犬王のレビュー・感想・評価
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躍動感溢れるサウンドとアニメーションに感動します
古風な絵柄にビジュアルバンドのような音楽を織り混ぜた、一見ミスマッチに思えるような組み合わせがなぜか目新しさを醸し出していた。
ただ抽象的な表現が多すぎるせいか観客を置いてけぼりにしてる感がある。
映像、音楽ともに臨場感があり話が分からなくても楽しめると思う。
テーマが何か、何を楽しんでほしいのかわからなかった。
これは、「ファンの人は楽しんでください」という映画だったかな。演出や映像は凄いのはわかる。わかるけど、観客に何を感じてほしいのか理解できなかった。つまり自分は楽しくなかった。
一応ストーリー的なモノはあるんだけど、主人公に感情移入してほしいのか、世の無常的な権力争いの愚かさみたいなのを感じればいいのか、さっぱり何も伝わってこなかった。というより伝えようとしている映画ではなかったかなと。
「犬王一座のライブPVです」と言い切ってくれたら、凄い演出ですなぁ(音楽の好みは分かれると思うので好きな人はどうぞ)って思えるのだが、これを「映画として楽しんでください」では無いよなぁと思いました。
画が好きとか、演出の湯浅節が好きとか、音楽提供者のファンとか、原作好きな人は楽しめるんじゃないでしょうか。それ以外の人はあまり楽しめない映画だと思います。
熱くロックな琵琶法師
南北朝時代の実在の能楽師「犬王」を主人公にした、ロックオペラアニメ。音楽のモチーフはQUEENなのかな。
呪が解けていく過程は「どろろ」を想わせる。
和風な作画テイストは「かぐや姫の物語」に共鳴している。
新感覚ロックミュージカルアニメーション炸裂。
TVアニメ版平家物語は視聴済みです。
個人的に好きなスタッフ陣が集結した作品だったので、とても楽しみにしていました。
感想
想像以上にミュージカル調のアニメ作品で、とても楽しかったです。
・物語構成
平家物語の派生作品なので、かなり硬派で重たい史実重視な作品になると思っていたので、今回の明るく楽しい現代的な和製ロックミュージカル調の作風は意外でとても楽しめました。
また、犬王と友魚の友情物語としても魅力的で互いに支え合っている雰囲気が猿楽の場面から感じられて微笑ましかったです。2人の異端児の成り上がり物語だからこそ、あのラストはとても衝撃的で辛かったです。しかし、現代における平家物語の伝承の仕方について考えるとかなり納得の出来るラストだったので満足しています。
・ライブシーンについて
今回の猿楽の演出が完全に現代のライブ演出を取り込んだ表現になっており、時代感とのギャップが狂っていて楽しかったです。プロジェクションマッピングの元祖的映写背景、ライトアップの演出などの現代演出とQueenの様な奇抜なロックバンドスタイルが終始楽しく、とても爽快でした。手拍子を求めてくる場面では、一緒に手拍子をしたくなりました。
・声優
今回の声優陣は女王蜂のアヴちゃん、森山未來さん等の本職の声優さん以外の方がメインキャラクターの声を当てられていましたが、とても自然に観れて驚きました。皆さん本当に素晴らしかったと思います。
総評
とても楽しい新感覚和製ロック×ミュージカルアニメーション作品。猿楽の演目内容と物語進行状況がリンクする演出はお見事だったと感じた。
肝心のクライマックスで盛り上がれない退屈感
作り手もキャストも結構有名で良さそうな人選なだけに・・・・、期待し過ぎてしまいました。前半の半ばからテンションが下がっていき、クライマックスでは退屈で眠くなるという映画。正直言って、つまらない失敗作だと感じました。
設定が明らかに手塚治虫の名作「どろろ」なんですが、オマージュなのでしょうか。
序盤はそこそこ良かっただけに、惜しい。
のちに犬王の相方となる友魚が、盲目の琵琶法師になる過去のエピソード。奇形に生まれて孤立無援の犬王が、自由な舞を踊り、生を謳歌する華麗な姿。「この先、どうなっていくんだろう?」と、ワクワク感が高まる良いオープニング、という印象でした。
ところが、それ以降は引き込まれるような、グッと胸をつかまれるようなシーンがなかなか出てこない。心に響くような名場面が無いまま、時間だけが長く進んでる事に気づいて唖然。
この映画、悪い意味でヤバいかも・・・と不安になってきました。
