「このくらい手を抜いた出来が、本来の福田雄一!」新解釈・三國志 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
このくらい手を抜いた出来が、本来の福田雄一!
「新解釈三国志」。
本来の福田監督の悪ノリが帰ってきた。このくらい手を抜いた出来が、本来の福田雄一である。ムダに贅沢なキャスティングだけの初期作にも通じる。
中国の「三國志」の“黄巾の乱”や“赤壁の戦い”などの有名なエピソードを茶化した、福田雄一監督オリジナル脚本によるコメディ。“もし主人公の劉備玄徳が大泉洋だったら・・・”というシチュエーションコメディとも言える。
さすがに諸葛亮孔明が、戦争の極意を“ネバギバ”とは言わなかったであろうけれど、本作を“史実と違う”などとツッコむアホはいまい。
むしろ歴史小説のほとんどは創作なのだし、日本人のイメージする坂本龍馬や織田信長などの人物像は、大河ドラマによって印象操作されていたりすることも少なくない。またテレビゲームの登場キャラクターに歴史上の人物をベースにしたものが多いのも、類似した遊びである。
同じく福田雄一監督が手掛けた映画「銀魂」は原作のあるSF時代劇であり、今回はオリジナルの福田監督的な歴史劇アプローチである。
大泉洋は、福田監督作品に初出演になるが、その他のキャスティングは、ムロツヨシ、佐藤二朗、賀来賢人、橋本環奈、小栗旬、山田孝之など福田組の常連で固められている。
驚くべきは、映画告知のキャンペーンでは伏せられてた、広瀬すずの登場に思わずのけぞる。
主題歌は福山雅治であるが、もしかして本当は出演を打診していたのではないだろうか。スケジュールもしくはギャラの都合で調整されただけだとしても不思議ではない。
これらギャラだけでも相当なもので、これも福田雄一監督が築き上げた実績と人気が成し得た結果である。とはいえ、そのぶん制作費の配分に苦労している。本作はしゃべり中心なので、ロケ地が千葉県や富士山麓だったとしてもどうでもいい。いまや映像加工のテクニックである程度ごまかせるけれど、これは、大昔やっていた正月のテレビ番組“オールスターかくし芸大会”の中のドラマ企画を冗長にした感じは拭えない。
語り部として西田敏行が登場するが、“所詮、歴史研究家の論文は仮説を楽しむだけのもの”というブラックジョークにもなっている。小難しく考えず、笑って済ますのが正解。
(2020/12/11/ユナイテッドシネマ豊洲 Screen10/ビスタ)