犬王のレビュー・感想・評価
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オチが後味悪い
最後の天女の演出がライブの中で一番微妙だった。細かく波打つ布の表現が手抜きかと思った。
他のライブは化け物だからこそできる演出でリアルにできそうな説明がされててよかった。
オチは現実的すぎて映画にした意味ある?って思った。
主人公が友のため権力者に飲み込まれ歴史から消えていく
だけど友は既に処刑されている。
熱狂するファンは一時的な熱と勢いはあっても
処刑の時に助けてくれたり直接的に助けになることはない
でも平家にこんな物語あったよ、犬王ってのがいたよって伝わったから意味あったんだろうけどさ
こちとら諸行無常を日々感じるリアル生者なので
フィクションの中でわざわざ突きつけられたくない。
見る意味なかった。
猿翁の仮面はめっちゃ怖くてよかった。オチ以外の演出も。
諸行無常が好きな人や
最後を救いとして捉えられる人には完璧な映画かも
天に向かって
犬王最初の舞台。天に向かって伸びていく腕、突き出された拳が、自分的にはクライマックスだった。あの拳には、異形の者が持つ得体の知れない力が込められていたように思う。
犬王は人の姿を取り戻す度にパワーが落ち、普通のパフォーマンスに近づいていったのではないか。と言っても、室町時代に平均台の技やシルクドソレイユを想わせる動きは普通のパフォーマンスとは言えないが、せっかくのアニメ作品。人間に出来る動きに縛られる必要はなかったのではないだろうか。
アヴちゃんの声は素晴らしかった。「鯨」が始まった時、クイーンかよって思ったけど、アヴちゃんの声と和のメロディーに持ってかれました。大騒ぎしながら観てみたいですね。
あと、面を取った犬王はもっと絶世の美男子かと思ってました。そこは残念。
ロックミュージカルとしては最高峰だったが…
う〜ん。ロックなシーンは本当に出色だったけど…
なんともストーリーがイマイチ。
物語のキーアイテムにしか見えなかった呪術的な宝剣が途中で放ったらかし…
勝手に想像しろってヤツ?
それじゃ物足りんわ。
義満にも気に入られ、世阿弥もリスペクトしていた犬王の作品が、何故?後世に残らなかったのか?
その謎に仮説を立てなかったのが、最も残念なところ。
クライマックスの皆既日食も最高のアイデアだったのに、なんで定番のダイヤモンドリング派手にやんないかねえ…
定番すぎて恥ずかしかった?
せっかく曲それ自体は、ピンク・フロイド『Eclipse』のオマージュのようにも聴こえて、かなり盛り上がったのに。
声優陣もイマイチだったなあ。
義満の素人臭さはワザと?
松重豊も”らしさ”が出てなかったなあ。
せっかくアヴちゃん使うなら、ロックしまくる友魚の方が良かったんじゃない?
己の才能を開花させていく各フェーズ毎、異形から徐々に人間の体に変容していく犬王の心理面の変遷を全く描写しなかったのもワザと?
全くもったいない。
比叡座の座長が犬王の父と言うのも分かりづらかったし。
その父が固執していた能面も、 代々の能楽師の念がこもっている設定ゆえ、本物の能楽師4人の声を重ねたらしいが、聴き取りづらく最後の台詞以外は何を言ってるのか分からなかった。アイデアは良かったが、1人の声を多重録音した方が聴き易かったはず。
今回は歌詞の字幕付きヴァージョンで観たが、音楽以外の聴き取りづらい台詞にも全部字幕を入れて欲しかった。
この映画がまさに犬王で皮肉
まず、ブロマンス好きなので犬王と友魚の関係性に星5です。
星をひとつ減らしたのは音楽。二人のパフォーマンスがキモの映画なのに、曲がいまいち。アヴちゃんの声でなんとか保ってますが…。女王蜂に曲は担当してもらった方が良かったのでは?