後半になると、もうストーリーとかよりも、長いフェスティバルそのもので魅せる事を主体としている感じ。その肝心の楽曲が長い割に単調で、魅力が足りなくて、やたらと冗長過ぎる。肝心の歌詞も聞き取りにくくて、何を歌ってるのか分かりづらくて、字幕が必要なレベル。歌詞が全部しっかり聞き取れたという観客は、殆どゼロだと思われます。
映像の中だけは凄く盛り上がっているように見せているのだが・・・・それを観ている自分は全く盛り上がれず、共鳴が出来ないという困った事態になってしまいました。
監督はここを一番の見せ場のクライマックスとしているのだろうけど、それを効果的にやるのであれば、ヒットチャート上位に毎週入るほどに魅力的な新曲を持ってくる必要があった。しかし、それが出来てないので、なかなか引き込まれない。単調な楽曲をえんえん長く聴かされると、だんだん苦痛も生じてしまいます。まだ続くの・・・、早く終わらないかな・・・と思うばかりで、終いには眠気が生じてきました。
私は筋金入りのロック好きなので、ロックオペラ風の大胆な試みは大賛成なのですが、映像に出ている和楽器の音が小さかったり、かき消されているのが勿体なく感じます。和楽器も大音量で積極的に取り入れる方向で、この映画ならではの独自性を感じさせる楽曲を作り上げていたら、斬新さも魅力も増して良くなったのでは・・・と思いました。
このライブ・シーンの展開の仕方は、映画「ボヘミアン・ラプソディ」を意識したのかもしれないけれど、これでは音楽そのものに今ひとつ魅力が足りないため、無理があり過ぎました。
それよりはストーリー展開の方を充実させてほしかった。
主演の2人、犬王と友魚がお互いに魅かれた部分が何処なのか、そういう大事な部分での描写が足りないので感情移入がしにくいし、物語の本筋から外れた話に時間を使い過ぎてる気もして、どうにも世界観に入り込めずに、退屈さが増しました。
そして、物語の最後のオチ。
ネタバレは避けたいので言及はしませんが、これがまた酷いもので、呆れてひっくり返りそうになった次第。最初は興味深く見られた犬王の独自な生き方が、最後の土壇場で一貫性の無いものに変えられてしまった失望感。
アニメ映像としての視覚的な部分では見事なシーンがあったし、抜粋としてなら良いシーンもあるので、楽しめる要素はそこそこあるのだが、この映画で何を伝えたいのかという本質的な部分で、ちょっと違和感を感じたし、物足りなさを覚えたまま、モヤモヤした気分だけが残りました。心に残るものが無く、この作品を通して何かを伝えたいと言う映画としてのメッセージ性は薄いと感じました。
映画館に行くと、周囲の観客の反応を肌で感じる事が出来るのが、メリットのひとつです。上映中、観客の数が多かったにしては、全体に余り盛り上がってない空気が伝わり、終わった後の様子も何処か陰鬱な感じ。本当に面白かった映画の場合、終演後に観客から明るい笑顔や高揚感が多く見られますし、初日に観た「トップガン マーヴェリック」では、エンドロール後に大勢の観客から大拍手が巻き起こった程です(私も凄く良い映画だったので、一緒に拍手に加わりましたw)。この映画ではそういうのが見られず、イマイチ微妙な映画を観た後、という感じの虚ろな空気感でした。この映画、原作は未読なのですが、監督の料理の仕方がダメだったんでしょうか。感動が得られないし、とても人にはオススメ出来ません。
あと蛇足ですが、隣に座っていたオタク風の男性客、鼻息がうるさくて、最悪でした。静かな場面になると、この客の鼻息だけが大きく「フースー、フースー」聞こえて、うるさ過ぎ。今までの人生で、誰からも注意されなかったのか?それとも、注意されても人の話を一切聞けない人?他にも混雑してるのに通行の邪魔をして平然としている40代風カップルとか、普段は余り見かけない変な客が目立ちました。この映画に出ているキャストのファンなのでしょうか?この映画館は比較的マナーの良いお客さんが多いのですが、本作では客層もちょっと気になりました。
『たけき者も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ』
あえて女王蜂のライブやアヴちゃん単独のゲストライブに行ったことのある人間としての目線で語ってみます。長い。
初めてアヴちゃんのビジュアルを見て、歌を聴いた時。まさに、この映画の中で観衆が犬王に対して抱くイメージ、そのものでした。
