「最高に甘口につけるが、星2」カイジ ファイナルゲーム 春樹さんの映画レビュー(感想・評価)
最高に甘口につけるが、星2
タイトルの通り、相当甘口にレビューしますが、それでも賛否レベルです。以下の条件に合う方は、楽しめる可能性があります。
・原作版「カイジ」より、実写化「カイジ」が好きな方
・藤原竜也の演技が好きで、出演作をチェックしているような方
以上を踏まえて、「ストーリー」「テーマ」「ゲーム」の3つに関して評価していこうと思います。
まず「ストーリー」。説教臭さを抜いて話の流れだけ見ると、これは意外に良くできています。「帝愛がついに完成させた地下帝国で、クズ殲滅計画を叩き潰すために、カイジがギャンブルで戦う!」これが大まかな話の流れです。この大筋に関しては、カイジらしさの残ったいいストーリーだと思います。「カイジ1」でも「2」でも、はては原作版でもずっと建設中だった地下のサグラダファミリアこと帝愛地下帝国がついに完成し、カイジのギャンブルの舞台となるなんて、非常にワクワクしました。
ですが、この大筋に、鼻がひん曲がりそうな説教臭さや、おしゃべり伏線野郎ことMs.9(ヒロインっぽい奴。名前忘れた)などのスパイスが加わる事で、なんとも言い難い評価になってしまいました。説教臭さについては「テーマ」の方で語るので、ここではMs.9と有名な「あるセリフ」についてお話しします。
まずは「Ms.9」。多分今回のヒロイン?で、序盤からカイジと絡みがあるのですが、非常にうざったいです。多分客が不快になるのは想定されてはいるのですが、それを差し引いても魅力の足りないキャラクターです。また、語尾の「キュー!」を聞いたとき、多分見た人全員背筋に悪寒が走り、こう思います。「これ数字の9の伏線じゃないよな…?」この予想は後に悲しくも当たってしまい、そこでこのキャラクターが、「伏線から生まれた伏太郎」であり、伏線の為だけに作られた悲しい存在であると気づくのです。
次はあの台詞、「悪魔的だー!」についてです。原作の名台詞が藤原竜也の演技によって超強化されたこのセリフは「1」「2」でも度々出てきて、その度に観客に強い印象を残して来ました。本映画を予告編から楽しみにしてた私のような人にとっては、「今回はどこでいうんだ…?」という期待と不安でいっぱいでした。 ところが、実際待てど暮らせどそのセリフは出ず、最後、思い出したかのようにヤケクソで言って終わり。拍子抜けもいいところです。
「この名台詞で映画を締めくくりたかった」と好意的に見れなくもないですが、バタバタと雑に処理されるせいで、忘れてたのを慌てて最後に付け足したみたいになっちゃってます。
次は「テーマ」です。この映画からは様々な思い、伝えたいこと、メッセージが感じられますが、All of them are KUSO, 以上。
多分「日本が一つになって頑張ろう!」みたいな感じだと思うんですけど、これがいけない。まず、俺このテーマ嫌いです。根性論めいた感じで、考えたひとの加齢臭まで臭って来そうでうんざりします。またそういう僕の主観抜きにしてもこのメッセージは、カイジに託すには少々重すぎる。カイジは、両手の届く範囲の人しか救えない人間で、そこが彼の弱さであり強さであり魅力だったんです。それが「日本が頑張んなきゃダメだろ」みたいな、御大層なスケールのことを言っても、茶番にしか感じませんでした。
次は「ゲーム」についてです。
まず、全体的に、出来うんぬんはさて置き、賭場の熱気、狂気の演出はとても良かったです。ここはさすが「カイジ」という他ないです。
最初のゲームは「バベルの塔」。最初のゲームなのでわりかしサラッと流されましたが、鉄骨渡りオマージュの戦法などはちょっとドキドキして楽しかったです。
次は「最後の審判」。多分この映画の目玉ゲームで、実際僕も一番好きなゲームです。内容は、総資産の重さ比べ。内容はかなりシンプルですが、先述の賭場の熱狂はここが一番良くできており、派手に降り注ぐ金貨、鳴り止まない怒号のなかで、ギャンブルの狂気に呑まれていく体験ができます。どんでん返しの仕掛けも良くできていましたが、「町工場スゲー」の混入により、熱が冷めました。
途中で挟まるのが「ドリームジャンプ」。
番号を選んで鉄骨からジャンプ!後は一人だけ生き残るよ!という、「1」の鉄骨、「2」の姫と奴隷のようなエグ担当のゲームですね。一見鉄骨と似たゲームですが、鉄骨は主に「落ちるまで」の描写に力を入れているのに対して、こちらは「落ちてから」の描写に力を入れているのが、また新しい視点で面白かったです。ですが、カイジがこのゲームに挑戦する際に問題が発生しました。なんとこのゲーム、あの、二足歩行する伏線ことMs.9の伏線発表会の会場に選ばれてしまっていたのです。カイジのピンチに颯爽と現れ、視聴者全員が分かりきった伏線を回収しドヤ顔するMs.9。こうなるともう、押す番号で悩む藤原竜也の迫真の演技も茶番にしか見えません。呪いですかね。
そして最後の「黄金じゃんけん」。これは同じじゃんけんと名のつく「限定じゃんけん」よりはむしろ「Eカード」に近いルールで、頭脳戦、心理戦を担当するゲームです。
カイジの頭脳戦というのは特殊で、本来勝率0の勝負に、盤外戦術を張り巡らして、相手の虚を突くというのが基本戦術です。Eカードでは出血とすり替えを使い(使わず)、沼ではビルを傾けて、さあ黄金じゃんけんはどんな仕掛けをして…あれ…普通にじゃんけんして…勝っちゃった。なんか握ってるフリとかしてたみたいです。…正直、かなりお粗末です。
ここまでボロクソ書きましたが、個人的に好きな映画です。ここまで読んで見るような人なら楽しめると思います。良い点が無いわけでは無いので、楽しんで頂ける助けとなれば幸いです。