どの曲もあまりにもネタ元そのままで、犬王ならでは!というオリジナリティがあった方がよかったと思います。例えば和楽器バンドっているじゃないですか。和楽器でロックは作れます。ロックにしたい解釈は有りだとして、西洋の楽器を鳴らさなくても琵琶で作れたはず。その方が絶対かっこよかった。この、和楽器で犬王オリジナルのノレる曲が作れていれば傑作になったはず。
でもパフォーマンスパートもちょっと長すぎた。良い曲だとしてもあれは長い。野木さんが書いた犬王と友魚の交流パートは結構削られたらしいが、そっちを映像にしてほしかった。映画はやっぱりストーリーです。歌詞が重要で削れなかったなら、パフォーマンスパートの映像からストーリーに入って、バックで歌を流すとかそういう方法もあったはず。
とにかく惜しい!!ただ私は曲パートが冗長でネタ的という前情報を知っていたので、それなりに受け入れて観ました。
犬王と友魚のキャラが良すぎただけに、実に惜しいですが、アングラ映画として長く人気となるでしょう。アニメ映画の正史とはなれなかった。でも熱狂的なファンは生まれた。これがまさに犬王と友魚そのもので、皮肉。
ディレクターカット版では、カットされた二人の交流を沢山入れてほしいですね。
(追記)
脚本家野木さんのインタビューを読んだら、監督に対して腹が立ったので追記。野木さんによると楽曲担当の方は当初和楽器メインで曲を作ったのだそうです。でも監督がイメージと違うと言ったそうで…。「完成を見たらもう能ですらないしゃん!プロデューサーも誰も、こんな風になるとは思ってなかったんじゃないかな。」だそうで。「打ち合わせでフェスとかポップスターとか監督がしきりにおっしゃってましたが、例えだと思うじゃないですか。」など、柔らかくおっしゃってますが…ねえ?私の感想と同じ事思ってらっしゃるかと。
それに、和の文化より西洋!と結論づけてしまっている事に監督は気づかなかったのかな。
監督の暴走を誰か止められていれば傑作だったのに…
正に”考えるな、感じろ”作品。他の方も挙げていた通りこれは歴史アニ...
正に”考えるな、感じろ”作品。他の方も挙げていた通りこれは歴史アニメではなくミュージックアニメとして捉えた方が楽しめるかと。歴史知識は源平の戦いのその後〜くらいで良いかな。冒頭でもサラッと説明してくれます。
平家の呪いによって巡り会った友魚と犬王が歌と踊りでその呪いを解き自らの物語を広めようとする物語。
轟音上映での鑑賞でしたのでメインである歌・踊り場面は凄い迫力でした。ですが明らかロックだし和要素は殆ど無し。舞台装置や演出もまんま現代仕様で違和感ありまくりですが、その迫力は本物ですので違和感ぶっ飛ばしで楽しみました。
そして何より女王蜂・アヴちゃん扮する犬王の演技。この方の多才さには感服します。歌はもちろんキャラクターの演技にも引き込まれました。
物語的にはハッピーエンドとは行きませんでしたがラストのシーンで救われた気がしました。
1時間半とは思えない濃密さでした。
音楽の好みで評価は変わってしまう、時代に合わせた音で良かったのでは?