今まで観たことがない。
斬新な音楽。
自然と体が動く。
誰かにあの人のことを話したい。広めたい。
友達を呼んで、また観に行きたい。
これはアヴちゃん側だけでなく、琵琶法師役の森山未來氏にも言えることだと思います。
実際に森山氏のダンスを観た友人が、しばらくの間は寝ても覚めても森山氏の話しかしていなかったので、友魚に心酔するお客さん達に対してもお気持ちお察しします、と言いますか。
だからこそ、この話のラストの非情さが殊更によく響く。
どんなに隆盛を誇っていても、いずれは潰えて滅びていく。
この実績を積んだキャストの抜擢があったからこそ、キャラクターに厚みと存在感が出て、より無慈悲なラストシーンとの落差を実感した次第です。
また観に行きたい。
琵琶がリフを刻み、太鼓のビートに合わせて犬王がシャウトする
将軍義満の御前で演じるパフォーマンスは、まさに圧巻。アニメーション、時代劇、ミュージカルの全て要素において、新たな可能性を見せつけてくれる。体操、バレエ、ヒップポップダンス、全てを取り入れたダンスで観客をノックアウト。
女王蜂のアヴちゃんと森山未來の二人の演技には驚くばかり。二人とも少年の声色から自信に満ちた大人の声まで演じ分けている。アヴちゃんは、本職がヴォーカルだから歌が上手いのは当たり前だけど、森山未來も負けていない。この二人は10年来の友人だというから息がピッタリ。
幻想的な中世絵巻の世界で、友魚の琵琶がリフを刻み、太鼓がビートを鳴らす。犬王が踊りながらシャウトする。拳を突き上げそうになった。
目が見えぬとも、目に見えぬとも
犬王?室町時代?能楽?琵琶法師?森山未來?
謎が多すぎる作品だが、この謎は深入りしないでおこう。という訳で、ほぼ前情報なしの興味本位で鑑賞。蓋を開けても不思議でいっぱいの映画で、同時にめちゃくちゃスゴい映画だった。これは...スゴい!
なんだこれは!?!?何を見せられてるんだ!?という驚きと謎いっぱいに包まれた冒頭。その未だかつて無い感覚がとても心地よく、不思議と世界に引き込まれていった。映画と言うよりも、アートと言った方が近いだろうか。踊り・森山未來、ということで実写でして欲しかったなという気もしたが、アニメならではを最大限活かしており、にしか出来ないことを思う存分発揮している。特に、目の見えない描写はまさにアートであり、アニメだから表現できるものだと思う。
照明、カメラワーク、演出がかなり狂気的であり、どのシーンも超が付くほど美しい。ここまで室町時代頃の作品で綺麗、美しいと感じたことは初めてだ。この時代的に照明の色とか点灯の仕方とかには少し違和感を感じたものの、ライブのような臨場感をこの時代で体感できるのは衝撃的。単純に映画館で放映する作品としての質が高すぎる。これは映画館で見ないとダメです。必ずです。
そしてなんたって、音楽。
あまりのカッコ良さと迫力に、誇張表現では無く本当に開いた口が塞がらなかった。何故ここまで魅力的なのか。令和時代の今聴いてもそう思うのだ。当時の人達はどう感じたのだろうか。ショック死ならぬ衝撃死をした人もいるのではなかろうか。兎にも角にも、音響・ハーモニー・メロディ・楽器が文句なしのパーフェクトであり、IMAX上映されていないことが悔やまれるほど良かった。心がこの音楽を求めていた。身震いと鳥肌が止まらない。とんでもないぜ、全く。
ダンスもまた恐ろしく最高だし、声優陣も天才的。音楽全面的な映画であるにも関わらず、それ以外の要素も丁寧に作り上げられており、約100分間余すことなく「体験」することが出来ました。室町時代について、音楽について、なにより犬王について何も知らなくともハマる人は大ハマりするであろう作品。か・な・り人を選ぶ、中毒性の高い映画だと思う。少なくとも私はかなりハマってしまいました。
音楽は世を変え、人を変える。計り知れない力を秘めているのが音楽である。そして、人は見かけで判断できない。誰にだって欠陥はある。だが、その欠陥があることで見えてくるものがあるかもしれない。こんなにも深いテーマなのだ。ね、すごいでしょ。
本当に最高の映画体験をありがとう。
世界に誇れる日本の文化。もっと評価され、外国でも多くの人に見ていただきたい。もちろん、日本人も。言葉を失う衝撃的で狂気的な凄まじい作品。結構私の人生に多大なる影響を与えるであろう作品でもあった。頭から離れない...。ぜひ、劇場で。
演出が素晴らしい怪作!後世に残る作品!
