起こってしまった。
カメラワークも、なんか定点カメラで映しているかのようなつまらなさ。
舞台装置なんかは面白かったんだけど、もう少し舞台演出は練った方が良かったのでは…。
「鯨」とか「竜中将」のシークエンスは良かったんだけど、いかんせんつかみとなるこの「腕塚」は弱かったかな。
劇中のサントラは確かにアガる!…のだが、あまりにもクイーンっぽすぎるのは気になるところ。ギターソロとかまんまブライアン・メイやないかい。
これだけオリジナリティに溢れる作品なのに、どうしても『ボヘミアン・ラプソディ』が頭をよぎる…💦
もう一点付け加えるならば、何故劇中曲にエレキギターやドラムの音を付け加えたんだろう?
少なくとも犬王の演技中に流れる楽曲だけでも、作中の登場人物たちが奏でている楽器と同じものだけで構成すれば良かったのに。
なんで琵琶からエレキギターの音色が聴こえるんだよ…🌀
今回もこれまでの湯浅正明作品と同じく、ストーリーが弱い。
有名脚本家・野木亜紀子が付いていることもあり、物語の骨子はしっかりしているのだが、ここぞというところで「うーん…」と思ってしまう。
特に、犬王の父親の扱いが雑すぎるっ!
彼の行動こそが、この『犬王』という映画の根底に関わる重要な出来事のはずなのに、結構そこはあっさりなのね。
退場のさせ方も適当。
犬王の父親の物語をもっと膨らませていれば、映画の見所も増えたと思うのだが。
最後のハッピーエンドも「?」。
犬王はこの後、義満からの寵愛を受け、「道阿弥」という名を授かる。
一体どういう思いでこの名を賜ったのか、そこは映画には描かれていないが、とにかく犬王はこの映画の後、文字通り義満の「犬」となってしまう。
父親を殺され、母も絶望の中で死に、己も無念の死を遂げた友魚。その背後にあったのは全て足利家。
友魚の足利義満への恨みは相当なものだったはず。だからこそ、600年も怨霊として現世に存在し続けたのだろう。
そんな友魚からしてみれば、義満の「犬」となった犬王は許すことの出来ない存在なのではないだろうか?
それなのに、なんか最後は2人がウフフって言いながら昇天しちゃって…。
なんかおかしくないっすか?
正直、このクライマックスには「無理にハッピーエンドにしなくてもいいのに😒」と思わざるを得ない。
等々、不満点もある訳だが、やはり好きか嫌いかでいえば断然好きな映画です。
少しでもアニメ映画に興味のある人は、絶対に映画館で観賞するべきですっ!👍
※〜簡単な時代設定〜
1185年…壇ノ浦の戦い。平家滅亡。
安徳天皇、祖母である二位尼と共に入水。その際、三種の神器も共に海底へと沈む。
源義経、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)と八咫鏡(やたのかがみ)を回収するも、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)だけは回収出来ず、消失してしまう。
1200〜1300年頃…『平家物語』が成立。琵琶法師たちが物語を日本各地へと広めていく。
1333年…後醍醐天皇、鎌倉幕府を打倒。建武の新政。
足利高氏、戦功を認められ「尊氏」の名を得る。
世阿弥のパパ、観阿弥が誕生👶
1335年…足利尊氏と後醍醐天皇、バチバチに争い始める。
1336年…足利尊氏、建武式目を制定して京都に幕府を開く。
後醍醐天皇、足利尊氏に三種の神器を譲る。
それを以て尊氏は光明天皇を新天皇として即位させる。
1337年…後醍醐天皇が渡した三種の神器は偽物だった!