(完全ネタバレなので必ず映画を見てから読んで下さい)
映画が始まった時は、素晴らしい映像に琵琶の音色で、なかなか見たことがない映画のワクワク感、傑作かもとの印象がありました。
しかし犬王出演の舞台が始まると、え?この映画はロックコンサートの映画だったの?との感想に変わります。
しかもそこで流されるのはクイーン的な2世代古い音でした。
私は室町時代の音は室町時代に使われた楽器や音で奏でる必要があったと思われます。
また、犬王出演の舞台の楽曲は70~80年代のロックを湯浅監督はイメージしていたようですが、現在からするとその音は古すぎると感じました。
つまり室町時代の作中ではありえないエレキギターの音が鳴り、かつその曲調は映画を見ている現在からは古すぎるという、不協和音が私の中には生まれてしまいました。
犬王の声を担当したアブちゃんはロックバンドの女王蜂のメンバーですが、女王蜂の音は現代的でやはりいいです。
・女王蜂『犬姫(INU-HIME)』Official MV
・女王蜂 『KING BITCH』Official MV
犬王出演の舞台の曲のほとんどは、湯浅監督のリクエストで70~80年代のロックのイメージで大友良英さんが作曲したそうです。
私は犬王出演の舞台の曲は女王蜂が全て作曲し、使用する楽器は室町時代にあったもので作る必要があったと思われました。
個人的には70~80年代のロックに乗れず、かつ室町時代でのエレキギターの音への違和感が長時間続くことになり、正直かなり厳しい時間が続くことになりました。
そもそもここまで長時間ロック映像を見せる必要はあったのでしょうか、映画はやはりドラマで見せて欲しいとは思われました。
しかし私のようにこの曲調に乗れなかったのは少数だったのかもしれませんし、映画の内容をよく分からないまま見たこちらの責任もあったのかもしれません。
ストーリーの筋は面白さもあったと思います。
壇ノ浦で滅んだ平家の呪いが解けて行く化け物の犬王という見せ方も素晴らしかったと思われます。
個人的には、素晴らしい映像が展開していただけに、残念な感想になってしまいました。
3種の神器の刀のカタカタ
映画は面白かったです。
見落としたのかもしれませんが
作品の重要な起点だった3種の神器が、
結局、平家の呪いが解ける度に
どこかにある3種の神器の刀が
カタカタしてたけど、結局なんもなかった。
なんか置いてけぼり。
犬王が、足利をうけいれて、友魚は最後まで
抗った。この違いがわからなかった。
その上でのラストシーン。
ちょっと腹落ち悪し。
甘さが残る
室町時代に実在した猿楽師の犬王(アヴちゃん)。本作が創造した琵琶法師の友魚(森山未來)。2人の異才の友情を軸にしたロック絵巻。
犬王のキャラクターのデザインは独創的で、その身体の変化とともに声を変えたアヴちゃんの演技は出色。
森山未來も巧かったが、あれほどの身体表現力を持つ役者を、声優として起用するのが果たして正解なのか、疑問だった。
意見が分かれる作品だと思うが、僕は評価を下げた。
まず、脚本が甘い。
冒頭で語られた平家の怨念、草薙の剣(三種の神器の1つ)や、犬王の父が取引をした目が光る面など、回収されない伏線が多すぎる。
特に面のことも含めて、犬王の父のことは、“犬王が犬王となったこと”に深く関わっているはず。あまりに説明不足ではないか。
また、彼は面と取引して芸を極めたはずなのではないか?この点も描かれないと、彼が滅びたことの意味も理解できない。
さらに言えばラスト、足利義満の前での舞台について、犬王は、“比叡座として”招かれているのもよく分からない。犬王は犬王として(比叡座とは別のものとして)活動してきたのではないか。
その足利義満の前での舞台では、犬王と友魚は共演するが、それまでの活動は別々でおこなっていたはずだ。なぜ、最後は共演することになったのかも分からない。
このように、説明すべきことが説明されず、また、伏線が回収されず、その結果、ストーリーから得られるカタルシスは減退してしまっている。
いや、そんな細かいことは気にするな。
本作は脚本ではなく、演出で観るべき作品だ、という主張もあるかもしれない。
見どころは2人のライヴシーンだ。
当時の技術的に出来るであろうことから想像した演出は、びっくりするようなアイディアに満ちていて楽しい。
ただ、なぜエレキギターが鳴るのか?
または音階については邦楽のもので作曲することはできなかったのか?
