「漂う陰湿さ」ガール・イン・ザ・ミラー Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
漂う陰湿さ
学校ではイジメに遭い、家庭ではモラハラ気味の躾という境遇に立たされた女子高生が、鏡の向こう側のもう一人の自分と向き合い、今まで溜まっていた膿を出すかのように復讐を企てていくというリベンジスリラーだ。
もう一人の自分または内に秘めた本当の自分という先入観で観ていくと、後半にその先入観を壊すかのように衝撃の展開が用意されており、良く練られた作品だと思った。
童顔で透き通る様な美貌(個人的にタイプ)を持つ主人公がイジメられるのがイマイチ腑に落ちないものの、悪人がしっぺ返しを食らうシーンは爽快感がある。だが、その爽快感が恐怖感に変わってからは一気に主人公が怖く思える。それを皮切りに怒涛の如く人々に牙を剥いてしまうのである。「え?その人も?」と誰もが声に出してしまう様な人にまで手にかけてしまうのだ。
ホラーとしての怖さは比較的薄く、空気感や不気味な雰囲気でじわりじわりと来るタイプの作品だが、本作の魅力は始まりから終わりまで続く陰湿さだろう。雪深い景色と相まって、何もかも冷え切った様に感じるのだ。まるで主人公の心を反映しているかの様なそれは、主人公に感情移入出来る大きなポイントだろう。キャッチコピーに「官能的」という表現があったためある程度は予想していたが、思いの外濡れ場が多いのは意外であった。無機質な世界観とのギャップとしては良いのかもしれない。切ないラストも好きだが、結局何も解決しないままエンドロールを迎えてしまうのがやや消化不良か。結局のところ、復讐は何も生まないというメッセージかもしれないが、謎を残したままエンドロールとなってしまい、モヤモヤが残ってしまった。だが上手く伏線も張られており、未体験ゾーンの映画たちの中でもかなりの高水準の作品ではないだろうか。