アヴちゃんの歌声あってのミュージカルアニメ!
劇中で鼻歌が流れた時のゾクゾク感
音響の良い劇場で堪能して欲しい。
音は歌だけにとどまらない!
演出とアニメとは思えない日常の音がリアルで素晴らしい。
水に潜る、被る、拭う、編む、引くなどの音
普段耳にしている音がアニメの中に完全再現されている。
いったいどうやったらこんなに素晴らしい音を収めることができるのか。
音の深みがあることで、作画に重さや質感が加わる。そこにあるものの輪郭がハッキリする。
さらに素晴らしいのは人の質量を感じる作画。
目の見えない人の視覚を色やデザインで表現する天才的発想。
人体を理解した構図の素晴らしさ。
五感で感じるアニメ映画は本当に久しぶりな気がする。
ストーリー展開的には中盤まで一気に進んでいく。
中盤から終盤にかけてはライブタイム
まるでライブ会場に来たかの如く、次はどんなステージが観られるのか、アヴちゃんの声がもっと聞きたい!と犬王のファンと同じようにワクワクしてしまう。
逆に従来の琵琶法師の厳かさや浮世離れした傍観者の立場から、一気に俗世に降り立つ感じなので、好き嫌いは分かれると思う。
私は若干距離を取りながら眺める、ライブでは後ろの方で手拍子を送ってマイペースに応援するタイプだと分かった。
最前列で「きゃー!」と言うタイプでないことが分かった。
話が逸れたが、終盤では犬王や剣の秘密も語られる。
話的には王道から逸れず、丁寧に進行していく。
アニメの平家物語を鑑賞していると思うところが多々あって、序盤から号泣してしまうこと間違いない。
アニメや映画は虚構の世界。
想像が想像を生み出す世界だ。
まだまだ表現の可能性が広がっている。
新鮮な感動を受け取れることが最高に嬉しい。
是非、劇場でご覧下さい。
これはライブビューイング。得られるものは高揚感。
犬王と友魚が作り上げるパフォーマンスは、どれも心も体も躍りだす。
これは映画というよりもライブに行ったような高揚感が得られる作品であった。さながらライブビューイングのような作品だった。
聴衆からのレスポンスを求めるパフォーマンスは当時の人々にとって斬新で新鮮なものだったようである。
現代に生きる私にとっても、コロナ禍でライブなどでの声出しが禁止されている中でこの映画に触れることは新鮮な体験となった。
感情を爆発できるような機会が減少してしまっている中で、大きな声を出し、感情を爆発することができるようなライブに行きたいなと思わせてくれる作品だった。
まさかアニメーションでこのような気持ちにさせられるとは思っても見なかった。
このような気持ちにさせられた大きな要因は、犬王役のアヴちゃんの圧倒的なカリスマ性が大きいと感じた。
これは、竜とそばかすの姫における中村佳穂に匹敵するものだなと感じた。それくらい素晴らしいものだった。
一体感が・・・ない
少しだけ難しくて、思ったよりも楽しむことができなかったというのが率直な感想。
アイデア、個性的な作画・表現、音楽、エレキ、琵琶、等々・・・ひとつひとつ個別に捉えると優れていたのかもしれませんが、個人的にはそれらがどうもバラバラにしか思えなくて、映画として優れていると感じることが困難でした。
ダークな内容ながらストーリーは結構いいかもと思ったので、いろいろと残念でした。まぁ見る前から相当の期待をしていたので、「それほどでも・・・」という勝手な感想です。
鎮魂と呪と芸能のエンタメ
古典芸能であり、現代アートであり、総合芸術でもあり、まさにエンターテイメント!ニュー平家物語とでも言うのかな。斬新で良かった。
猿楽(能)とか琵琶とかの伝統芸能からロック(まさかのQUEEN!)、タップダンス、体操、フィギュアスケートなどの現代の芸能が融合し、さらに異形のモノと生者と亡者が混ざり合う、何とも形容できないモノ。ライブを観てるかのようで楽しかった!いや、舞台を観てたのかも?