もちろん、難易度も上がるし、観客にとって親しみやすいものにはならない可能性はある。だが、“日本土着のグルーヴ”をロックやポップスと融合させた前例は、決して少なくない。
音楽は、本作のキモだ。もう少し深められなかったか。
さらに問題は、エレキギターの音を入れ、西洋音楽の音階で作った結果、あまりにもクイーン、というか映画「ボヘミアン・ラプソディ」に似過ぎてしまってはいないか、という点。
リズムも(ドンドンパッ)、ライヴでの使われ方も(観客と一緒に手拍子)、クイーンのWe will rock youにそっくりな曲があった。これでは「パクり」と言われてもおかしくはない。もう少し距離を取るべきだと思う。
犬王が、芸が上達するごとに身体が変化するという設定は、手塚治虫の「どろろ」に似ている。ここも説明不足で、なぜ芸の上達とともに身体が変化するのか、わからない。彼が、あの身体で産まれてきたのは「目が光る面」の仕業で、それは犬王の父の芸の技術と引き換えだったはずだ。
彼の身体が変化するとともに、父親の芸は下手になっていった?(そう見えなくもない場面もあった)だが、もしそうだったとしたら、「目が光る面」は報酬を得ていない、ということになる。やはり、ここも設定が甘い。
脚本でも演出でも、本作を貫くのは「名前(や名誉)を与えられたこと(正史)」と「自分の名前は自分で名付けること」の対比と言っていいだろう。
この対比は分かりやすく表現されていたと思う。
ジョーカーに見えた
映画自体は素晴らしいです。独特な世界観で、音楽もまずまずでした。
しかし、ラストが良くないです。犬王のパートナーである友魚が打ち首になった後、犬王が足利吉満に体面する時、上げた顔はジョーカーのように見えました。
犬王は足利吉満に従ったのです。友魚を見捨て、権力者に従う行為は、ジョーカーの行為と変わりありません。その後のシーンも偽善者に見えてしまいます。
映画自体は素晴らしいので、そこだけ少し惜しい作品でした。
めっちゃ良かった。泣いた。
友魚は「俺達はここにいる!」って言って散っていって、
犬王は、守るべきものの為に道化になった。
この作品の何が優しいって、
犬王に投げられていたはずの、罵倒、侮蔑の場面がほぼ描写されず、
友有を失った事を知って絶望したであろう場面を描かず"歴史に残らなかった"っていう表現にしたとこだと思う。
(友有を失った犬王が、ライバルに勝てる筈が無いもん、そうなるわ …っていう無常感は半端ない訳ですが…)
もうね、それに気付いた時ぎゃん泣き。
友魚が「俺達はここに居る」って言い続けてる段でボロボロに泣いてんのに、もう涙が止まる訳もなく…。
友魚はさ、めしいじゃん。
だから「俺達はここに居る」って言い続けられたんじゃあないかな。
「俺達を見ろ」って気持ちもあっただろうけど、
「俺達がここに居て何が悪いの?」って気持ちもあったと思う。
犬王はさ、多分小さい頃から心無い言葉を投げられて来てて、この世は地獄だって思ってただろうし、友有を守らなきゃって思ったんだと思う。
悲しくて、苦しくて、辛くて、やりきれない話だったけど、
友魚のことを、犬王が迎えに来てくれて良かった。
きっとすごくすごく探したんだよね。
めっちゃ泣いた。
辛くて悲しくて、めちゃくちゃに泣いたけど、
映画館から家までの電車の中でも泣いちゃったけど、
やりきれなかったけど、
友魚が「俺達はここに居る」って言ったのを、
忘れない。
って思った。
この映画を作ってくれて、ありがとうございます。
って思った。
映像や歌はよかった
アニメ版平家物語が好きだったことと、せっかくバンド風なら映画館で観たい!と思って鑑賞。
基本的にどんな映画に対しても、好きなところや共感できるところがあるので「見てよかったな」と思うことが多いタイプなのですが、今回は何というか…全く入り込めませんでした…。
多分、歌ってるボーカルさんが好きな人にはとても嬉しいんだろうなと思いますし、実際犬王役の方はとてもハマっていてキャラとしても素敵でした。
ただ、盛り上がるはずのライブのシーンでは歌の尺に合わせて全く同じ映像が繰り返されており、途中で飽きてしまいました。
せっかく動きや映像が綺麗なのでその分勿体ないなと感じざるを得ません。場面のテンポの良さって大事なんですね…。
ミュージカルということもあって、見るというより聴く映画なのかもしれません。
当時の時代の中では斬新で粋なライブ演出なことは確かですが、やっていることは現代のロックバンドとほぼ同じです。
その部分でどうにも真新しさに欠けました。
