「ノーマルは曖昧、みんながノーマル」おしえて!ドクター・ルース ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
ノーマルは曖昧、みんながノーマル
ナチスに両親・親族を奪われたことや、中東戦争で自身も足を失いかけた経験からしたら、ルースにとって殆どの悩みなんて解決可能なのだ。
セックスのことだって、ちょっと変わった性癖だったらへっちゃらだし、だからこそ、エイズによる差別や、LGBTQにも寄り添えたのかもしれない。
だから、みんな、そんなに悩むなと。
ノーマルという言葉は彼女にとっては曖昧だ。実はハッキリした定義などなく、少数者を集合から除く程度の意味しかないからだろうか。
いや、そんな消極的な考えではなくて、彼女にとっては全てがノーマルなのだ。
もし、例外があれば、それは戦争や暴力ということだろう。
人は性別や、性別の定義や、民族や、宗教や、肌の色や、言語や、国家や、政治思想を超えて、みんなノーマルなのだ。
当然、性の悩みに男女の区別などもない。中絶には寄り添うが、それは人間としてであり、政治とは距離を置いている。中絶は政治利用されがちなテーマだ。
アメリカの政治に多大な影響力のある福音派は、中絶を殺人のように定義するが、自分たちが後押ししている政権は過去に海外の戦争で多くの人を殺めていないか、結びつきの強い銃社会で亡くなった人はいないかと問いたくなる。
親が書棚のてっぺんに、こっそり隠し持っていたセックスの本が実は興味のきっかけだったと言っていた。体位とか書いてあって…。よく考えてみたら、それもみんなとおんなじじゃないか。
今の彼女のテーマは、恐らく、出来るだけ長く自分の研究をもとに社会と関わることなんじゃないか。
きっと、世界はワクワクするもので満ち溢れているに違いない。そして、それは、彼女だけにとどまらず、僕たちにとっても同じだ。
彼女にとって、性は生、つまり生きていること、そのものなのだ。