劇場公開日 2022年5月28日

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「外連味のある舞台だけでなく、その装置までもきっちり見せてくれるところがすごい一作。」犬王 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0外連味のある舞台だけでなく、その装置までもきっちり見せてくれるところがすごい一作。

2022年8月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

湯浅政明監督の『DEVILMAN crybaby』(2018)を彷彿とさせるような、友情とも愛憎とも、何とも言いがたい男同士の関係を描いています。犬王という能楽師は実在したとのことですが、その名前と能楽の発展に寄与したらしい、という以外はほとんどその素性が知られていない人物です。それだけに、物語を膨らませる余地が大きいと湯浅監督は考えたのか、驚く程創意に満ちた映像と音楽で満ちています。

異形の者でありながら、人々を惹き付けて止まない魅力と超絶的な身体表現能力を備えた犬王というキャラクターの存在感は、アヴちゃん(女王蜂)の見事な声によって裏付けられています。確かに力強いがどこか心に引っかかりを残すような歌声がむしろ、生と死、栄光と破滅の瀬戸際を敢えて選んで歌い、躍る犬王の姿と完全に溶け合っています。

主人公の犬王と友魚(森山未來)のパフォーマンス場面は、時代考証を度外視した、現代のライブ会場そのものという描写なんですが、フィクションとして描きつつも、細かな舞台装置を間に入れ込んで、まるで目の前の舞台装置を本当に人が動かしているような錯覚を与えてくれます。この「虚構の中の現実感」を描くという、本筋とは直接関係してこないところに多大な力を注いでいるところに、湯浅監督の凄みを感じました。

パンフレットは絵コンテなどの資料やインタビュー、アヴちゃんと森山未來のポートレート写真など内容が非常に豊富で、読み応えがありました!

yui