友魚が京に入って聞こえた音からメロディーを奏でているところや、犬王が見様見真似で踊りを始めて、幾らでも続けることを苦としない姿勢などはその道の人間の才能を綺麗に表現していたと思います。
お話の根幹にある犬王と友魚の繋がりに関してはとてつもないエモさを感じたので、また別な表現がされていたなら気持ちのいい映画になっていたかもしれないと感じてしまった次第です。
レビュー高めだったので楽しかった方が羨ましいです。
自分は乗り切れませんでした。
和風ロックミュージカル
和風のロックミュージカルが中心の映画でした。
人間の動きというか作画が独特なので、恐らく好みは賛否両論で分かれると思います。
自分は昔観てた忍空というアニメを思い出しました。あのアニメの作画に何となく似てる。
(あと変顔した時のGTOの鬼塚先生もちょっと思い出したw)
グロ描写もあるのでグロ耐性がないと観るのきついかもしれません。
自分は犬王の父が爆死するシーンにちょっとだけうっ…っとなりました。
鬼滅の無惨様みたいな事をせんでもええやん…と思ってしまいましたのでそこだけマイナスで。
ジャパニーズミュージカル時代劇
予告編を観ても全く内容がわからない映画。
私が一番好きなアニメ『四畳半神話大系』の湯浅政明さんが監督を務め、多くのレビュアーさんからも評価がかなり高いこともあって、かなり期待しての鑑賞になります。
結論ですが、面白かったけど他のレビュアーさんほどはハマれなかったという印象ですね。湯浅監督ならではの独特な映像表現や色彩感覚、幻想的な演出などは面白かったですし、ストーリーもあんまり複雑でないので理解できて楽しめたんですが、曲が私の好みから外れていたり、ミュージカルシーンのアニメーションに使いまわしが多用されてたのが気になってしまい、ミュージカル映画なのに肝心のミュージカルシーンがあまり楽しめませんでした。
・・・・・・・・・
有名な能楽師の家に生まれたが、その奇怪な姿から仮面を付けられ邪険に扱われていた犬王(アヴちゃん)は、草薙の剣の呪いによって父親と自身の視力をうしなった琵琶法師の友魚(森山未來)と出会い意気投合する。ある時、犬王は自身の奇怪な姿は源氏に滅ぼされて歴史の闇に葬られた平家の無念によってもたらされていると知り、能で平家の物語を広めることで平家の霊魂を成仏させていく。友魚は犬王の波乱の人生を歌にして、彼の名声を広めていく。これまでに無かった斬新な舞や歌で人気を博していく二人だったが、室町幕府の将軍である足利義満(柄本佑)は意に沿わない平家の物語を流布する二人に嫌悪感を抱いていた。
・・・・・・・・・
おそらく本作、源平合戦や能楽などの歴史を知っていた方が楽しめるんじゃないかと思います。
私は学生時代に日本史を履修していなかったので、残念ながらその辺の知識は中学レベルです。実在したらしいが詳細が不明な伝説の能楽師を描く本作、ファンタジー的な要素を多分に盛り込みつつも時代描写はしっかりしているため、ある程度歴史の知識が必要になっています。ストーリー構成自体は結構シンプルだったのであまり知識が無くても十分楽しめる脚本にはなっていたんですが、ところどころ「これ時代背景を理解して観たら面白いんだろうな」っていう描写が散見されたので、そこが私が本作に今一つハマれなかった原因かと思います。
また、劇中に何度も登場するミュージカルシーンに関しても、アニメーションの使い回しが多く、歌があまり私の好みではなかったので、少し残念でしたね。
これは完全に個人の好みの問題なので楽曲を高く評価している方が多くいらっしゃるのも理解できますし、女王蜂のボーカルである犬王役のアヴちゃんの歌唱力は凄まじかったのは感じられました。以前Youtubeの『THE FIRST TAKE』というチャンネルで、アヴちゃんの歌う『火炎』と言う曲を聴いたことがありましたが、男性でも出すのが大変な低音から女性でも出すのが大変な高音までを自在に使いこなす音域の広さと表現力に圧倒されたのを覚えています。本作のミュージカルシーンでもその歌唱力が如何なく発揮されていて、そこは素晴らしかったですね。
私個人としては多少の不満点はありつつ、その不満点を上回る面白さがある作品という印象でした。本作にノレなかった理由の大半が私の音楽嗜好と歴史知識の欠如によるものなので、本作を不満など微塵も感じずに楽しめる方もたくさんいらっしゃると思います。ミュージカル映画はサブスクではなく映画館で鑑賞してこそ輝きます。本作は間違いなく、今、映画館で鑑賞すべき映画だと思いました。オススメです!!