後醍醐天皇は奈良へと渡り、そこに新たに朝廷を築く。
ここに北朝(京都)と南朝(奈良)が並び立つ南北朝時代が幕を開けた。
1358年…足利義満誕生👶
1363年…世阿弥誕生👶
1369年…義満が第3代征夷大将軍となる。
1375年…世阿弥、義満のお気に入りになる。観阿弥が率いる観世座は将軍お抱えとなる。世阿弥はこの時12歳。
1380年頃…犬王が頭角を現す。
1384年…観阿弥没😇
世阿弥が観世座の太夫になる。
1380〜90年頃…犬王、義満のお気に入りとなる。
1392年…南朝の後亀山天皇から三種の神器を接収。ここに南北朝時代は終わりを迎える。
1396年…犬王出家。自らを犬阿弥と号する。
1400年頃?…犬阿弥、義満より「道阿弥」という名を承る。
1408年…道阿弥、後小松天皇の前で天覧能を披露。
義満没😇
1413年…犬王没😇
1400〜1420年頃…世阿弥、能の理論書「風姿花伝」を執筆する。
1443年…世阿弥没😇
ライブシーンが…
湯浅政明監督、世間の評価はいざしらず、個人的にはNetflixの2作はダメで、特に日本沈没は途中でこちらが沈没した。NHKの映像研は原作の良さをよく出せたなという感想で、代表作は見ていないものの、俺には合わないかなあという印象。今回の犬王はそれほど見たい内容ではなかったが、自分にとって湯浅監督はどうなのかを問い直すつもりで見に行った。
ストーリー、キャラクター、役者などの要素は興味深く、意外にすぐ入っていけた。特にアヴちゃん、色物かと思っていたが声の使い分けに感心した。ストーリーは皆さんのレビューで事後補完もして納得しているが、受ける側の表現があまりなく、のし上がった感がないのが残念。そして音楽のシーンを受け付けられなかった。長すぎたし、なんだが今の時代に合ったノリで、10年経ったら古びてしまうのではといらぬ心配。
今回の結論として湯浅監督の深掘は見送りとなった。
「鯨」のシーンは最高でした
印象に残るのはアブちゃんの歌のうまさ。ここだけ違う音響を使っているのではないかと感じるくらい腹に響きました。特に、「鯨」の場面は映像との相乗効果もあって自分の中ではこの映画のピークでした。
ストーリーに関しては、「親が力を手に入れるために自分の子供を差し出し、子供は異形の体を持って生まれる。呪いを解くたびに人間の体を取り戻す。」と、どこかで見たような内容・・・。友魚の幼少に起こったことも回収されていたのかよく分からず・・・。
最後も、犬王はうまく世渡りしている中で、友魚は自分を貫いて斬首される。「犬王、お前はそれで良いのか?」と感じている中で現世まで彷徨っている友魚を犬王が見つけても、感情移入もできず・・・。今ひとつ説明不足な感が否めない作品でした。
ミュージカル映画として観に行くと、、、
前知識無しの状態で行きました。
盲目の琵琶法師友魚と呪われた平家の子犬王との友情を描いた物語。
広告でミュージカル映画と謳っており、ミュージカル映画は正直苦手でしたがアヴちゃん目的で観ました。
歌パートはさすがボーカリスト。圧巻の歌唱力。
ただ、本当に残念だったのはどうしてエレキギターとドラムを入れたのか。時代に合っていなさすぎて違和感しか無かった。本当に残念。
ストーリーは面白かったです。3種の神器の1つの剣からやたら血が溢れてくるシーンは必要だったのか、、、
無邪気で真っ直ぐな犬王の強さ
松本大洋の味わい深い絵に
命が宿ったかのような作画に魅了され
聴覚を虜にするアヴちゃんの
耽美な声に高揚。
変幻自在の湯浅演出と
野木亜紀子脚本が光を当てる
残酷で優しい世界。
個人的には中盤のミュージカルパートが
少し長いと感じてしまいましたが
作品の分岐点となる大切なシーンなので
飽くまで個人的意見です。
湯浅監督の初長編『マインド・ゲーム』で体感した
唯一無二の世界に吸い込まれる独特の感覚。
改憲や緊急事態条項という言葉が最近ちらほら。
また権力により自由な発言や音楽が
封殺される日が来ませんように。
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