背徳と貴婦人のレビュー・感想・評価
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光と陰
妃の肖像画は西洋風に陰影法を用いて描かれる。フランス人の修道画家によって。
肖像画を描くという行為によって、妃と画家は互いに惹かれていく、見る画家と見られる女、描く画家と描かれる女。
陰影法を用いた西洋の肖像画を見て、宦官たちは「顔にシミがあるようだ」と笑う。陰、という概念がない。陰がわからないものたちにはきっと光も、わからないのだろう、と思う。
まるで生きているかのような肖像画を見た皇帝は画家を戦地に飛ばす、皇帝はそこになにを読み取ったのか。ふたりの淡い恋かもしれないし、まるで生きているかのような肖像画に、死んだ前の妃がもう存在しないことを改めて実感させられたのかもしれない。もしくは、西洋と東洋に光と陰を見たのかもしれない。
戦争をみた画家は、神などいないのではないかと、自分の信仰に揺らぎを覚える。
愛されない妃は、皇帝の死後にしか許されない行為である、髪を剃ることをしてしまう、彼女は自分の中で皇帝を殺したのだろう、皇帝が生き続ける限り彼女に心の平安は訪れることはないのだから、
権力のある皇帝が光だとすれば、その犠牲になっている妃や画家が陰なのだろう、
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