今後に期待
アイデアはユニーク、テーマも深い、映像もすごいクオリティ。今後のサイエンスSARUと湯浅監督に大きな期待を抱かせる映画だった。
ただ、どうしても「あともう一歩完成度が高ければなあ…」と思ってしまうところがある。
シーン単体でみるとどれも鳥肌もののすばらしさなのだが、シーンとシーンがちゃんとつながっていなかったり、全体の構成のバランスが悪かったりする。原作を読んでないのでなんとも言えないが、設定やストーリーに粗が目立ち、脚本が練りこまれていないように見える。
はじめに犬王たちがロックな音楽で演奏しはじめたところが唐突すぎる。いくつか段階を踏んで試行錯誤した上であの形になった、というなら納得できたのだが…。それに、いくらなんでもこのシーン長すぎる。短い同じ曲調がくり返し流れるので眠気と戦うのが大変だった。音楽がテーマの映画なのだったら、もっとたくさんの曲を作っても良かったのではないか。これでは犬王たちが同じ曲ばっかり演奏しているように見えてしまう。
終盤の展開も序盤の丁寧さに比べると雑に感じる。友有座が解散させられる経緯や、そのときの友有と犬王の反応など、それまでのストーリーや二人の性格とつながっていないようで違和感を感じる。
犬王の設定は手塚治虫の「どろろ」そっくり。まあそれはいいとして、犬王の父親は息子を生贄にしたのにその対価を受け取っていないようにみえるし、なぜ犬王が芸を手に入れると悪霊(?)に差し出したはずの犬王の身体を取り戻せるのか、ということに説明が無い(ようにみえる)。
あと、実は歌のシーンのかなりの歌詞が聞き取れなかった。正直、字幕出してほしかったなー。
好みは別れるかも
後半犬王の歌声(歌い方息遣い含めて)が声優のKENNさんに激似で 気になったらそうとしか聴こえなくて 「もう最初から全部けんぬでええやん」というのが1番の感想(個人的嗜好)。…というのはさて置き…平家物語を現代に当てはめた解釈で舞台は室町。ってことでいいのかな?アニメっていつもそうだけどキャストが違ったら評価も違うのかも。話題性が欲しいアニメファン映画ファン以外の観客が欲しいのかもしれないけれど メインキャラは本職の声優を使って欲しい。歌は流石と言えるのかも知れないけれどセリフが滑る。慣れない時代の物語だから余計内容が頭に入ってこない。絵はキレイだったし曲にも合ってたとは思う。でも歌唱部分がくどい。途中路上ライブでは「語り継ぐべき平家物語」感が薄れていたのに ラストで独自の平家物語のパフォーマンスを主張されてもなぁ…沙汰は理不尽であっても説得力はない。もう1度観に行くより円盤買ってもいいかな…と思う程度には面白かった。
まやかしの現世では仮面をかぶる
四畳半神話大系や夜は短しの湯浅監督作品と聞き、見に行った。
森見節全開で台詞回しが特徴的な四畳半と比べて、犬王は光の表現に凝っていた。
その理由には能という劇中劇のシーンが多いこと、そして友魚の盲目にあるように思う。真っ暗な室町の夜に映し出される犬王の舞台。そして友魚の感じる音だけの世界もまた、暗闇の中に僅かな手がかりが浮かび上がる。
ラストのあたりで2つの疑問が残った。
1つ目は、師である谷一や琵琶法師の仲間が必死に守ろうとしても自分の名前を変えようとせず、自分の曲や友有という名前を守ろうとした友魚が、なぜ最後は友魚という名前で死のうと思ったのか。
死後に名前が違うと探せないから最初に教えた友魚という名ということなのだろうか?それとも自分の原点は犬王と最初にあったときのように純粋に音楽を楽しみたいからという意味なのだろうか?
