「観察眼」架空OL日記 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
観察眼
異次元の会話だった。
女子が男子に見せない顔とでもいうのだろうか…会話の発生の仕方や、その内容、または目的のようなものが全く理解できない。オチもない。
いや、シーン的なオチはある。が、会話がエンドレスに続きそうで区切りが永遠にこなさそうなのだ。
やり取りされる台詞の口調もあったとは思うが…アレを脚本通り1文字1句変えてませんとかなら女優陣は稀にみる天才だし、脚本家・バカリズムは不世出の脚本家であると思う。
いや、脚本家として既に申し分ないくらいの才能であるのだが…着眼点も観察眼も凄いなと思うのだ。
男子には予想もつかない日常なのだが、絶妙にやってそうと思うのだ。女子は共感しまくりなのだろうか?始業前のロッカールームでは、あんな意味不明な時間が生まれてるのだろうか?井戸端会議をする為に6時30分に起きるのか?
…後1時間くらいは寝ていられそうで、必要性が多いに疑問だし、アレ毎日やるの?
終業後のロッカールームでも…いや、もうとっとと帰れよ!と思う。
会話の大半を愚痴と悪口と不平が占める。決して楽しいと男子からは思えないのだが、まぁ楽しそうに、次から次へと出てくる。
男性と女性では思考性が違うとの話はよく聞くが、コレを書いたのは間違いなく男性で、バカリズム氏だ。
…いやぁ見事だ。
構成自体はNHKが喜びそうなコント形式ではあるものの1本の作品として成立していて、落とし所が明確にある。
ぶっ飛びそうになったのだけど、LGBTな側面が、ぶち込まれてくる。
あの一瞬。
何気に通りかかった教会の前で、美しい花嫁とそれを取り囲むように楽しそうにしてる女性たちを見かける。
その時、瞬時に脳内を駆け巡ったエピソードが今までなのか!?
ほんの数秒に満たなかったであろう思考の飛躍に、まさに世界とも称される脳内で展開される想像力…脳内世界の無限の広がりと全能とも思える無制約さ。そんなモノを持ってきたバカリズム氏に脱帽。
…ぶったまげた。
あまりに詳細な女子ワールドが、彼の妄想であったり願いであったり憧れであったり…とんでもないドンデン返しもあったもんだと、その構成力に唸る。
かえって彼のこれまでの生き辛さのようなものまで、こっちは想像しちゃう。また、それっぽい表情の彼がいるのよ!
今まで異次元だと思って見てきたもんだから、彼がいる男性って区分は、彼にとっては異次元なのだろう。とてつもない疎外感に日々苛まれながら生きているのであろう…。
コント設定として馴染んでいた男性OLキャラが、まさかの必然性を携えて物語に、一切の矛盾なく、カチッと音を立ててハマった瞬間だった。
「あぁくだらなかった。でも笑ったなぁ」なんて感想を予想してたのに、まさかまさかの幕引きであった。
いやぁ、度肝抜かれたわ。
今年度の俺的アカデミー最優秀脚本賞にノミネート!