「舞台を映画に落とし込んだ異色群像劇」キラーズ・セッション つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
舞台を映画に落とし込んだ異色群像劇
まず、「殺人依存症の互助グループ」っていう設定がブッ飛んでて良いよね。各々の殺人に対する偏愛とその克服が語られるのかな?と思ったけど、実際は誰も克服してない。
今のところその衝動を止めてる、ってわけで、最初の殺人や最後の殺人が演劇調に再現されるのは割と好み。
仕留めるハズだった大統領候補の暗殺に失敗した、というところから話が始まり、その大統領候補まで「キラー・アノニマス」に現れたりするからちょっとややこしくなるけど。
CIAから依頼を請け負ってる謎の組織・カンパニーの、現場を嫌う男(ゲイリー・オールドマン)が、子飼の殺人者たちを今後も任務に採用するか否か、というリクルーティングだったわけです。
もっとぶっちゃけると、これはシェイクスピアみたいな演劇調なんだよ。テーマが大袈裟な訳でもなく、荒唐無稽で、転調によってストーリーが進んでいくという。
だから回想シーンは背景とか一切ない真っ白な部屋だったりする。
ゲイリー・オールドマンと電話で話してるロスの殺し屋が急に隣に出てくるのも、演劇だと考えれば辻褄があう。すべては演劇なのだ。
殺人という、精神に負荷がかかる行動を能動的に行える人材(?)は貴重だが、ある程度カンパニーが行動をコントロール出来なくては仕事にならない。
昔の知り合いに話しかけたり、カンパニーの指示に従えなかったりする者、任務を失敗する者を炙り出すための、練りに練ったリクルーティング計画。それが「キラー・アノニマス」だ。
ラストシーン、ゲイリー・オールドマンがロスで若い女性に声をかける。
「心配要らないよ」
それはロンドンでアリスにかけた言葉と同じだ。
舞台をアメリカに移して、またリクルーティングが行われるであろう余韻を残し、映画は終わる。
アメリカでのホステスを務めるのはアリスだ。
彼女が手掛けるリクルーティング作戦は、どんな運びになるのか。
あまり派手なアクションはないし、大きく映っているジェシカ・アルバの出番はほとんど無い。
文句の一つも言いたくなる気持ちはわかるが、今まで散々人を殺してきた暗殺者たちの、悲喜交々の群像劇として(その悪趣味さも含め)、悪くない映画だった。
絶賛するほどではないけども。