2つ目は、犬王がプライドと自分の曲を捨て帝に取り入ったこと。そして死後に友魚を探し当てたことだ
命は助かっても自分が築きあげたものを捨て、自分が感じるものとは異なる舞を踊るのは苦痛ではなかったのか?
この世は仮面、まやかしのようなものといった意味合いのセリフが劇中にあったが、まやかしの現世は仮面をかぶり帝のもとで能楽師として生き、そこから開放されたあの世では本心を出せる友魚と舞い歌うという意味だろうか?
今後ネット配信されたら見返して考察してみたいと思う。
全体としては少し人を選ぶ作品なのかなと言う印象。
説明的なセリフは少なめで、いきなり場面が変わり数年の時が経っていることも度々ある。また、舞台のシーンが多いが歌詞がやや聞き取りづらく置いてきぼりにされることもある。
舞台の音楽やダンスもエレキギターが聞こえてきたり、ブレイクダンスから新体操やバレエなど、いやありえへんやろ!とツッコみたくなる人もいるだろう。
ただ印象に残る音楽や映像も多く、刺さる人もいるのではないか。私は腕塚の曲と鯨の演出、そして無音で花吹雪の中を舞う犬王の映像がとても良かったと思う。
100分切ってるとは思えないほど退屈
女王蜂がとても好きで、湯浅政明監督も嫌いではないので期待して見に行った。
原作には触れていない。
形は違えど、等しく権力欲に虐げられた2人が出会うところまではとても楽しめた。
仮面越しに、もしくは聴覚で風景を感じ取る描写も、斬新とは思わないが効果的だった。
その後が最低。
突然始まるロックフェス風の演出、はまだいいとして…
琵琶と太鼓しか映像にないのに鳴り響くギターとドラム…ギャグですか?
映像には正解がないので、どんなに荒唐無稽になろうとも、作中の人物の心象風景として受け取れる。
しかし音と映像が組み合わさり、その風景に人々が熱狂する描写まで入れたら、それは作中の現実の風景となる。
そこでギターがなり、ドラムが入り、なのに琵琶や太鼓しか並んでいないのは猛烈な違和感でしかない。
アニメーションの持ち味は、実際のライブや舞台の映像を非現実の力によって超えていくところにあるはず。
現実にあり得そうなライブ映像や大掛かりな舞台装置の描写をして、音楽はちぐはぐというのでは明らかに現実以下。
違和感を覚えさせ没入感を剥奪するような、何がしたいのかと疑問しか持てない、的外れもいいところな演出のシーンが延々と続き、苛立ちさえ覚えた。
そもそも曲も古臭く、革新性がないのでもう何を見せられているのか…
いいのはアヴちゃんの声だけ。
そして脚本も、虐げられたものの生き様、芸事を極めることの苦悩などを浅く行ったり来たりするだけで、人物の関係性や内面などに踏み込んでいかないのでペラッペラ。
主人公たちがのし上がって行く過程や苦悩も何も描かれないため、曲を捨てろと言われて抵抗することにさえ共感出来ない。
強い絆で結ばれる過程の描写がないので、友魚は途中犬王を利用して金儲けをしようとしているようにしか見えず、友を守るために曲を捨てた犬王、抵抗の末斬首される友魚と悲劇的な最後にも腑に落ちるところがない。
人間臭さを感じられたのは犬王の親父くらい。
後半は終始違和感と退屈以外何も感じられず、時間を無駄にしたことと、一流が揃ってもこんなものができるという悲しみが心に沁みた映画でした。
世(政治)に対する音楽
平家が滅んだ後の時代、大衆の娯楽として繁栄する音楽(能)を通して描く娯楽の在り方をロックにのせ描き切る。
自由を求め、政に対しても自らの音を奏でようとする。
どの時代にも魂の叫びの如く言いたいことを歌に乗せることで大衆の心を掴むが…
いまに通じる思いや感性を感じられ、そしてその残酷さも描き切ったことが心を動かされました。
考え抜かれたエンターテイメント作品!