そもそも芸能なんて鎮魂やら魔除けやら豊作やら降雨などを祈って生まれた庶民のモノだったのに長い年月が経って「伝統芸能」という取っ付きにくいモノになってしまっただけで本来はこういう形のモノだったんじゃないかな。
音楽や表現も勿論だけどそれを形にしたアニメーションも細部まで繊細で儚くて、でも泥臭さもあって圧倒的。美しかった。
友魚のライブシーンは森山未來の実写では?と思うくらいに生々しい。不思議なことに友も呪いも異形の姿も失った犬王があまりに凡庸で、美しさとは歪さと紙一重のところにあるのかもしれないな、などと思ったり。
ちょっと取っ付きにくいところはあるけど何だか凄いモノを観た!みたいな感じでした。
何て?
2022年劇場鑑賞123本目。
平家に関する事を犬王と自称する踊り手と、琵琶法師が組んで南北朝時代に歌い踊るという話。
踊りと音楽と演出はすごいんです。でもストーリーらしいのがあるようなないようなという感じでほとんど歌のシーン、そして多分歌のシーンで色んな情報が盛りだくさんなんでしょうが歌い方が独特すぎて何を言っているのか8割聞き取れず、字幕なしで外国の映画を観ている感じになってしまいました。結局よく分かんねぇなぁ・・・と思っている間に終わってしまいました。残念。
何故?
何故エンタテインメントが産まれるのでしょう。
舞台劇とか、音楽とか、ダンスとか。
好きなだけなら、一人で趣味でやってりゃいいんですよ。
何も、批判やら低評価を受けるかも知れない、公の場に立つ事は無いんですよ
なのに、何故客前に立ち、他者に評価を求めるのでしょう?
多分、見てくれた誰かに、何か大事な事伝えるのが目的なんでしょうけど、
ほら。劇中で犬王が舞い、ステージを終える旅に、足が、手が、彼の身体が正常に戻って行くじゃ無いですか。
友魚は自らの生存意義をロックで貫こうとする訳じゃ無いですか。
人前に立つ理由って、「観客のため!」
てのは立前でね、欠損を補いたい自分が居るんですよ。
どこの誰でも無く、自分のため、自分を救うための物語なんですよ。
差別を受けて来た自分。何にも恵まれ無かった自分を救済する物語。
自分のために歌い踊り、死んでも信じたものを信じ続ける。
いいんですよ、こう言うのが。
天才と言われながらも、上手く評価されない作品も有りますよ。
自己救済の物語が湯浅政明ってのが良いんですよ。
裏方がガッチリ支えるから演者が引き立つ!
裏方とは作品世界においては、ライブにおける友有座の舞台演出に携わる人々であり、その観客となる市井の人々です。
特にその不特定多数のファンの発言、動作やその描写がモブキャラのそれではなく、演者と一緒に魂を揺さぶる大切な一要素となっております。
ファンタジー特性強めなのにライブ感、没入感が凄まじいのは彼らのの生き生きとした精細かつ丁寧な描写に他ならないのでは、と感嘆しました。モブキャラ一人一人の境遇や人生が透かして見えて来るみたいな感じです。
また、映画作品として裏方の実力を感じざるをえなかったのは映像はもちろんのこと、その脚本、演出です。
時代錯誤とも言えるぶっ飛んだライブ映像(褒めてます!)が案外な尺をとっていてますが物語として成立させ、骨太なテーマ(そこに有ることの大切さ、魂の救済など)を少しもブレずに展開する脚本は、丁寧な伏線回収も含めて高く評価したいです。ちょっと上から目線で申し訳ない!
いろんな気づきがあってネタバレ投稿して共感を得たいですけど、まずはこの素晴らしい物語をぜひ劇場で沢山の方々に鑑賞してもらいたくてまずはレビュー差し上げました。
本当に素晴らしい作品です。
では。
同じ音楽をギターの音で無く琵琶でやればかっこよかったはず。実際画面...