スタッフが湯浅監督、野木亜紀子さん脚本、大友良英さん音楽、キャラデザは松本大洋さん。
「これは良い作品にならないはずない!」と楽しみに鑑賞。
本作と繋がりを持たせてあるアニメ「平家物語」もとても良かったのでその点でも期待大だった。
観た後の感想。
これはとても良いエンタメ作品だと感じた…!!すごいぞ。
まず冒頭からスピード感あるアニメーションと演出が格好良くて作品に引き込まれずにはいられない。昔話の絵本のような絵柄も味があるし、湯浅監督の作品は「アニメーション」という形じゃないと表現できないよなあ、といつも画に惚れ惚れしてしまう。
壇ノ浦で生きる友魚は平家の滅亡で水底に沈んだ三種の神器の捜索に巻き込まれたことで父親を亡くし、自身も失明してしまったことで復讐の旅に出る。
そこで彼は琵琶法師と出会い、自身も琵琶法師の道へ。
師となった琵琶法師と京に辿り着いた友魚は、申楽の家に異形として生まれた犬王と出会い、一緒に平家の亡霊たちから聞いた物語を新しい申楽の形にして人気を博していく……という物語。
新しい形の友魚の琵琶(?)の弾き語りが始まった時、「あ、これは申楽を現代の音楽ライブに見立ててるんだ」と理解。
観客を煽るし、コール&レスポンスさせるし、手拍子やこぶしを振り上げるよう促すし、観客とステージの間の仕切りスタッフがいるし、もう完全に現代のロックフェス状態。笑
そして犬王の謡と舞いももう完全にステージのショー。
またそのステージを丸々全部見せるので、もう映画を観てるというよりも、ライブビューイングしてる感覚。
あの感覚はちょっと面白かったな。
そして、犬王の声は歌唱パートも含めて女王蜂のアヴちゃんがあてているんだけど、これが本当にすごい。
観終わってみると犬王役はアヴちゃんしかいなかったと思う。
命を削って乗せているかのような切なさと迫力がある。
あれは劇場で聴くのが良い…。
そう、本作はあのライブをやりたかったのだと思う。
あの時代設定で、アニメーションで、だからこそのあのライブを。
そういう意味で本作は映画であり、ライブ映像でもあるのだと思う。
能楽(当時は申楽)を私たちがとっつきやすいロックのライブにしてしまった。
作り手の想いを詰め込んだ作品でありながら、最大限エンターテイメントにしようという気合いを感じる。
今回の脚本の野木亜紀子さん、社会問題とかシリアスな主題を誰が観ても楽しいエンタメとして描くのがめちゃくちゃ上手い方と認識しているんだけど、そういう意図もあっての起用だったのかなあと色々考えながら観ていた。
あと野木さんといえば、社会的な弱者や、世間から認知されなくても懸命に生きる、名もなき人々へ視線を向け続ける方という認識もあるのだけど、そこも今回友魚や犬王に受け継がれていると感じた。
平家の沢山の魂から物語を拾い上げようする2人の眼差しがとても良い。
そう、そして切ない友魚と犬王の友情も良かった。
犬王については資料が残されていないらしいけど、本作はそれについての歴史の一解釈としても面白い。
あと犬王の境遇は完全に「どろろ」オマージュだったよね。ライブシーンはQueenオマージュっぽいのもあったし、色々オマージュ探しも面白そう。
このともすれば地味になりそうな鎌倉時代の文化の話をこんなエンターテイメントにした作品として拍手喝采。
楽しい劇場体験だった。
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