同じ音楽をギターの音で無く琵琶でやればかっこよかったはず。実際画面上では琵琶持ってるんだし。
あと歌詞、を見える化して欲しかったかも。聞き取れないからと聞き逃すには勿体ない。
やっぱりどうしたって毎回フルコーラスっていうのはしんどい。もっと没入させるための工夫があったんでは無いのかな、惜しいな。
ロックショー
栄枯盛衰の芯と歴史背景はテレビアニメ『平家物語』と通じつつも、どこか手塚治虫の『火の鳥』っぽくもあり。
室町時代初期、南北朝の対立が続く三代将軍・足利義満の治世(たぶん義満が将軍に就いた1374年~犬王没1413年のどこか)で、『どろろ』の百鬼丸っぽい犬王が、『あまちゃん』大友良英さん作曲・女王蜂アヴちゃん作詞のロックンロール・ミュージカルショーをやっていました。
ノリノリな音楽が心地よく。
『ちびまる子ちゃん―わたしの好きな歌』の湯浅さんパートと、『夜明け告げるルーのうた』のダンス、『夜は短し歩けよ乙女』の詭弁踊りなどが頭をよぎりました。
音楽シーンが連続するため、人によっては単調に感じるかもしれません。
ライブハウスでのロックショーがそうであるように、若干歌詞が聞き取りにくく、日本語字幕上映の機会があれば観直したいです。
発声しなくてもいいので、頭を振って手を叩ける感じでの、無発声応援上映またはシネマティック・ライブが観たいななどとも思いました。
昨日の世界。この映画は忘れられた無念を物語る。
※「◎」から色々とネタバレ注意。
湯浅正明監督。あなたの作品を信じて観てきて、本当に良かったと思います。
正直な所、「日本沈没2020」ではあまりにもあまりにもで悲鳴をあげました。個人的には、今回の作品で決別も覚悟の上で臨みました。
松本大洋のキャラデザ、私の大好きな女王蜂のアヴちゃんのミュージカルアニメというだけで期待は凄くあったのですが、逆に「これでダメなら本当にダメだろう」とも思ってしまっていました。
それだけに、期待以上の作品過ぎて、もう映画が終わってからしばらく涙が止まりませんでした。
言葉にすると途端色褪せてしまうため、まずは観てほしい。
湯浅正明監督のイマジネーション世界と松本大洋の絵が動く感動、アヴちゃんと森山未來の変幻自在な演技と歌唱が、未だかつてない夢のような映画体験を与えてくれること間違いなしです。
とにかく犬王と友魚が動いて、歌っているだけで、私は凄く楽しくなっちゃいました。
◎感じたこと
「グランドブダペストホテル」
「犬王」を観終えて、真っ先に思い出した作品がこの作品だ。この作品はシュテファン・ツヴァイクの著作に献辞が捧げられたものだ。ユダヤ人で平和主義であった彼は世界大戦時の反ユダヤ主義の対象であり、母国からの亡命を余儀なくされた。そして、ナチスが認めない彼の書物は葬られ、彼はヨーロッパの未来に絶望しこの世から去ってしまった。こうして、現代ではほとんど忘れ去られてしまった作家となった。「グランドブダペストホテル」は、正に彼の著作に出会ったウェス・アンダーソン監督が架空のホテルマンの生涯として物語り、その物語が現代に伝えられるという入れ子構造の映画になっていた。
「犬王」は正に、現代においてほぼ記録も残っていない、忘れ去られてしまった猿楽師の犬王の物語り。そして、犬王が語る物語はその時忘れ去られようとしていた平家の無念の声を聞き伝えるものであった。しかし、悲しいかな、室町幕府の王道から外れた邪道たる犬王と友有も例外ではなく、その魂の叫びは無念に終わってしまった。
いいや、違う。
彼らの無念は確かに届いた。古川日出男が本を書き、それを湯浅正明が受け取り、この映画が生まれ、それは私たちに届けられた。
そして、それは単なる歴史的理解に留まらず、現代の文法で猿楽を表現する事で、かえって忠実であること以上の人の心に伝える表現の力にまで昇華していることが、本作の何よりも素晴らしい点だ。この映画の制作陣は、正に劇中の犬王のごとく現代的能楽の可能性を作ったのだ。
そして、これでは終わらない。犬王と友有の物語は私たちに継承された。表現は、無念は、物語は、これからも継承されていく。こうして、彼らはどこまでも生き続ける。だから、この映画のラストはハッピーエンドに違いないのだ。全ての物語が未来のハッピーエンドに続いていきますように。
我が名は犬王!
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